乾燥する季節に大活躍する加湿器。室内を加湿することで、肌や喉などの乾燥をおさえたりウイルス感染のリスクを軽減したりできます。
小さなお子さんをお持ちの親御さんはもちろん、最近では一人暮らしの方でも1台は持っているのではないでしょうか。しかし、そんな便利な加湿器も、正しく使用しないと健康を損ねる原因となってしまうおそれがあります。
「湿度には人一倍気をつけているのに咳が出る」「家にいると咳が出るけど、外出すると気にならなくなる」
このような心当たりはございませんか?
庄子さん
加湿器を使ううえで注意が必要な加湿器肺炎と予防法について、医療と機械のスペシャリストである臨床工学技士の筆者が詳しく解説します。
加湿器の誤った使用法による加湿器肺炎
加湿器肺炎とは、加湿器内に発生した菌によって引き起こされる過敏性肺炎です。[1]
庄子さん
一般的に、加湿器は内部に水をためる必要があるので、細菌やカビが繁殖しやすい環境です。
取扱説明書のとおりに使用していない場合、加湿された空気と一緒に菌が部屋中にばらまかれてしまうおそれがあります。
部屋に散布された菌を吸い込むことで、加湿器肺炎になってしまうかもしれません。
加湿器周辺で咳・息切れが出たら加湿器肺炎のサイン
加湿器肺炎のおもな症状として、咳や息切れ、発熱、倦怠感などがあります。[2]
これだけだと風邪と症状が似ているため、判断がつきにくいですよね。
しかし、加湿器肺炎はアレルギー反応によるものなので、原因となる加湿器のない場所では症状が治まるという特徴があります。[2]
庄子さん
したがって、加湿器のある部屋では咳や息切れなどの症状がでて、別の部屋や屋外に行くと治まるようであれば加湿器肺炎の可能性があります。
心当たりがある方は、一度加湿器の使用を控えてしばらく様子をみてみましょう。
加湿器肺炎を予防する3つのポイント
湿度が低いと、のどが痛くなったり、肌がカサカサになったりしがちです。場合によっては静電気がバチッと走ることもあります。とくに冬場など、乾燥対策で加湿器を使用する方は少なくありません。
庄子さん
わざわざ身体のためを考えて使用している加湿器が、逆に体調をくずす原因になるのは避けたいですよね。
加湿器肺炎を予防するために気を付けるべきポイントを、臨床工学技士の視点で3つご紹介します。ぜひとも習慣づけて、安心して加湿器を使用しましょう。
使用する水に注意する
加湿器を使用するためには、タンクに水を入れなければなりません。しかし、どのような水でも使用していいわけではありません。ほとんどの加湿器では水道水の使用が推奨されています。
それは、水道水には消毒のため塩素が含まれていて、菌が繁殖しにくくなっているからです。ミネラルウォーターや浄水器の水には塩素が入っていないため、水道水と比べると菌が繁殖しやすくなっています。
庄子さん
菌の繁殖を少しでも防ぐため、加湿器には水道水を使用するようにしましょう。
こまめに洗浄する
水道水には塩素が含まれていますが、時間の経過とともに消毒効果は弱まっていきます。加湿器に使用する水は継ぎ足さず、毎日交換しましょう。
庄子さん
また、タンクやその他の付属品を定期的に清掃することも、菌の繁殖予防につながります。
お手入れが必要な部品や、使用可能な道具・洗剤は加湿器によって異なります。詳しいお手入れ方法や頻度については取扱説明書をお読みください。
スチーム式の加湿器を使用する
加湿器は、加湿する方法によって4つの方式に分けられます。
- 超音波式:超音波による振動で水を霧化させ加湿する
- スチーム式:ヒーターで水を蒸発させ加湿する
- 気化式:水を含んだフィルターに風を当てて加湿する
- ハイブリッド式:超音波で振動させながらヒーターで加熱、または水を含んだフィルターにヒーターで温めた風をあてることで加湿する
超音波式の加湿器はタンクで繁殖した菌をばらまきやすく、加湿器肺炎になるリスクが高くなります。
庄子さん
また、気化式では加湿器肺炎の報告はありませんが、超音波式同様に、タンクの中では菌が繁殖しやすくなっています。
スチーム式は、ほかの方式よりも菌が繁殖しにくいのが特徴です。[1]
別の方式の加湿器をお使いの方は、スチーム式に変えることで加湿器肺炎のリスクを抑えられるでしょう。
加湿器肺炎かもしれないと思ったら
加湿器肺炎であれば、加湿器の使用をやめることで症状が緩和する可能性は高いでしょう。
庄子さん
しかし、状態によっては加湿器の使用をやめるだけではなかなか改善しないこともありますし、ほかの病気を合併している可能性もあります。
素人判断は危険ですので、思い当たることがあれば、まずお近くの病院で一度診察してもらいましょう。
加湿器を正しく使用して肺炎を予防しよう
「なんとなく使い方がわかる」という理由で、取扱説明書を読まない方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、取扱説明書には使用するうえで重要なことがたくさん詰まっています。加湿器に限ったことではありませんが、誤った使用法を続けていると逆効果になってしまうこともあります。
ご自身の健康のためにも、流し読みでもいいのでぜひ一読してみてください。
庄子さん
とくに、日々のお手入れは、正しい方法・頻度で欠かさずに行うようにしましょう。
製品の寿命を長持ちさせることにもつながりますよ。
わからないこと、心配なことがあればメーカーに聞いてみるのも方法の一つです。そして、もしも身体に異変を感じた場合は、お近くの医療機関を受診しましょう。
臨床工学技士ライター:庄子 タカヒロさん
臨床工学技士として総合病院にて9年勤務。主に人工呼吸器業務、血液浄化業務、機器管理業務に従事し、RST(呼吸サポートチーム)の一員としても活動。市民講座や院内勉強会などの講師を数多く経験。物事をわかりやすく伝えることを心がけて、医療ライターとして活動しています。
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