夫婦で妊活をはじめたけど「なかなかこどもを授かれない」と悩んでいませんか?
「こども家庭庁」によると、カップルの不妊について、以下のデータが報告されています。[1]
日本では2.6組に1組のカップルが不妊に悩んだ経験があり、4.4組に1組が実際に検査や治療を経験しています。[1]
不妊の原因は男女両方にあり、現在の日本でも不妊治療はめずらしいものではありません。

ヤマナカさん
筆者も不妊治療をはじめて体外受精の末、妊娠にいたりました。
不妊の原因や検査、不妊治療のながれについて、筆者の経験もあわせて紹介します。この記事を夫婦で読み、不妊について知っていきましょう。
不妊ってなに?定義を知ろう


不妊とは、妊娠を希望している健康な男女が「1年間」性生活をおこなっても妊娠しない状態のことです。[2]
1年以上妊娠しない場合、夫婦のどちらか、あるいは両方に何らかの原因があることも多いため、クリニックに受診し検査していく必要があるでしょう。



ヤマナカさん
治療をスタートしてすぐ妊娠する人もいれば、年齢や病気などの理由で時間が必要な人たちもいます。
女性・男性不妊の原因について


なかなか妊娠にいたらない夫婦は、一度専門のクリニックで相談してみましょう。検査したからといって必ずしも原因が見つかるわけではありません。しかし、クリニックへ受診することは妊娠への第一歩になります。
実は、不妊の原因の約35%が男性にあるといわれています。[2]



ヤマナカさん
妊娠するのは女性だからといって、女性だけに原因があるわけではないのです。
「原因は自分ではないだろう……」と検査をうけたことがない男性も、どんな原因があるのか知っていきましょう。
女性不妊の原因[3]


女性不妊のおもな原因は「排卵因子」「卵管因子」「頸管因子」「子宮因子」の4つです。
「排卵因子」は、通常の月経周期よりも短い、または長い場合に疑われます。通常の月経周期は25日〜38日といわれていますが、通常よりかけ離れた周期の場合には、出血があるのに排卵していない排卵障害になっていることも。[4]
排卵障害の原因にはおもに以下が考えられています。[4]
- 高プロラクチン血症
- 多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群
- ストレス
- ダイエット
- 早発卵巣不全
「卵管因子」とは、卵管がとじていたり狭くなったりしてしまうことです。卵管は排卵された卵子と精子が出会うところですが、卵管因子があると受精できません。また、受精したとしても、受精卵が子宮まで届かないことも。痛みがないため、検査で発見される場合がほとんどだといわれています。
卵管因子が発生する原因はおもに以下が考えられます。
- 性器クラミジア感染症
- 卵管周囲炎
「頸管因子」は、膣と子宮をつなぐ子宮頸管で起こる不妊の原因です。通常、排卵日が近くなると、精子が子宮頸管を通って子宮にたどりつけるように粘液が多くなります。頸管因子は、何らかの原因で通常より粘液がすくなくなり、精子が子宮内まで届かなくなってしまう状態です。



ヤマナカさん
子宮になにかしらの病気がある「子宮因子」の場合も妊娠しづらいといわれています。
不妊に影響するといわれる子宮因子は以下の4つです。
- 子宮筋腫
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮奇形
- 子宮内膣癒着(ゆちゃく)症
子宮の病気や、形の異常などが子宮因子になる可能性があります。
男性不妊の原因[2]
男性の場合には「造精機能障害」「性機能障害」「精路通過障害」の3つが不妊の原因となるでしょう。
「造精機能障害」は男性不妊の原因のなかで90%を占めるといわれています。[2]精巣に異常があると、精子の数がすくない、運動率がひくい、または精子がそもそもつくられないなどの支障が生じます。
「精機能障害」とは勃起不全(ED)や射精ができない射精障害のことです。この場合は、パートナーとカウンセリングをうけたり、薬で治療したりする必要があります。
精子は正常に作られているけれど、精子の通り道がとじている場合や、精液に精子がはいっていない閉塞性無精子症などは「精路通過障害」と呼ばれます。
原因不明不妊[2]
妊娠を望む夫婦が不妊検査をうけても、かならずしも原因がわかるわけではありません。検査しても特定の原因がみつからない場合もあるようです。
筆者も原因がわからない「原因不明不妊」を経験しました。



ヤマナカさん
先生と主人と話し合い、不妊治療をはじめることに。不妊治療しても妊娠できない場合は、さらに検査し、原因をみつけていく方針となりました。
不妊検査ではどんなことをするの?


不妊にはさまざまな原因があることを理解していただけたでしょうか。では、クリニックに行ったらどんな不妊検査をしていくのでしょう。
ここでは、おもな検査内容と検査によって何がわかるのか説明します。クリニックによって違いはありますが、おおまかな流れについて紹介していきます。



ヤマナカさん
検査を受けて不妊の原因を知り、適切な治療へ進んでいきましょう。
女性の検査[5]
女性では「血液検査」「内診・経腟超音波検査」「子宮卵管造影検査」を受けることが多いようです。
「血液検査」では、女性ホルモンのFSH*やLH*などの数値や、他に病気がないかを調べます。血液検査によって、卵子がしっかり育ち排卵が規則正しくおきているかがわかります。ホルモンの量は月経周期によって変わるため、検査は2回に分けておこなうのが一般的です。
「内診・経腟超音波検査」では、超音波を発する直径1.5〜2cmの細い機械を膣のなかにいれ、子宮に筋腫がないか、卵巣は腫れていないかなどをみます。
「子宮卵管造影検査」は、子宮の形に異常がないか、卵管がつまっていないかなどを調べる検査です。子宮のなかに造影剤をいれ、レントゲン写真をとります。人によっては少し痛みがあります。



ヤマナカさん
筆者も子宮卵管造影検査を2回しました。痛みの感じ方は個人差がありますが、筆者は卵管がつまっていなかったため、我慢できる痛みでした。「下腹部がずーんと重くなる痛み」といったらイメージしやすいでしょうか。
男性の検査
男性は「血液検査」「精液検査」をおこないます。
「血液検査」では、FSH、LH、テストステロン(男性ホルモン)などを調べます。[6]
FSHとLHは脳から分泌され、テストステロンは精巣から分泌されるホルモンです。これらの値が低い場合、なにか不妊の原因がある可能性が考えられます。
「精液検査」は、自宅またはクリニック内で精子をとっておこなう検査です。



ヤマナカさん
精液検査では、精子の量や濃さ、動いているか(運動率)、正しい形か(奇形率)を調べます。[6]
不妊治療の種類


不妊治療にはさまざまな方法があり、状況に応じて治療をしていきます。どのような治療法があり、どのタイミングでステップアップしていくのかを知っておきましょう。



ヤマナカさん
筆者は約3年間、タイミング法を続けましたが、妊娠にはつながらず……。そのため、筆者の年齢や状況を考え、人工授精をスキップして体外受精へと進みました。
タイミング法[7]
妊娠しやすいタイミングである排卵日に性交することが妊娠のカギとなります。まずは自分の排卵日を知るところからスタートです。
クリニックで検査をうけ、排卵しているか、卵胞の大きさや性交のタイミングがあっているかを医師に指導してもらいます。



ヤマナカさん
個人差はありますが、排卵日の2日前から排卵日までに性交をおこなうと妊娠しやすいといわれてます。
人工授精[8]
人工授精は、洗浄・濃縮して人工的に精子を調整したあと、受精しやすい状態の精子だけを子宮に注入する方法です。女性の排卵日にあわせ、カテーテルを使って子宮の中に注入します。
排卵日は超音波検査して卵胞の大きさや排卵検査薬を使って測定。



ヤマナカさん
人工授精を何回かおこなっても妊娠しない場合は体外受精にステップアップしていく場合もあります。
生殖補助医療[9]
体外受精・胚移植(IVF-ET)や顕微授精(ICSI)などの生殖補助医療で不妊治療することもあります。
自然な状態では、一つの月経周期で一つの卵子しか排卵されません。しかし、体外受精では妊娠の確率をあげるため、注射薬で卵巣を刺激して多くの卵子を育てます。卵子が十分に成長したら、膣から細い針を卵巣へさし、卵子を吸い取る採卵をします。
採れた卵子と精子を人工的に受精させ、数日間そだてた受精卵をエコーで見ながら、子宮に戻して完了です。



ヤマナカさん
筆者は採卵時に麻酔を使ったため、痛みはありませんでした。エコーで受精卵が子宮内にもどるのをみて、小さな命が宿る瞬間に感動しました!
精子の動きがよわい・数がすくない・形に異常がある場合などで自然な受精が難しい場合には、顕微授精(ICSI)をおこないます。元気な精子を一つ選び、細いガラス針を使って直接卵子に注入。人工的に受精させ、数日後に子宮に戻します。
不妊治療について、夫婦で考えよう


令和4年4月から、一部を除いた一般不妊治療(タイミング法・人工授精)と生殖補助医療(体外受精・顕微授精など)は保険適用となりました。[10]
筆者は不妊治療を経験し、精神的・身体的な負担が大きく、悩んでいた時期がありました。ステップアップしても妊娠できない日々はつらく、苦しいものです。



ヤマナカさん
しかし、不妊治療はひとりで頑張るものではありません。夫婦のことだからこそ、たくさん話し合いながら進めることが大切です。
こども家庭庁や地方自治体は、不妊症や不育症に関する相談支援をおこなっています。
お金や心身の負担で不妊治療ができるか悩んでいる方は、一度「性と健康の相談センター」などへ相談してみましょう。


薬剤師ライター:ヤマナカさん
東京薬科大学卒。薬剤師、スポーツファーマシスト取得。病院薬剤師、薬局薬剤師を経て結婚を機に東南アジアへ。専業主婦が取材ライターと医療ライターに挑戦。分かりやすい記事を必要としている人に届けたいという思いを大切に執筆活動しています。
X:https://x.com/yamanaka_pharm
note : Yamanaka|note
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