「ジェネリック医薬品になさいますか?」薬局でよく耳にする「ジェネリック」という言葉。
医療費を抑えたい中で「先発医薬品と同じような効果でお安くなりますよ」と説明を受けると魅力的に感じる方も多いでしょう。
しかし、なぜジェネリック医薬品にすると安くなるのでしょうか?健康にかかわる薬だからこそ、安くなる理由やデメリットも知ったうえで安全に使いたいと思いますよね。

中村ゆうたさん
この記事では薬剤師で製薬会社の研究開発部に勤めた経験を持つ筆者が、開発段階の視点も含めてジェネリック医薬品を解説します。
ジェネリック医薬品を選ぶかどうか自分の意思で決め、安全に使うためのサポートとなれば幸いです。
ジェネリック医薬品の特徴と安さの理由


「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」は、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に製造・販売される、「先発医薬品と同じ有効成分を同量含んでおり、(先発医薬品と)同等の効き目がある」と認められた医薬品です。[1]
先発医薬品の情報を基に別の企業が後から作った薬で、どの企業でも同じ品質や効果が保たれるよう、製造工程は基準に沿って管理されています。



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また、効果が先発医薬品と変わりないかも確認されています。[2]
ジェネリック医薬品が安い理由は先発医薬品のデータを参考にして作ることで有効成分の研究や臨床試験を省略・簡易化でき、開発費を抑えられるためです。[2][3]
ジェネリック医薬品のデメリット


先発医薬品と同じ効果が期待できるのに安いジェネリック医薬品。しかし、特有の開発方法による課題もあります。
ジェネリック医薬品は先発医薬品の有効成分の特許(物質特許)が切れた後に販売されます。ただし、薬の作り方や形の特許(製剤特許)がまだ有効である場合には製剤特許を回避しなければなりません。[1][2][4]
製剤特許を意識して薬を作るとどのようなデメリットがあるのでしょうか?
先発医薬品と完全に同じではない
製剤特許を回避して作ると企業独自の技術が採用されます。つまり、添加物や製造方法は異なるのが一般的です。[2]
添加物や製造方法が違うと先発医薬品とは使用感が異なる可能性があるので「ジェネリック医薬品に変えたら使い心地が悪くなった」と感じる方もいるかもしれません。



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添加物が変わるため、同じ有効成分の薬でもアレルギーが出る方もいます。[5]
臨床試験が簡易化される
ジェネリック医薬品の効果判断の基準は一般的に「先発医薬品と同じように有効成分が吸収されるか」です。[2]そのため、臨床試験で薬そのものの治療効果を直接評価していない例もよく見られます。
ただし、有効成分が同じ量吸収されていれば、効果は論理的には同じです。臨床試験を簡易化できるよう条件の調整や他の試験の追加など、製剤に応じた工夫が行われています。[6]
安全性や品質管理は先発医薬品が基準です。添加物も政府が許可する範囲で使われます。[2]



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販売後も医療機関からの情報提供や政府の調査により、有効性や安全性には十分な注意が払われています。[2]
ジェネリック医薬品のメリット


先発医薬品を基に別の企業が開発するジェネリック医薬品には「医療費を減らせる」「先発医薬品の課題が改善される」などの独自のメリットがあります。
実際にどのくらい安くなるのか、どのように課題が改善されるのか、実例を交えて説明します。ジェネリック医薬品のメリットも知り、薬を選ぶ際に自信を持てるようにしましょう。
医療費を減らせる
多くのジェネリック医薬品の薬価は先発医薬品の5割以下になります。(2024年1月27日現在)[7]
先発医薬品に比べてジェネリック医薬品は開発費の削減を見込めるため、薬価を抑えられ医療費の負担も減らせます。



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ジェネリック企業の中には安全基準を満たしながら開発費や原料費を抑え、さらに安価な薬を提供する企業もあるでしょう。
先発医薬品の課題改善が期待できる
先発医薬品は一社のみの販売ですが、ジェネリック医薬品は複数社が販売します。そのため、自社の技術を活かして他の企業と差別化を図らなければ薬が売れません。技術力が薬に注がれる結果、先発医薬品の課題改善が期待できます。
剤型の変更によって先発医薬品の保存性・携帯性の課題がジェネリック医薬品で改善された例を下記の表に示します。
医薬品の種類 | 剤型 | 課題点と改善点 |
先発医薬品 | 錠剤[8]シロップ剤[9] | 【課題点】 ・小児にはシロップ剤が使われるが、冷所保存が推奨され長期保存ができない。[10] ・長時間のお出かけの際に持ち歩きにくい。 |
ジェネリック医薬品 | ドライシロップ剤*[11] | 【改善点】 ・常温保存ができるので長期保存が可能となった。 ・粉薬の形状になり、携帯性が向上した。 |
安全に使用するための3つのコツ


「デメリットを抑えながらジェネリック医薬品を使えたらいいのに……」と思われる方は多いでしょう。デメリットの影響を小さくしつつ、ジェネリック医薬品を安全に使うためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか?



中村ゆうたさん
ジェネリック医薬品を選択する際や切り替え時に意識したい3つのコツを薬剤師である筆者が提案します。
効果の現れ方やアレルギーに注意する
先発医薬品からジェネリック医薬品に切り替える時は効果の現れ方が変わる場合があります。効果の変化は薬の違いだけでなく、ノセボ効果*によるものかもしれません。
ノセボ効果は医師や薬剤師と相談して治療の不安を解消したり、情報を得たりすることで軽減が見込めます。[13]ノセボ効果の影響を小さくするためにも、ジェネリック医薬品を正しく理解し納得して使うことが大切です。
体調の変化は早めに相談する
先発医薬品、ジェネリック医薬品にかかわらず、新しい医薬品を試す際には体調への配慮が必要です。効果が実感できない場合は医師や薬剤師と相談し、治療や薬の見直しが必要かもしれません。



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副作用が疑われる場合は直ちに使用を中止し、医師や薬剤師に相談しましょう。
オーソライズドジェネリックを検討する
ジェネリック医薬品の仕組みを知っても不安が残る方はオーソライズドジェネリックを試してみてはいかがでしょうか?
オーソライズドジェネリックは有効成分だけではなく、原薬、添加物、製法なども先発医薬品と同一なジェネリック医薬品です。[15]薬価も通常のジェネリック医薬品と変わらないため、不安を軽減しつつ医療費を抑えられるでしょう。[15]



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ただし、すべての薬にオーソライズドジェネリックが存在するわけではありません。希望する場合は医師や薬剤師に相談してみましょう。
医師や薬剤師と自分に合った薬を選ぼう


ジェネリック医薬品の普及により同じ有効成分でも医療費を抑えながら、さまざまな薬を選べるようになりました。
薬にはどうしても個人差があります。



中村ゆうたさん
そのため、自分に合った薬を医師や薬剤師と相談しながら自信を持って選ぶことが大切です。
「安くて使いやすい薬があればいいのに……」そういった要望にジェネリック医薬品が応えてくれるかもしれません。
【引用】
[1]政府広報オンライン>健康・医療・福祉>医療>安心してご利用ください ジェネリック医薬品
【参考】
[3]德永 雄二,ジェネリック視点からの製剤開発,ファルマシア,2016,52巻5号,p.417
[4]金沢大学付属病院 先端医療開発センター>特許制度の概要とよりよい特許を取得するための注意点,p.6
[5]厚生労働科研究成果データベース>医薬品添加剤等安全確保に関する研究>201034079A0001,p.10-11
[6]国立医薬品食品衛生研究所薬品部>ガイドライン等>後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン(2020/03/19改正)本文,p.4,p.24-29
[8]ザイザル錠5mg 添付文書 2021年8月改訂(第1版)
[9]ザイザルシロップ0.05% 添付文書 2021年8月改訂(第1版)
[10]独立行政法人 国立病院機構 南岡山医療センター>外来の患者様へ>各部門のご案内>薬剤部>薬の話>薬の内服方法について(小児)
[11]レボセチリジン塩酸塩DS0.5%「タカタ」添付文書 2023年12月改訂(第1版)
[12]福井大学医学部付属病院>受診のご案内>お薬のご案内>お子様とお薬
[14]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>リウマチ・アレルギー対策>リウマチ・アレルギー情報>4食物アレルギー
[15]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)>中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第156回)議事次第,p.15


薬剤師ライター:中村 ゆうた さん
大阪大学薬学部卒。ジェネリック医薬品と一般用医薬品を取り扱う製薬企業にて研究開発、人事企画を担当。製剤処方の検討や分析法の確立、社内イベントの企画などに携わる。2024年7月からブログ運営などのライター活動を開始。医療分野と科学分野の専門的な解説記事から一般向けのわかりやすい記事まで幅広く執筆します。
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