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40代50代の女性に知ってほしい「更年期高血圧」の原因と対策5選

「若いころ血圧が低いと言われたから高血圧とは無縁だと思っていた」

「高血圧っておじさんの病気だから自分には関係ないだろう」

このように思っている方もいるかもしれません。しかし、国民健康・栄養調査(2019)によると、女性では40代以降で高血圧患者数の増加傾向がみられます[1]また「更年期」に当たる閉経期前後の女性において「収縮期血圧(いわゆる上の血圧)の上昇」がみられたという報告もあります。[2]

高血圧は放置すると重篤な病気を引き起こし、命を落とす危険性もある病気です。この記事では薬剤師である筆者が、更年期の高血圧や高血圧対策について解説します。

薬剤師ライター

河村ゆみさん

高血圧の知識を深め、自分の血圧に意識を向けるきっかけにしてみませんか。

目次

そもそも高血圧とは

高血圧とは血圧が高い状態を指します。高血圧治療ガイドライン2019による高血圧の診断基準は次のとおりです。

診察室血圧値は140/90mmHg以上,家庭血圧値は135/85mmHg以上, 24時間自由行動下血圧値は130/80mmHg以上の場合に高血圧として対処する。」[3]

血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力で、血液量と血管の硬さによって変動します。[4]高血圧は何らかの原因により、血液量が多い場合や血管が細い場合などに、動脈の内壁を押す力がより強くかかる状態です[5]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

高血圧患者の約90%に遺伝子的な要因や環境的な要因(生活習慣など)の関与がみられるといわれています。[4]

環境的な要因として以下の例が挙げられます。[4]

  • 食塩の摂り過ぎ
  • 肥満
  • アルコールの飲み過ぎ
  • ストレス
  • 運動不足
  • 喫煙

診察室血圧値:病院や診療所の診察室で測定した血圧の値
家庭血圧値:自宅で測定した血圧の値
24時間自由行動下血圧値:一定の間隔で24時間測定した血圧の値

更年期に血圧が上がる3つの原因

更年期は閉経を境にした前後5年間で一般に45歳ごろから55歳ごろまでを指します。[2]

加齢とともに高血圧患者の割合は増加傾向がみられます。女性では20代0%、30代3.4%ですが、40代11.8%、50代26.3%と増え、60代以降は50%を超える結果でした。[1]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

40代50代以降の女性が高血圧になりやすい要因として、女性ホルモンの減少、血管の老化、ストレスや不安感の影響などが考えられます。

女性ホルモンの減少

更年期になると卵巣の働きが衰え、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量が低下します。[2]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

エストロゲンには血管を拡張する作用があり、分泌量の減少によって血管の拡張が阻害されると血圧が上がる可能性が考えられます。[2]

加齢による血管の老化

加齢とともに収縮期血圧の上昇と血管の老化が関連するといわれています。血管の老化でみられる変化は次のとおりです。[6]

  • 血管の壁が厚くなり、弾力性が低下する
  • 血管内皮機能*が低下し、血管がうまく拡張しにくくなる
  • 血管細胞の老化が動脈硬化*の発症や進行に影響をおよぼす

更年期女性においても収縮期血圧の上昇、血管内皮機能の低下、動脈硬化が報告されており、血管の老化が血圧上昇に関係していると考えられます[2]

血管内皮機能*:血管内皮細胞の機能。血管拡張を調節する機能もある。
動脈硬化*:動脈が厚く硬くなる状態。

更年期特有のストレスや不安感

更年期症状の一つに抑うつ、不安、イライラなどの精神的症状があります。また、更年期の女性は仕事や家庭の役割が変化しやすい時期であり、精神的な負担が大きくなりやすい状態です[7]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

不安感や環境の変化によるストレスも血圧が上がりやすくなる要因として考えられます。[4]

高血圧を放置すると影響を受ける臓器

高血圧はほとんどの場合、自覚症状がありません。[4]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

しかし、気づかないうちに動脈硬化を引き起こし、血管の詰まりや破れが起こりやすくなります。[8]

動脈は全身に血液を運ぶ重要な役割を担う血管です。動脈硬化になると脳や心臓、目、腎臓などのさまざまな臓器に影響がおよび、病気を引き起こすリスクが高まります[8]それぞれの臓器で起こる可能性のある病気について説明します。

脳の血管が動脈硬化になり、詰まったり破れやすくなったりすると脳梗塞や脳出血になる恐れがあります。また、血流が悪くなることで認知症になる可能性もあります。[9]

心臓

心臓の血管が詰まったり破れやすくなったりして、狭心症や心筋梗塞になるリスクがあります

薬剤師ライター

河村ゆみさん

また心不全の原因にもなります。[9]

目の網膜にも血管があり、高血圧の影響で眼底出血などを引き起こす場合があります[10]

腎臓

腎臓の細い血管が動脈硬化を起こし、糸球体が硬くなる状態を腎硬化症といいます。[11]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

腎硬化症になると腎臓の機能が低下し、透析治療が必要になる場合もあります。[11]

今日からはじめよう!高血圧対策5選

40代50代から高血圧になりやすい傾向がありますが、気づいてからではすでに重篤な病気を引き起こしているかもしれません。まずは定期的に血圧を測定し、自分の血圧を知ることからはじめましょう。

また、加齢だけではなく、食塩の摂り過ぎや肥満、運動不足などの複数の要因から起こるので食事の見直しや運動習慣も大切です。血圧が高くなる前から早めに対策しましょう。

血圧を毎日測定する

まず現状の把握が大事です。血圧を毎日測定して記録しましょう。血圧は時間や環境によって変化するため、1日2回、朝と夜の測定が推奨されています[4]

継続するために、測定時間を決めアラームをかけてみてはいかがでしょうか。

薬剤師ライター

河村ゆみさん

また「朝は起きてトイレに行った後」「夜は寝る前」など、毎日のルーティンに取り込むと忘れにくくなるかもしれません。

食事内容を見直す

塩分の摂り過ぎは高血圧の原因の一つです。[4]高血圧治療ガイドライン2019では1日の塩分摂取量を次のように示しています。

高血圧患者における減塩目標を6g/日未満にすることを強く推奨する [3]

調味料やレトルト食品、惣菜などの栄養成分表に記載のある塩分量を確認すると1日に摂取している大まかな塩分量が把握できるでしょう。

またカリウムやカルシウムなどのミネラルは余分な塩分を体外に排出しやすくする働きがあります。野菜や果物、牛乳など、カリウムやカルシウムを多く含む食品を積極的に摂取しましょう[9]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

さらに、肥満は高血圧や動脈硬化になる要因ですので食べ過ぎには注意しましょう。[9]

運動習慣をつける

体重コントロールに運動は欠かせません。運動療法は収縮期血圧で2~5mmHg、拡張期血圧で1~4mmHgの低下が期待されるといわれています[12]

また、高血圧治療ガイドライン2019では次の運動が推奨されています。

運動:軽強度の有酸素運動(動的および静的筋肉負荷運動)を毎日30分,または週180分以上行う [3]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

30分ほどのウォーキングをはじめてみてはいかがでしょうか。

ストレスをためない

ストレスは高血圧の原因の一つです[4]好きなことをして楽しむ自分時間をもつなどストレスを発散できる環境を作ってみてください。

睡眠を十分にとる

睡眠不足で翌日の収縮期血圧が上昇することがわかっています[13]

薬剤師ライター

河村ゆみさん

また睡眠不足はストレスがたまりやすくなるため、血圧をさらに上げる可能性があります。

睡眠時間を十分にとるようにしましょう。

血圧を意識して健康な毎日へ

更年期による症状は更年期を過ぎると治まる場合が多いですが、高血圧はそのまま続く可能性があります[2]高血圧を放置せず、定期的に血圧を測定し対策をとりましょう。早めの対策が大切です。

生活習慣を見直し、それでも血圧が高い場合やめまい・頭痛など気になる症状がある場合は医療機関に受診しましょう。

薬剤師ライター

河村ゆみさん

高血圧対策は健康な体づくりにもつながるため、血圧が高くない方にもおすすめです。

今日から血圧を意識して健康な毎日を手に入れましょう。

引用・参照・参考

引用

[3]日本高血圧学会>出版物案内>「高血圧治療ガイドライン2019」PDF版>p.13、p.64、p.71

参照

[1]e-Stat(政府統計の総合窓口)/国民健康・栄養調査 (2019年)/高血圧症有病者の状況 – 高血圧症有病者の状況,年齢階級別,人数,割合 – 総数・男性・女性,20歳以上 

参考

[2]前田 美季, 中村 千種ら,女性における加齢および更年期の血管系に及ぼす影響,日本老年医学会雑誌,48 巻 (2011) 2 号,p.159,p.161

[4]大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学>診療>診療内容のご紹介(患者さん向け)>高血圧

[5]厚生労働省>健康局 >その他(検討会、研究会等)>審議会、研究会等>第6回標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会>資料3-3,1ページ 

[6]宮上 景子, 白土 なほ子, 下平 和久, 松岡 隆, 関沢 明彦/最近の更年期障害の管理,昭和学士会雑誌,2017年77巻4号,p367

[7]髙橋 彩子, 岡島 由佳, 飛田 真砂美, 高山 悠子, 平田 亮人, 谷 将之, 岩波 明,更年期障害と更年期に好発する精神疾患,昭和学士会雑誌,2017年,77巻,4号p.380

[8]厚生労働省>e-ヘルスネット >健康用語辞典 > 生活習慣病予防 > 動脈硬化

[9]厚生労働省>e-ヘルスネット >生活習慣病予防 > 主な生活習慣病 > 高血圧

[10]厚生労働省>健康> 標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)>第2編別紙5・別添資料フィードバック文例集等.p161

[11]古波蔵 健太郎,大屋 祐輔,高齢化社会の日本で増え続ける腎硬化症の病態と治療戦略,日本内科学会雑誌,2016年105巻5号p. 811-812

[12]Robert H et al.2013 AHA/ACC Guideline on Lifestyle Management to Reduce Cardiovascular Risk: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines Circulation 2013:129(25)

[13]筒井 末春,生活習慣病と睡眠障害,心身健康科学,2008年4巻2号,p. 71

この記事の執筆者

 薬剤師ライター:河村 ゆみ さん

薬剤師として調剤薬局に10年以上勤務。内科、小児科、耳鼻咽喉科、婦人科、精神科などを経験。私生活では2人の子どもの母親。いままでの経験を活かしWebライターとして活動。読者の悩みに寄り添い、役立つ情報をわかりやすくお届けできるよう心がけています。

X:https://x.com/yuminico_writer

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