「RSウイルスが保育園で流行しています」こんな言葉をニュースでよく耳にしませんか。
「うちの子は保育園には行っていないけれど、感染する心配はない?」「どんな症状がでるの?かかったらどうしたらよいの?」「そもそもRSってどんなウイルスなの?」
この記事では、RSウイルスについて多くの不安を抱えているママ・パパさんに向けて、RSウイルスがどのようなウイルスなのかをお伝えしていきます。
現在、8ヶ月の子どもを育てている薬剤師の筆者が、乳幼児を育てているママに向けて「RSウイルス感染症の症状や予防方法」を分かりやすく解説します。RSウイルスの発症の中心は、0歳児と1歳児です。
吉川みーこさん
この記事を読んで、RSウイルスについて不安を解消し、もしかかった際も落ち着いて行動できるよう知識をつけておきましょう。
RSウイルス感染症とは
RSウイルス感染症とは、RSウイルスによる呼吸器の感染症です。RSウイルスの正式名称はrespiratory syncytial virus(レスピラトリーシンサイシャルウイルス)です。RSウイルスはほぼ100%のこどもが2歳までに初めて感染し、その後も繰り返し感染します。[1]
吉川みーこさん
まずは、RSウイルスはどこから感染するのか、かかりやすい時期(流行期)はあるのかを知っていきましょう。
どこから感染するのか
RSウイルス感染症は①接触感染と②飛沫感染という2つの経路で広がります。それぞれの特徴は次のとおりです。
①接触感染
ウイルスに感染している人に触れたり、ウイルスがついた物に触れた手で自分の目、鼻、口を触ったりすることで感染します。
②飛沫感染
ウイルスに感染した人の咳やくしゃみ、会話をする時に口から飛び散るつばを吸いこみ感染します。[1]
RSウイルス感染症の流行期
今までは、RSウイルス感染症は夏から増え始め、秋にピークを迎える傾向がありました。しかし、2021年以降は春から初夏にかけて感染者が増え続け、夏にピークを迎えています。
吉川みーこさん
今後の流行状況も変わっていく可能性があるため、信頼できるニュースを参考に引き続き注意していきましょう。[1]
RSウイルスにかかるとどうなるの?
RSウイルスに感染した際の主な症状と重篤化した際の症状について解説していきます。RSウイルス感染症の症状は比較的軽く、ほとんどの場合は自然に治っていきます。
吉川みーこさん
ですが、赤ちゃんは重篤化する恐れがあるため注意が必要です。
RSウイルス感染症の主な症状
RSウイルスに初めて感染した際は、必ず症状が出ますが、その症状は軽い風邪から重い細気管支炎や肺炎までさまざまです。RSウイルスは感染してから2〜8日、一般的には4〜6日間の潜伏期間を経て、発熱や鼻水などの症状が数日間続きます。
多くの場合は軽症で自然に治りますが、症状が重くなりひどい咳や喘鳴*がみられることもあります。
赤ちゃんは重篤化の危険性がある
赤ちゃんがRSウイルスに感染すると、症状が重篤になりやすいため注意が必要です。
生後1年以内に、約69%の赤ちゃんがRSウイルスに初めて感染します。はじめてRSウイルスに感染した赤ちゃんのうち、約70%は鼻水などの軽い症状だけで数日で良くなりますが、残りの約30%は咳が悪化して喘鳴や呼吸困難の症状が出ることが特徴です。[1]
RSウイルス感染症では、無呼吸発作や急性脳症が重い合併症としてあらわれることがあります。2〜4歳でも20%以上のこどもが肺の病気になりますが、年齢が上がると病気の重さは軽くなっていくでしょう。また、1歳以下の赤ちゃんでは中耳炎を伴うことが多いです。[2]
吉川みーこさん
生後4週間未満の赤ちゃんはRSウイルスに感染しにくいですが、感染すると症状がわかりにくく、診断が遅れることがあります。
この年齢の赤ちゃんは無呼吸による突然死のリスクがあるので、普段と様子が異なる場合には早めに病院を受診しましょう。[2]
RSウイルス感染症の治療法と受診の目安
残念ながら、RSウイルス感染症にはすぐに効果がでるお薬はありません。痰切り、咳止めなど、症状を和らげるお薬が基本的なケアになります。水分補給、栄養補給をして十分に休むことが大切です。
吉川みーこさん
症状が軽く機嫌が良い場合には慌てて病院へいく必要はないので、体調が悪化していないか注意しておきましょう。
ただし、呼吸が苦しそうであったり食事や水分補給ができなかったりする場合には、すみやかに病院へ受診してください。症状や状態によっては、酸素の投与や点滴、呼吸管理が必要な場合もあります。[1]
RSウイルスの感染を防ぐために
RSウイルス感染症の症状は軽いことが多いですが、赤ちゃんは重篤になりやすいです。
吉川みーこさん
RSウイルスに感染しないために、こどもも大人も感染予防をしましょう。
こどもの感染予防
RSウイルス感染症は、上記で説明したとおり、接触感染と飛沫感染が原因で、症状は風邪に似ています。特に0歳児と1歳児は症状が重篤になりやすいので、ご家族に風邪のような症状の人がいる場合には、こどもや赤ちゃんに感染させないための対策が必要です。
たとえば、以下の対策で接触感染を防げます。[1]
- こどもたちが触れるおもちゃや手すりなどをこまめに消毒する
- 手洗いやアルコール製剤を使って手指の衛生を守る
飛沫感染を防ぐには以下の対策が効果的でしょう。[1]
- 鼻水や咳などの症状がある場合には、マスクを着用できる年齢のこどもや大人はマスクを使用する
- タバコの煙が気道を刺激し、のどの症状を悪化させることがあるので、受動喫煙を避ける
一部のこどもに使えるワクチン「シナジス」
RSウイルス感染症には、シナジスという筋肉注射のワクチンがあります。症状が重篤化する可能性が高い下記の赤ちゃんやこどもに限り、シナジスという筋肉注射のワクチンを使ってRSウイルスの感染を予防できます。[3]
- 妊娠28週以下で生まれた、1歳以下の赤ちゃん
- 妊娠29~35週で生まれた、生後6か月以下の赤ちゃん
- 過去6か月以内に気管支や肺の治療を受けた、2歳以下の赤ちゃんや7歳未満のこども
- 2歳以下で心臓に問題がある赤ちゃんや7歳未満のこども
- 2歳以下で免疫が弱い赤ちゃんや7歳未満のこども
- 2歳以下のダウン症の赤ちゃんや7歳未満のこども
吉川みーこさん
RSウイルス感染症の流行初期にワクチンを打ち、流行期間中も1か月ごとにワクチンをを打つことで、肺炎のような重篤な症状を防ぐ効果が期待されています。
ママ・パパの感染予防
RSウイルスは非常に感染力が強いです。大人の場合、通常は風邪のような症状のみですが、感染したこどもを看護するママやパパは大量のウイルスにさらされることで、重篤な症状が出る場合もあります。また、呼吸器などに持病をもつ大人がRSウイルスに感染すると、肺炎のリスクが高まります。[1]
そのため、ママやパパもこまめな手洗いを心がけましょう。
吉川みーこさん
たとえば、うんちにウイルスが潜んでいることもあるので、おむつ替えをしたらすぐに手を洗いましょう。
普段から感染症に対してアンテナをはろう
知らない感染症の名前を聞くと、何か怖い病気なのではないかと不安になりますよね。そんな時には、厚生労働省や医療機関、医療者などが発信している情報を調べてみたり信頼できるニュースを見たりして、常にアンテナをはっておきましょう。
吉川みーこさん
分からない感染症を聞いた時は普段から調べるようにし、感染しないように予防対策をとることがおすすめです。
少しでも予備知識をつけて感染したとしても落ち着いて行動できるようにしておきましょう!
薬剤師ライター:吉川 みーこさん
京都薬科大学卒。大学卒業後、治験コーディネーターとして糖尿病、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎の治験に関わり、その後ケアミックス病院にて薬剤師として多科の領域、DI業務に関わる。2024年の育休中に、Medi+「医療ライターのはじめかた」講座を受講。読者に寄り添えるような文章になるように心がけています。