お子さんの手が少し離れ、ふと自分の生活を見直す時間ができる40代。女性にとって大きな体の変化が目前に迫ってくる時期ですよね。
年齢を重ねるほど、運動や食事など、内側からのメンテナンスが大切になってきます。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも運動の必要性、中でも筋トレの有効性が述べられています。[1]
さらに、近年、筋トレには美肌効果もあるとの科学的根拠が報告されました。[2]
桑野ナオさん
しかし、運動の必要性を感じつつもなかなかはじめられない方も多いのではないでしょうか。
3年前から筋トレをはじめ、今は体調の改善や、体の見た目の変化も実感するようになっています。運動が日常のものになった筆者の体験も交えて筋トレのメリットをご紹介します。筋トレを通じて健康と美しさを手に入れ、充実した40代を過ごしましょう!
40代女性に筋トレが必要な4つの理由
運動が、生活習慣病の予防や体と心の健康増進のために必要だという知識は、広く知られていますよね。
しかし、実際に日常的に運動をしている人の数はまだまだ多くありません。40代女性はホルモンバランスが劇的に変化する年代です。
桑野ナオさん
40代女性にとくにオススメしたい運動方法をご紹介します。運動を効果的に日常に取り入れ、心と体の健康を手に入れましょう。
運動習慣のある40代女性は20%以下
「健康のために運動をした方がよい」というのは、よく耳にしますよね。しかし、運動不足を感じている40代女性は80%を超えています。[3]
また〈1日に30分以上の軽く汗をかく程度の運動〉の習慣がある40代女性は20%以下というデータもあります。[3]
- 仕事や家事が忙しいから
- 面倒だから
- 年を取ったから
継続的な運動ができない上位3つの理由です。運動不足を感じていても、運動ができていない方が多く、意図的な運動習慣の重要性が高まっていることが分かります。
桑野ナオさん
元々運動習慣がない方にとって、生活を変化させてまで運動習慣を作るのはハードルが高いかもしれません。筆者もまさにそうでした。
女性の体の節目を迎えるこの時期に、あらためて運動のメリットを知り、より良く生きるためにできることを考えてみましょう。
筋肉量の低下は40代から
筋肉量の年代別推移に注目すると、一般的に20代〜30代がピークで、40代から緩やかに減少します。[4]
筋肉量が減少すると、怪我のリスクが増え、内臓脂肪の増加、糖尿病のリスクの上昇などの弊害が出てきます。
筋力アップには有酸素運動より筋トレ
では、落ちていく筋肉量はどうすればよいのでしょうか。答えは簡単「筋トレをする」です。
桑野ナオさん
筋トレをはじめるのに遅すぎることはありません。何歳になっても、トレーニングをすれば筋力をアップさせることが可能です。[5]
継続的な運動ができない理由の上位に「年を取ったから」とありますが、年を取り筋肉量が落ちるからこそ運動をすべきです。
運動なら筋トレに関わらず何でもよいのは?という疑問もあるでしょう。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動も、健康のために欠かせません。しかし、有酸素運動は筋肉への負荷が小さく、筋力アップという観点では、十分な効果は得にくいでしょう。筋トレは、筋肉に負荷をかけることで筋肉を増やすことが最大の目的です。
メニューや強度を調整することで、いつでも誰でもはじめられるのが筋トレのメリットです。
筋トレというと、ジムの広告にあるような筋肉隆々な方々をイメージするかもしれません。とくに女性は、筋トレをすると筋肉質になりすぎることを懸念する方がいらっしゃいます。
筋トレには、自宅でも気軽にできる自重トレーニングから、機材を使ってジムで行うような強度の強いトレーニングまでさまざまな方法があります。
桑野ナオさん
目的によって負荷を調整すれば、筋肉隆々になりすぎず、適度に引き締まった体を手に入れられますよ。
筋トレなら自宅でも気軽にはじめられる
運動をはじめるには道具や設備などが必要になることが多いですが、筋トレは特別な準備は必要ありません。費用ゼロでもはじめられます。
- 筋トレをはじめるために専用の道具や場所は必要なし
自重トレーニングであれば、ヨガマット1枚分程度のスペースがあれば十分です。筋トレを継続していると、自重トレーニングだけでは物足りなくなるかもしれません。その時にトレーニングアイテムを準備すればよいでしょう。
- 自宅でいつでもできる
自重トレーニングであれば自宅でいつでもはじめられます。移動する手間も、身支度をする手間もありません。
桑野ナオさん
運動を習慣化できない理由の「忙しくてできない」はクリアできそうですね。
- 初期費用ゼロでもできる
繰り返しになりますが、自重トレーニングであれば特別な道具は必要ありません。自宅でできるので、初期費用はゼロです。
健康になるだけじゃない?筋トレを実践して得られる4つのメリット
運動を習慣化できない理由の一つに「面倒だから」があります。年を取れば取るほど、新しいことをはじめたり、習慣を変化させたりするのはハードルが高くなりがちです。そのハードルを乗り越えるべく、40代女性が筋トレで得られるメリットをご紹介します。
筋肉量が増加することで代謝アップ
加齢と共に代謝は落ちていきます。[6]
食生活はとくに変えていないのに体重や体脂肪率が増えるという経験はありませんか?
桑野ナオさん
そこで必要なのが筋肉です。筋肉1kgあたりの基礎代謝は13kcalで、脂肪の基礎代謝の3倍あります。
とはいえ、たったの13kcal……と思いませんか?
筆者も「筋肉増加=基礎代謝増で自然に体重が減っていく」という安易な思い込みをしていました。では、なぜ筋肉量アップや筋トレの必要性が謳われているのでしょうか。
それは、筋肉は“熱を作る”機能を持っているからです。筋肉がもっている、熱を作る機能こそが重要なのです。筋肉に刺激が加わることで熱が作られ、その際にエネルギーが消費されます。つまり、代謝量がアップし、痩せやすく太りにくい体になります。[7]
桑野ナオさん
筋肉量が増えると数字上は体重が増えることがありますが、体重だけに惑わされないようにしましょう。
引き締まった体つきになる、姿勢が改善するといった見た目の変化があるはずです。効果を感じられればしめたもの。よい変化は物事を継続するモチベーションに欠かせませんよね!
トレーニングするのであれば、効率よく効果を出したくなるでしょう。トレーニングをはじめると、食生活や生活スタイルにも目が向くようになると思います。意識の向上が相乗効果を産み出し、生活習慣病の予防など、健康な体を手に入れる大きなきっかけになるはずです。
骨粗しょう症予防
骨粗しょう症とは、骨の密度が減少してもろくなり、骨折しやすくなる病気です。とくに50代、閉経後の女性に多く発症することで知られています。女性ホルモンの減少や加齢によって引き起こされる病気ですが、予防することが可能です。
- ビタミンDの摂取
- 日光浴
- 骨に刺激が加わる運動
骨粗しょう症予防に必要なのがこの3つ。運動はウォーキングや筋トレが推奨されています。トレーニングをすると骨に刺激が加わり骨粗しょう症の予防になります。[8]
更年期症状の予防・軽減
更年期症状とは、更年期に女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少することによって、のぼせ・発汗、イライラ、不眠、抑うつなどの症状を引き起こすものです。思春期のお子さんを持つお母さんだと、更年期と思春期が重なってしまう二重苦になりかねません。
更年期症状の予防・軽減に筋トレや有酸素運動は効果があることが明らかにされています。[9]
桑野ナオさん
うまく更年期症状と付き合える体作りができるとよいですね。
美肌効果
これまでも、運動はホルモンの働きにより肌のターンオーバーを促進し、美肌効果があることは分かっていました。しかし、どのような運動がより効果的なのか、などははっきりと分かっていないことも多かったのです。[10]
2023年、運動の中でも筋トレには以下の効果があることが発表されました。[2]
- 運動で肌の弾力が改善する
- 運動の中でもとくに筋トレによって真皮の厚みも改善する
これらが科学的に明らかにされました。
桑野ナオさん
筋トレは健康になるだけでなく、美肌効果にも期待できると思うと、俄然やる気になりませんか?
初心者でも自宅でできるオススメ筋トレ3選
40代の女性に嬉しい、筋トレによって得られるメリットをご紹介しました。健康で若々しい体作りのために筋トレをはじめてみようかなと思っていただけましたか。
次に、具体的なオススメトレーニング方法を3つご紹介しましょう。
桑野ナオさん
筋トレは、まずは大きな筋肉からトレーニングすることがポイントです。大きな筋肉から鍛えることで、効果が早く確実に出るからです。
スクワット
下半身にアプローチする筋トレで、お尻から足にかけての筋肉にしっかりと効きます。
- 直立に立つ
- 足は腰幅に開く
- つま先はやや外側に向ける
膝と同じ向きになるように - 股関節から曲げて、お尻を後方に突き出すように腰を落とす
- 膝がつま先より前に出ないように気をつけて
- 太ももと床が平行になるまで頑張りましょう
桑野ナオさん
目線は前。手の位置は腰より上に。胸の前で組んだり、前習えのようなポジションを取ることが一般的です。
プッシュアップ
上半身にアプローチする筋トレで、胸、肩、二の腕などに効果があります。
膝をつくことで負荷を軽減させ、初心者でも実施しやすくなるため、膝をつく方法をご紹介します。
- うつ伏せになる
- 肩幅よりやや広めのポジションに手を置く
- 膝をつく
- 頭と視線を下に向ける
- 肘をゆっくり曲げて上体を下ろす
胸を地面に近づけるイメージ - 肩から膝までを一直線にキープ
下腹部とお尻に力を入れると、姿勢を維持しやすい - 地面を押し上げるよう肘をゆっくりと伸ばし元の位置へ戻る
プランク
体幹にアプローチする筋トレで、腹筋や全身の筋肉に効果があります。
- うつ伏せになる
- 両肘を肩の真下に置く
- 肘とつま先だけを床につけ、体が一直線になるように浮かせる
- 背中が反らないよいよう、お腹からお尻に力を入れることがポイント
可能であれば鏡などで姿勢を確認しながら行う - まずは10秒キープから頑張りましょう
できるようになったら20秒、30秒と時間を延ばし、負荷をあげます
いずれも、筋トレの代名詞のような種目です。ここでご紹介したのは基本の方法です。
初心者は、力むあまり、ついつい呼吸を忘れてしまうことがあります。呼吸を忘れないように注意しましょう。呼吸を止めてしまうと、十分な酸素が体内に行き渡らず、運動パフォーマンスが低下してしまいます。[11]
また、正しいフォームで行わないと、逆に体を痛める原因にもなりかねません。アプローチしたい部位を意識しながら、ゆっくり確実に実施しましょう。鏡を見ながら行うのもオススメです。
トレーニングは、ちょっとキツイ!程度の強度から、もう一息頑張ったくらいが実施目安です。
桑野ナオさん
慣れてくると、応用編もできるようになり、新しい楽しみが増えますよ!
継続は力なり!筋トレを続ける3つのポイント
具体的な筋トレ方法をお伝えしましたが、せっかくはじめても三日坊主になってしまっては意味がありません。筋トレの効果が出るまでには、月単位の時間が必要です。
トレーニングの強度や頻度、食事管理方法などによって個人差もあるでしょう。いずれにしても『継続する』ことが大切です。
この記事では、40代で筋トレを続けている筆者が、実践している方法をご紹介していきます。
スケジュールを立てよう
先述したように、自宅で筋トレする場合、空き時間で行えることが最大のメリットです。同時に、継続しにくい落とし穴でもあります。モチベーションが高いうちは続けられるかもしれませんが、筋トレはすぐに効果が出ないこともあります。
桑野ナオさん
だんだんと「いつでもよい=今じゃなくてもよい」に変化し、張り切って準備したダンベルが部屋の片隅に転がっている……ということも珍しい話ではありません。
空き時間を利用する場合でも、「○曜日の▲時はトレーニング」と予定を決めて取り組みましょう。
仲間を見つけよう
筋トレには即効性はありませんが、継続することで必ず変化を実感できます。目的・目標を共有できる仲間がいると、怠け心にひきづられず、自分を律せられるでしょう。
筆者は、筋トレに興味はあったものの運動習慣はなく、むしろ運動嫌いでした。しかし、セルフメンテナンスができる体作りが欠かせないと感じてトレーニングをはじめました。身近に運動好きの友人がいたのが大きなきっかけでもありました。
桑野ナオさん
体をしっかり動かすことの爽快感と、体調の改善などのメリットも実感し、今では「キツイけど楽しい、だから続ける!」とすっかり思考が変化しました。
ジムやオンラインレッスンを活用しよう
家でもできる、タダではじめられるとお話してきたことと矛盾するように思われるかもしれません。筆者がそうだったように、運動習慣がない方が運動を継続するのはとてもハードルが高いですよね。
だからこそ、ジムやオンラインレッスンの活用もオススメします。筋トレのメリットや継続する秘訣をお伝えしましたが、それでも続かない場合は、専門家の力を借りるのも方法の一つです。
桑野ナオさん
「やらねばならない」状況を作り出し、プロからの指導を受けることで筋トレの基本を習得できるメリットもあります。
まとめ
心身共にさまざまな変化のある40代。運動の習慣化があなたの健康を支えます。筋トレは健康と美肌を同時に手に入れるお得な健康習慣です。まずは最初の一歩を踏み出してみましょう。
桑野ナオさん
ストイックに頑張るも良し、仲間と楽しく取り組むも良し。あなたに合った筋トレを継続できる方法が見つかりますように。
[1][4]健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(厚生労働省)
[2]筋力トレーニングが美肌に貢献することを世界で初めて報告 ~筋力トレーニングによる血中成分の変化が皮膚老化の改善に関与することを解明~ |立命館大学
[3]スポーツ庁(2024)令和5年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和5年11月調査)
[6]加齢とエネルギー代謝 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[7]食事誘発性熱産生 / DIT | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[8]骨粗鬆症予防のための運動 -骨に刺激が加わる運動を | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[9]更年期女性に対する健康教育に関する 過去10年間の文献検討
[11] 125.間欠的な息止めが運動時の生理応答に及ぼす影響 ○久米 大祐 体力科学 60号P.6 発行年 2011年12月01日
看護師ライター:桑野 ナオさん
看護大学卒。看護師として、都内大学病院で16年勤務。脳外科ICU、脳外科・消化器外科病棟、地域連携に従事した。その間、体外受精にて子供を授かり、3姉妹の母となる。夫の海外赴任が新たな働き方を模索するきっかけとなり、Medi+「医療ライターのはじめかた」を受講。現在は派遣看護師としてデイサービスに勤務しながら、医療ライターとして活動開始。息抜きは家族とのお出かけ。