「夜勤のあとはなんだか体調が優れない」と、多くの看護師が感じているのではないでしょうか。その身体の不調は、自律神経の乱れが原因かもしれません。
生活リズム・環境の変化は自律神経を乱す原因の一つであり、夜勤は看護師の自律神経が乱れやすい環境です。[1]
自律神経である交感神経と副交感神経は、私たちが日々生活する中での身体機能を調整しています。そのため調整ができなくなると、さまざまな身体の不調を招きかねません。
ライフスタイルを見直すと、自律神経が乱れる前に予防できます。
ちこさん
この記事では、自律神経を整えるための生活習慣や乱れを予防する方法を解説します。自分ができる方法で自律神経の乱れを予防し、身体の不調を減らす生活を目指しましょう。
夜勤をすると自律神経が乱れる理由
自律神経は身体の内部環境のバランスを保つ役割を持ち、自分の意思とは関係なく働いています。環境の変化が起こると自動的に自律神経である交感神経と副交感神経が切り替わり、うまくバランスを保っています。しかし、長期的に環境の変化が続くとコントロールが困難です。
夜勤が自律神経を乱す原因を解説します。
概日リズムの乱れ
看護師の平均夜勤回数は1か月に4回以上であり、1週間に1回は生活リズムが逆転している状況です。[2]そのため多くの看護師は不規則な生活をせざるを得ません。
概日リズムは睡眠と覚醒の周期など、1日(約24時間)の周期を整える生理機能です。
夜勤は昼夜を逆転させ、身体が時差ボケのような状態になります。昼夜逆転によって睡眠と覚醒のバランスが崩れると概日リズムが乱れはじめます。[1][3]
太陽の光はセロトニン*を増やし、概日リズムをリセットする役割がありますが、昼夜が逆転した生活は太陽の光を浴びる機会が少ない状態です。 [4][5]
ちこさん
概日リズムは、自律神経を通して周期を調整しているため、概日リズムが乱れると自律神経が乱れる要因となります。
睡眠時間と質
夜勤は仕事による緊張感と眠れない環境のため交感神経が優位な状態です。数時間の仮眠休憩も十分な睡眠ができる環境ではありません。睡眠時間がバラバラになり、十分に取れず、不眠症や睡眠不足の原因となります。 [3]
ちこさん
また、夜勤終わりは疲れて日中に寝てしまう方もいるでしょう。日中の睡眠は概日リズムを崩し、睡眠障害の原因となります。[6]
睡眠障害は疲労の蓄積につながり、また概日リズムを崩すため自律神経に影響をおよぼします。
多忙による疲労の蓄積
16時間勤務の夜勤が年々増えており、夜勤で長時間勤務している看護師は全体の半数近くを占めています。[2]
夜勤は看護師の配置が少なく、一人が受け持つ仕事量はとても多くなります。また、急変や緊急入院、患者の数や介助量によっては、数時間の仮眠休憩では十分な休息ができず疲労は取れません。
引き継ぎするまで安全に業務を終えられるかと緊張感が続き、ストレスが多い状態が続く場合もあるでしょう。ストレスや疲労が多いと交感神経が優位になり、覚醒しやすくなるため、仕事が終わった後も休みたいのに眠れないこともあります。そのため、睡眠の質に影響を与えたり、睡眠時間が短くなったりして疲労が取れず、身体に影響をおよぼします。[3]
自律神経の乱れを症状でチェック
自律神経は身体にさまざまな影響を与えて、身体の内部環境を整えています。
明らかな疾患はないのに、身体に不調を感じるのは、自律神経の乱れが原因かもしれません。
ちこさん
自律神経が乱れたときに生じやすい「身体的症状」と「精神的症状」をご紹介します。夜勤をしていて不調を感じている方は当てはまる症状がないかチェックしてみましょう。
身体的症状
身体的な症状は慢性的なものもあるため、自律神経の乱れが原因の一つだと気づきにくいかもしれません。[7]
- 全身倦怠感
- めまい
- 肩こり
- 動悸
- 頭痛または頭重感
精神的症状
激しい気分のムラや、活動性が低下するなどの行動面、心理面が挙げられます。[7]
- イライラ感
- 不安な気持ち
- 気分の落ち込み
- 目覚めが悪くなった
自律神経を整えるための予防策
夜勤をする以上、規則正しい生活は困難です。しかし、日常生活の中で工夫すれば、自律神経が乱れる前に予防できます。
自律神経を整えるためのおすすめの方法を3つご紹介します。
ちこさん
身体や心に症状が出て悪化する前に取り組んでみましょう。簡単ですぐにできる方法ばかりですのでぜひ参考にしてください。
リラックスする時間をつくる
リラックスする時間をつくると気分が落ち着くため、交感神経が抑制され、副交感神経が優位になります。リラックスできるものは人によって違うので、自分にあったものをみつけましょう。たとえば、以下のような対策が挙げられます。
- お風呂に浸かる
- 好きなテレビや動画を見る
- ソファーでくつろぐ
- 家事しない日をつくる
- 好きな香りを身につける
- 癒しをみつける
好きな香りはリラックス効果があります。とくに、ラベンダーの香りはリラックス効果を高めます。アロマを使いリラックスできる空間をつくるのもよいですよね。[8]
ちこさん
他には、癒しもリラックス効果を高めます。癒しを感じるものは個人差があります。アイテム、場所、音楽、香りなど、自分にとっての「癒しの〇〇」をみつけましょう。
睡眠時間を確保する
夜勤の仕事終わりはあまり寝過ぎず、夜早めに寝るようにしましょう。しっかり睡眠時間を確保すると疲労の回復につながります。スマートフォンのブルーライトの光は、不眠の原因につながるため、寝る前は必要以上に見ないようにしてください。[9]
ちこさん
夜勤以外の日の寝る時間は、なるべく同じ時間にして生活リズムが整うようにしましょう。
セロトニンは自律神経を調整し、精神の安定を保つ働きがあります。セロトニンを増やすためには、太陽の光を浴びる規則正しい生活や、適度な運動などが効果的といわれています。[5]
睡眠時間を確保し、太陽の光を浴びてセロトニンの低下を防ぎ、自律神経を整えましょう。
ストレスの解消方法を知っておく
ストレスは自律神経を乱す原因です。自律神経を整えるためにはストレスを解消して溜めないようにしましょう。[10]
方法は人それぞれですが、おもに身体を動かしたり、人に話したり、感情を表現したりする(笑う、喜ぶ、泣く)とストレス解消につながります。
以下のような方法も参考にして、自分だけのストレス解消方法をみつけておきましょう。
- 運動して汗を流す
- 友達に会って愚痴を話す
- 旅行に行って新しい経験をする
- 美味しいものを食べる
- お笑いを見て笑う
- 感動する映画やドラマを見る
自律神経を整えるために、生活習慣の見直しを
夜勤をしていると自律神経が乱れやすい環境になってしまいます。だからといって環境を変えず体調が悪くなってからでは遅いので、日ごろの行動を見直して早めに予防しましょう。
ちこさん
今回紹介した予防策はすぐに取り組めるものなので、できることから生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?仕事を長く続けるためにも、自律神経を整えて、心も身体も健康に過ごしましょう。
[1]折山早苗.宮腰由紀子.小林敏生.深夜勤務労働が看護師に及ぼす影響.日本医療・病院管理学会誌.2011年,48巻3号.147-156 p152–153
[2] 独立行政法人労働政策研究・研修機構>調査研究成果 >国内労働事情 >取材記事バックナンバー>2交替制夜勤職場が48.4%で過去最高に/日本医労連調査
[5]有田秀穂.セロトニン欠乏脳〜キレる脳・鬱の脳を鍛え直す.Health and Behavior Sciences.2005年,3巻2号.123-129 p124,p126-128
[6]肥田昌子.三島和夫.概日リズム睡眠障害の病態生理研究の動向.日本生物学的精神医学会誌.2011年,22巻3号.165-170 p166-167
[7]セルフメンタルヘルス-厚生労働省,p4,p28,p29,p39
[8]吉田聡子.佐伯由香.香りが自律神経に及ぼす影響.日本看護研究学会雑誌.2000年,23巻4号 11-17 p14-16
[9]綾木雅彦.森田健.坪田一男.住宅照明中のブルーライトが体内時計と睡眠覚醒に与える影響.住総研研究論文集.2016年,42巻.85-95 p91
看護師ライター: ちこさん
看護学科3年課程卒。総合病院で終末期の看護、三次救急病院(外来・病棟)で救急看護を経験し、看護師として10年以上のキャリアを積む。現在は医療ライターとして活動し、動画編集やWeb制作にも取り組んでいる。
「読者が共感できる文章」を第一に考え、経験とリサーチ力で、専門的な知識を正しく、わかりやすい文章で伝えることを心がけています。
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