大人は喉が渇いたら水を飲みますが、赤ちゃんは喉が渇いたと意思表示できません。
「赤ちゃんはいつからミルク以外で水分補給できるの?」
「暑い時期はどのくらい水分をあげれば脱水にならないの?」
とくに、はじめての子育てでは、このような疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。
佐藤あんなさん
この記事では、子育て真っ最中の薬剤師が、赤ちゃんに必要な水分量やおすすめの飲みもの、哺乳瓶以外の水分補給方法をお伝えします。
さらに、水分を嫌がるときや発熱時の対応など、困ったときの対処法もご紹介しますので、乳幼児を育てている方は必見です。
赤ちゃんの適切な水分補給について
赤ちゃんにはいつから、どのくらいの水分補給が必要なのでしょうか?
赤ちゃんは新陳代謝が活発で、たくさんの汗をかきます。また、体内の水分量は大人が55〜60%なのに対して、1歳未満の赤ちゃんは約70%と、大人より多いことが特徴です。[1]
佐藤あんなさん
これらの特徴をふまえて、脱水を防ぐために適切な水分補給を心がけていきましょう。
水分補給はいつから必要?
一般的には、離乳食がはじまる生後5〜6か月ごろから少しずつ水分補給が必要です。[2]
離乳食をはじめる前の赤ちゃんは、基本的に母乳・ミルク以外の水分補給は必要ありません。たくさん汗をかいた後など、喉が渇いていそうなら、湯冷まし*や麦茶での水分補給を検討します。[2]
佐藤あんなさん
授乳や離乳食の前は避けて水分補給させましょう。また、水分でお腹がいっぱいにならない量にとどめてください。
1日に必要な水分量はどのくらい?
小児科当直医マニュアル 改訂第14版によると、生後6か月〜1年未満の赤ちゃんが1日に必要な水分量は、体重1kgあたり120〜150mLとされています。[3]
たとえば、体重8kgの赤ちゃんであれば、少なくとも960mLの水分摂取が必要ということです。ただし、水分は母乳やミルク、食事からも摂れるため、気にしすぎないようにしましょう。
赤ちゃんにおすすめの飲みもの
赤ちゃんの水分補給には、湯冷ましや麦茶など、ノンカフェインのものがおすすめです。ミネラルウォーターをあたえる場合は、腎臓への負担や消化不良が心配なため、硬水は避けましょう。[4]
イオン飲料や果汁など甘い飲みものは、習慣化する可能性があるので避けた方が安心です。[2]
とくに、イオン飲料は必要以上に摂りすぎると、ビタミンB1が不足し体調不良になるという報告もあります。[5]
赤ちゃん用の水分補給アイテム5選
赤ちゃんの水分補給アイテムは、次の5つが代表的です。
- 哺乳瓶
- スプーン
- スパウトマグ
- ストローマグ
- コップ
ここでは、アイテムそれぞれの特徴と使いはじめる目安、使い方のコツも見ていきましょう。
佐藤あんなさん
水分補給が順調に進まないこともあるかもしれませんが、かならずできるようになりますよ。赤ちゃんのペースにあわせて、焦らずに進めましょう。
哺乳瓶
離乳食がはじまる前は、哺乳瓶に麦茶や湯冷ましを入れてあげましょう。
母乳やミルクとは味がちがうため、はじめは驚いてしまうかもしれません。
佐藤あんなさん
また、麦茶はミルクよりもサラサラしているので、ミルクより勢いよく出ることがあります。赤ちゃんがむせたり、飲みすぎたりしないように気をつけましょう。
スプーン
赤ちゃんは口が小さいので、赤ちゃん用の小さいスプーンがおすすめです。
はじめはうまく飲み込めず、こぼしてしまうかもしれません。
離乳食がはじまっていれば、とろみのあるスープやおかゆなどで飲み込む練習をするのもよいでしょう。
スパウトマグ
スパウトマグは、多くのメーカーで生後4~6か月ごろからの使用を対象としています。
飲み口が哺乳瓶の乳首に似ており、傾けると飲みものが出てくるアイテムです。スパウトマグを使うことで、その後のストロー飲みに移行しやすいでしょう。
佐藤あんなさん
スパウトマグを使わなくても、ストロー飲みやコップ飲みができるようになる赤ちゃんもいます。赤ちゃんのペースに合わせて進めましょう。
ストローマグ
ストローマグの使用は、生後6か月ごろからを対象としているメーカーが多いです。ストローマグを使いはじめる前に、赤ちゃん用の紙パック飲料のストローを口に添え、紙パックを押して飲み物がでることを教えてあげましょう。
佐藤あんなさん
紙パック飲料に慣れてきたら、ストローマグのはじめどきです。すぐにはできないかもしれませんが、だんだんと自分で吸えるようになってきますよ。
最近では、紙パックでのストロー飲み練習が不要なストローマグもあります。
コップ
生後9か月ごろからコップ飲みをはじめてみるのがおすすめです。[6]
コップ飲みは、唇を閉じるなど複雑な口の動きをともない、習得が難しいかもしれません。スプーンを横向きにして飲ませる練習をすると、「すする」ことが上手になる赤ちゃんもいます。
佐藤あんなさん
また、紙コップを使って唇に液体を触れさせて、少しずつ飲ませてもよいでしょう。紙コップは衛生的で災害時にも使えるので、用意しておくと安心ですよ。
こぼれにくい練習用のコップも市販されています。
こんなときはどうする?5つのシーン別対処法
赤ちゃんの水分補給について、嫌がるときや発熱・下痢など病気のときにどうすればいいのかをお伝えします。困ったときのために、一度は目を通しておくと安心ですよ。
佐藤あんなさん
いずれの場合も赤ちゃんが元気なら問題なく、逆にぐったりしていたら病院に相談しましょう。様子をよく見て、いつもと変わりがないかどうかを確認することが大切です。
水分補給を嫌がるときは?
佐藤あんなさん
水分補給を嫌がるときは、水分補給に使うアイテムを変えてみてはいかがでしょうか。
少量でも飲んでほしいときは、ドラッグストアに売っているスポイトもおすすめです。
また、赤ちゃんの唇は敏感なので、好みの材質のアイテムに変えることも一つの手です。材質にはシリコンやプラスチック、紙などさまざまあります。
それでも嫌がる場合は、時間を空けて気分転換をしてみてください。とくに水分を欲しがらず、機嫌がよければ、無理に水分補給しなくて大丈夫です。[2]
飲みすぎるときは?
赤ちゃんが水分を飲みすぎるとき、いつもと様子がちがう場合には病院を受診してください。
赤ちゃんに限らず、水を飲みすぎると「水中毒」を引き起こす可能性があります。水中毒とは、血液中のミネラルのバランスが崩れて「低ナトリウム血症」になり、体調不良を引き起こす状態です。
具体的には、軽症の赤ちゃんの場合には機嫌が悪くなったり、嘔吐したりします。重症になると、けいれんや意識障害などが起きます。[1]
佐藤あんなさん
水分をたくさん飲んだ後、大量に嘔吐してぐったりしているときは、すみやかに病院を受診しましょう。
脱水のときは?
赤ちゃんが脱水になり次のような症状がみられたら、少しずつ水分補給をしましょう。[7]
- 唇や皮膚が乾燥している
- 機嫌が悪い、ぐったりしていて元気がない
- おしっこが出ていない
- 泣いたときに涙が出ない
- 普段より体重が少ない
あまり水分を摂取しないけど機嫌がよく、周りに関心をもっている様子であれば、無理に飲ませなくても大丈夫です。
発熱したときは?
熱があると水分が失われやすいため、こまめに水分補給をしましょう。[8]
高熱の際は、赤ちゃんが嫌がらないようなら、わきの下や首の周りを冷やしてみましょう。ぐったりしていてつらそうなときは、医師の指示にしたがって解熱剤を使用してもよいですね。
また、脱水のときにも言えることですが、赤ちゃんがぐったりしていて水分補給もできない場合には早めに病院を受診しましょう。
下痢や嘔吐のときは?
下痢や嘔吐が続いている場合にも、脱水予防のために少しずつ水分補給が必要です。
下痢や嘔吐ではミネラルが失われやすいため、経口補水液で水分補給するとよいでしょう。
経口補水液はスプーン一杯(5mL程度)から5分おきに飲ませ、徐々に量を増やします。飲めない場合も根気よく続けましょう。[9]
経口補水液がなければ市販のイオン飲料でもかまいません。ただし、治った後もあげ続けるのは習慣化するリスクがあるため避けましょう。
また、冷たい飲みものは吸収が悪いため避け、常温にしてから飲ませてください。
赤ちゃんに適切な水分補給をしよう
赤ちゃんの水分補給は思うようにできなくても、まずは赤ちゃんの様子をしっかり観察してみてください。機嫌がよいようであれば、ひとまず大丈夫です。普段とちがう様子があれば、かかりつけの小児科に相談してもよいでしょう。
佐藤あんなさん
ストロー飲みやコップ飲みの練習がなかなか進まず、もどかしく感じることもあるかもしれません。成長のペースは人それぞれですが、赤ちゃんは必ず成長します。赤ちゃんを信じて、見守ってくださいね。
赤ちゃんに適切な水分補給を心がけて、笑顔で健康な毎日を送りましょう。
[1]環境省>熱中症環境保健マニュアル 2022,p40,p.55
[2]こども家庭庁>健やか親子21>乳幼児健康診査事業実践ガイド,p55,p130
[3]高増哲也,小児内科領域の栄養管理,日本静脈経腸栄養学会雑誌,2019,34巻1号,p27
[4]厚生労働省>授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版),p44
[5]平木 彰佳, 菊地 正広,イオン飲料の多飲によるビタミン B1欠乏症から Wernicke 脳症を発症した 2 例,脳と発達,2014 年,46 巻1 号,p.34
[6]国立成育医療研究センター>乳幼児健康診査身体診察マニュアル,p.98
薬剤師ライター: 佐藤あんなさん
薬剤師免許を取得し、総合病院に7年間勤務しました。内科・外科を問わず、幅広い診療科を経験し、外来がん治療認定薬剤師、糖尿病療養指導士を取得しています。長男出産後は、育児と仕事の両立に奮闘中。「現役の病院薬剤師が、わかりやすく正確な情報を発信する」ことをモットーに執筆活動を続けています。趣味はラジオとグルメ。
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