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【薬局薬剤師向け】医療DXとは?加算についても解説

2024年度の診療報酬改定より「医療DX推進体制整備加算」が新設されました。この加算の施設基準の一つに以下の項目があります。[1]

マイナンバーカードの健康保険証利用の使用について、実績を一定程度有していること[1]

医療においては、健康保険証をマイナンバーカードを基本とするしくみ(マイナ保険証)への移行がすすめられています。すでに2024年12月2日からは、現行の健康保険証は新規発行されなくなっていて、発行済の保険証がつかえるのは最長でも2025年12月2日までです[2][3]

この記事では現役薬剤師の筆者が、国がすすめている医療DXの内容と、薬局にとってのメリットについて解説します。

薬剤師ライター

中野カニさん

将来を見すえた薬局づくりに活かしていきましょう。

目次

薬局における医療DXとは

医療機関や薬局にはマイナンバーカードを読み取るカードリーダーが設置され、患者さんはマイナ保険証での受付ができるようになっています。

薬剤師ライター

中野カニさん

薬局ではたらく薬剤師さんの中にも、患者さんからマイナ保険証の使い方などを尋ねられたことがある方もいるのではないでしょうか。

ここでは医療DXがすすめられている背景と、具体例を紹介します。

医療DX推進の背景

医療DXとは、医療・保健・介護の中で生まれる個人の情報やデータを活用することです。国民がより良質な医療を受けられるよう、デジタル技術によって社会・生活の形をかえていくことだとされています。[4]

また、少子高齢化がすすんでいる日本では、現役世代の減少が今後の課題です。

薬剤師ライター

中野カニさん

働き手が減っても質の高い医療提供体制を維持していくためにも、医療DXがすすめられています。[4]

医療DXの具体例

薬局に関係のある医療DXの具体例を紹介します。

  • オンライン資格確認等システム(診療情報、薬剤情報、特定検診情報の閲覧)
  • 電子処方箋管理サービス(処方情報、調剤情報のデータ一括管理、閲覧)
  • 電子カルテ情報共有サービス(診療情報提供書、患者サマリーなどの閲覧)

これらのシステムにおいて、患者情報にアクセスする際にマイナ保険証が必要になります。[5]

医療DXを取り入れるメリット

患者さんの医療・保健・介護の情報は、薬剤師にとって貴重な情報です。

薬剤師ライター

中野カニさん

医療機関や薬局が医療DXをすすめることは国の方針ではありますが、せっかく取り入れるのであればうまく活用していきたいですよね。

医療DXを取り入れると、薬局、患者にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではそれぞれのメリットを紹介します。

薬局におけるメリット

医療DXがすすむことにより、薬局業務の中でも役に立つことがあるでしょう。ここでは3つ紹介します。

①重複投薬チェック機能

電子処方箋では、重複投薬になってしまう薬や併用禁忌の薬がある場合には、医師が処方箋を発行する段階でアラートがかかるしくみになっています。[6]

薬剤師ライター

中野カニさん

電子処方箋の実施がすすめば、薬局での疑義照会の回数が減っていくでしょう。

②病院との連携

電子カルテ情報共有サービスを導入すると、診療情報提供書(紹介状)や患者サマリーなどの電子カルテ情報が、全国の医療機関や薬局で閲覧可能になります[7]

医師と薬剤師が情報共有できるしくみも検討されており、トレーシングレポート*の送受信が可能になれば服薬情報等提供料の算定もしやすくなるかもしれません。[8]

③加算の算定

医療DXの推進にかかわる施設基準を満たすと、医療DX推進体制整備加算が算定できます。薬局の収益アップにもつながる加算です。[1]

トレーシングレポート*:服薬情報提供書のこと。急は要さないが医師へ伝えるべきこと(残薬や副作用など)を患者さんから聞き取り、医師へ伝えたいときに使用する。

患者さんにおけるメリット[9]

患者さんが直接影響を受ける医療DXの一つにマイナ保険証があります。患者さんがマイナ保険証を使うメリットもしっかり理解しておきましょう。

  • 病院や薬局で過去にもらった薬の情報や検診の情報を正確に伝えられる
  • 高額療養費制度の事前の申請が不要になる
  • マイナポータルで、医療費控除の確定申告が簡単になる
  • マイナポータルで、自身の医療情報を確認できる
薬剤師ライター

中野カニさん

上記のメリットを説明して納得してもらうことで、患者さんも安心してマイナ保険証を使えるのではないでしょうか。

医療DX推進体制整備加算とは

薬局で医療DXをすすめるにあたっては、システムの導入や患者さんへの説明など負担がかかることもあるでしょう。

医療DX推進体制整備加算は、薬局として医療DXをすすめることで算定できる加算です。少しでも説明時の負担が無駄にならないよう、算定しておきたいですよね。ここでは、医療DX推進体制整備加算について詳しく紹介します。

医療DX推進体制整備加算のポイント

医療DX推進体制整備加算は、医療DXをすすめる薬局を評価する加算です。調剤基本料の加算となるため、薬局の収益にも大きく影響します。

薬剤師ライター

中野カニさん

点数は、マイナ保険証の利用率によって決まり、令和7年9月までは利用率が高いほど高い点数が取れるしくみです。[10]

加算の内容は、医療の現状により診療報酬改定の時期でなくても改正されることもあるため、厚生労働省からの情報をしっかりチェックし対応していきましょう

マイナ保険証の利用率については、後ほど確認方法を解説します。

薬局における施設基準

医療DX推進体制整備加算を算定するためには、施設基準を満たす必要があります。

令和6年度の施設基準を簡単にまとめると、以下のとおりです。[1][11]

  • レセプトはオンライン請求を行っていること
  • オンライン資格確認システムを導入していること
  • 電子薬歴による薬歴管理をしていること
  • マイナ保険証の利用実績が一定程度あること
  • サイバー攻撃に対するセキュリティ対策を行っていること

さらに、令和7年からは「電子処方箋」「電子カルテ情報共有サービスの活用」などの施設基準も増えていく方針です。

薬剤師ライター

中野カニさん

加算を取るには、医療DXの導入が基本となっていくため、新しく出る情報もこまめに確認するようにしましょう。

マイナ保険証の利用率をあげるには

ここまでで説明したように、患者さんにマイナ保険証を使ってもらうことは、薬剤師が医療DXを活用できるだけでなく、医療DX推進体制整備加算の算定につながります

将来的にマイナ保険証のみの運用になるとはいえ、スムーズな切替をすすめて患者さんとの良い関係を築いていきたいですよね。ここではマイナ保険証の利用率をあげるポイントを紹介します。

マイナ保険証の利用率を確認する

マイナ保険証の利用率を確認する方法については以下のとおりです。[12]

  • 支払基金から毎月届くメールを確認する
  • 医療機関等向け総合ポータルサイトにログインして確認する
薬剤師ライター

中野カニさん

月に1度は、自分の薬局のマイナ保険証の利用率を確認してみましょう。

患者さんにメリットを説明する

マイナ保険証利用の声かけとともに、「過去の医療情報を薬局に伝えやすい」「高額療養費制度の申請や確定申告が簡単になる」メリットを患者さんにわかりやすく説明しましょう

薬剤師ライター

中野カニさん

新しいことに慣れない方や抵抗がある方にも、患者さん自身のメリットを知ってもらうことでスムーズに切り替えてもらえるはずです。

医療DXにつよい薬剤師になろう

マイナ保険証についてはニュースなどでもよくとりあげられるため、患者さんから尋ねられることもあると思います。

自信をもって説明ができれば、患者さんとのより良いコミュニケーションにつながるだけでなく、マイナ保険証の利用率アップや加算の算定にも貢献できるかもしれません

薬剤師ライター

中野カニさん

医療DXにつよくなり、患者さんからも周りのスタッフからも頼られる薬剤師になりましょう。

引用・参照

引用

[1]厚生労働省>ホーム>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療保険>令和6年度診療報酬改定について>令和6年度診療報酬改定説明会(令和6年3月5日開催)資料等について>令和6年度診療報酬改定の概要 【調剤】p29

参照

[2]デジタル庁>政策>マイナンバー(個人番号)制度・マイナンバーカード>マイナンバーカードの健康保険証利用

[3]マイナポータル>マイナンバーカードの健康保険証等利用の申込>健康保険証等としての利用>健康保険証や医療券・調剤券はいつから使えなくなりますか。

[4]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>医政局が実施する検討会等 >「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム>第1回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料について>【資料1】医療DXについて p5,6 

[5]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>医政局が実施する検討会等>「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム>第4回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料について>資料2-2 全国医療情報プラットフォームの概要

[6]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医薬品・医療機器>電子処方箋>1.1全体概要>病院・診療所向け p5

[7]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療>医療分野の情報化の推進について>電子カルテ情報共有サービス

[8]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>社会保障審議会(医療部会)>第111回社会保障審議会医療部会 資料

[9]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療保険>マイナンバーカードの健康保険証利用のメリット

[10]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)>)中央社会保険医療協議会 総会(第603回)議事次第>総-8-3答申について(医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直し)

[11]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)>中央社会保険医療協議会 総会(第603回)議事次第>総-8-2答申について(医療DXに係る診療報酬上の評価の取扱い)p13-18

[12]厚生労働省>テーマ別に探す>健康・医療>オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)>一時金の増額、カードリーダー増設支援、医療DX推進体制整備加算の算定要件に関する説明動画>医療DX推進体制整備加算・ 医療情報取得加算の見直しについて p8

この記事の執筆者

薬剤師ライター:中野 カニ さん

国立大学薬学部を卒業後、病院、調剤薬局、医薬品卸での勤務を経験。2025年から薬剤師ライターとして活動を開始。これまでの経験を活かし、さまざまな視点でむずかしい医薬品や医療業界の情報を、タイムリーかつ、わかりやすくお届けしたいという思いで執筆活動をしています。

X:https://x.com/kani_nakano

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