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余った薬は飲んでいい?使用期限はある?【薬剤師が解説】

家の中を整理していると、数年前に処方された薬や市販薬が出てきて「余った薬は飲んでいいのかな?」と疑問に思ったことはありませんか。

わざわざ病院やドラッグストアに行かなくても良いため、できることなら余っている薬はそのまま家で保管しておきたいところ。しかし、食品と同じように薬にも使用期限があることをご存じでしょうか。

実は、使用期限が切れた薬を使うと、効果を得られないどころか思わぬ副作用を引き起こす可能性も出てきます

この記事では、現役の病院薬剤師である筆者が、薬の使用期限について解説します。

薬剤師ライター

河江いなさん

さらに、薬の適切な保管方法や、余らせないようにするポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

薬の使用期限とは

薬の使用期限とは、安全に薬が使用できる期限です。製薬会社が定められた条件でのテスト(安定性試験)をおこない、その結果から使用期限を設定します。

定められた条件とは、おもに「光・温度・湿度」の3つです。安定性試験では、時間が経っても薬の品質に変化がないか調べています。[1]

安定性試験は「未開封」の状態で試験をおこなっています。

薬剤師ライター

河江いなさん

そのため、使用期限はあくまでも「未開封」状態での期限であることに注意しましょう。

使用期限が切れた薬を使うデメリット

使用期限が切れていても、「薬の見た目が変わっていなければ飲んでいいのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか。しかし、使用期限が切れた薬には次のようなリスクがひそんでいます。

  • 期待した効果が得られない
  • 副作用が出る可能性がある
薬剤師ライター

河江いなさん

症状を和らげるために薬を使ったのに、効かないだけでなく身体に良くないことが起きるのは本末転倒です。

家にある薬の使用期限が切れていたら、使わずに処分しましょう

期待した効果が得られない

薬の品質や効果は、安定性試験の結果で保証されています。つまり、使用期限が切れた薬は、効果が保証されていないということです。

薬剤師ライター

河江いなさん

たとえ見た目に変化がないとしても、使用期限が切れた薬からは期待した効果が得られない可能性があります

副作用が出る可能性がある

薬によっては、使用期限が切れた場合、効果が得られないだけでなく、副作用が出るものもあります

たとえば、市販の痛み止めや熱さましの薬によく配合されているアスピリン(アセチルサリチル酸)がその一例です。アスピリンは、時間の経過によって有効成分が分解されます。その分解後の成分(サリチル酸)が胃腸障害を引き起こすため注意が必要です。[2][3]

使用期限を確認する方法

使用期限が切れた薬を使う危険性がわかったところで、実際に薬の使用期限を確認していきましょう。市販薬(ドラッグストアで購入する薬)と処方薬(病院で処方される薬)で確認する方法が異なります。

  • 市販薬は薬の本体や外箱を確認する
  • 処方薬は使用期限の記載がないため処方された日数で飲み切る

以下で詳しく解説します。

市販薬

市販薬の使用期限は、おもに薬の本体や外箱に記載されています。そのため、薬の外箱は使い切るまで保管しておきましょう。

薬剤師ライター

河江いなさん

外箱から出して薬を保管したい場合は、使用期限をメモしておくと良いでしょう。

処方薬

処方薬は、処方された期間で飲み切りましょう。診察時の症状に合わせた薬を医師が処方しているためです。

処方薬も外箱に使用期限が記載されていますが、外箱から出されて渡される薬には使用期限が記載されていません。

薬局は処方された期間で飲み切ることを想定し、薬を渡しています。

薬剤師ライター

河江いなさん

使用期限が極端に短い可能性があるため、原則は医師が処方した期間で飲み切るようにしましょう。

また、頓服(症状があらわれた時に飲む)のお薬が余ってしまった場合でも、処方期間の後に使うことは避けましょう。使いたい場合には医師や薬剤師に使用方法を相談してください。

保管方法も大切!3つのポイント

薬剤師ライター

河江いなさん

「使用期限内だから安心……」と思っていても要注意!

使用期限はあくまでも「未開封状態の、ある一定の条件(光・温度・湿度)」で試験した結果から設定されます。そのため、薬の状態をなるべく安定に保つにはポイントがあります。

  • 直射日光を避ける
  • 高温な場所で保管しない
  • 湿度の高い場所を避ける

以上、3つのポイントを意識して保管しましょう。

直射日光を避ける

薬は窓際などの直射日光での保管は避けて、風通しの良い場所で保管しましょう。

薬によっては光で有効成分が分解されてしまい、使用期限内であっても充分な効果が得られないことがあります(例:ビタミン剤や一部の目薬など)。

高温な場所で保管しない

基本的に、薬は室温での保管がベストです。

薬剤師ライター

河江いなさん

室温」は日本薬局法という法律で「1~30℃」と決められています。[4]

また、急激な温度変化の場所での保管も薬が変性するリスクがあるため、一定の温度が保てる場所での保管をおすすめします。

湿度の高い場所を避ける

薬の中には湿気に弱いものもあるため、チャック付きの袋に乾燥剤を入れて保管すると良いでしょう。

湿気を含んだ薬は、有効成分が分解されたり、カビが生えたりしてしまい身体に悪い影響をもたらす危険性があります

処方薬を余らせないためには

薬は正しい方法で保管し、期限内で使い切ることが原則です。とくに、処方薬は一度もらうと返金できません

薬剤師ライター

河江いなさん

また、販売業の許可を得ていない人が他の人に薬を販売する行為(インターネットでの転売など)は法律で禁止されています。[5]

薬を余らせないために、以下の2つの方法で日ごろから対策していきましょう。

医師に相談する

一番良い方法は、処方している医師に相談することです。

薬剤師ライター

河江いなさん

受診のときに、余っている薬の数をメモして持参すると、処方の日数を調節して処方してくれますよ

中には自己判断で薬をやめてしまったものの、なかなか言い出せない方もいるでしょう。医師は「薬を飲んでいる」前提で治療の効果などを判定しています。そのため、薬を飲んでいないのであれば正直に伝えましょう。

薬剤師に相談する

医師への相談が難しいようなら、処方せんを薬局へ提出した際に薬剤師に相談しても良いでしょう

薬局では、残薬調整といって、患者さんが持っている薬の整理を積極的におこなっています。

薬剤師ライター

河江いなさん

薬が余る原因と対策についても相談にのってくれるため、ぜひ活用してください。

薬は使用期限を守り、正しく管理・保管を

薬は適切に保管し使用期限を守ることで、期待した効果を得られ、治療中も安心です。一度もらった薬は返金できないため、節約のためにも薬は余らせないことが大切です。

薬剤師ライター

河江いなさん

最後にお伝えした処方薬を余らせない方法も参考に、正しく薬を管理・保管していきましょう。

この記事の執筆者

薬剤師ライター:河江 いなさん

薬科大学卒。地域医療支援病院の薬剤師。外科や循環器、集中治療室病棟での服薬指導を多数経験。2021年に長女を出産し、産休・育休を経て2023年に現職に復帰。現在は、手術室での薬剤管理や手術後の痛みのコントロールに従事中。

幅広い年代の患者さまへの服薬指導と個別指導塾の講師経験から、読者の理解に合わせた分かりやすい文章の執筆を心がけています。

好きなことは愛猫と過ごすこと、イラストを描くこと。

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