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【リンパ浮腫の実体験】むくみの原因や症状、対処法を理学療法士が解説

「たかがむくみ」「いつか治るだろう」「女性はむくみやすいから仕方がない」など、自己判断でむくみを放置していませんか?

靴がきついと感じたり、足が重だるかったりと、むくみに悩まされた経験のある方も少なくないでしょう。その悩み、実はリンパの流れが悪くなっているサインかもしれません。むくみは運動不足や心臓、内臓の不調など、原因は多岐にわたります

今回は「リンパ」に焦点を当て、むくみの原因や症状、対処法について原発性リンパ浮腫を経験した理学療法士が解説します。むくみは日常的に起こるものですが、決して軽視はできません。

リンパ浮腫を疑った時に受診すべき診療科やむくみを悪化させないための注意点もお伝えします。

理学療法士ライター

山上ミカさん

リンパ浮腫について知り、適切な対処法を身につけましょう。

目次

むくみとは?

むくみとは次のように定義されています。

組織間隙(Intersitial space)に生理的な代償能力を超えて過剰な水分の貯留した状態[1]

わかりやすくいうと、体の細胞と細胞の間(組織間隙)にある水分(間質液)が過剰にたまってしまう状態です。

理学療法士ライター

山上ミカさん

むくみの原因は多岐にわたり、健康なむくみと病的なむくみがあります。[1][2]

健康なむくみは以下のとおりです。[1][3]

  • 運動不足
  • 水分や塩分の摂り過ぎ
  • ホルモンバランス
  • 長時間の立ち仕事やデスクワーク

病的なむくみには以下があります。[3][4]

  • 臓器の疾患(心臓・肝臓・腎臓)
  • リンパの流れの滞り

リンパ系の機能とむくみの関係

「リンパの流れ」という言葉は聞いたことがあっても「リンパ系」の役割はわからないという方も多いのではないでしょうか?体内ではリンパ液がリンパ管という管を通って流れており、リンパ液の流れが滞るとむくみが生じる場合があります

リンパ管やリンパ液の役割、流れが悪くなって起こる「リンパ管浮腫」の原因や症状について説明します。

リンパ系の構造と機能

リンパ管は血管と同様に全身に広がり、体に必要なものを運搬したり不要なものを回収したりするライフラインともいえる存在です。[5]リンパ管の中には静脈で回収しきれなかった水分や老廃物であるリンパ液が流れています

リンパ液を流す動力源には次のものがあります。[4]

  • 筋肉の収縮
  • 呼吸時の胸やお腹の動き
  • マッサージの作用

これらの外部からの刺激が大部分をしめますが、リンパ管自体の収縮の力でも流れます。[4]

理学療法士ライター

山上ミカさん

リンパ液の流れは手足の先にある細いリンパ管からはじまり、最終的には鎖骨下で静脈と合流して血液中へと戻ります。[2]

リンパ浮腫が起こる原因

リンパの流れが何らかの原因で悪くなり起こるむくみが「リンパ浮腫」です。リンパ管が詰まったり、リンパ液の流れが途絶えたりすると、絶えず作られるリンパ液が溜まりむくみが発生します。[4]

リンパ浮腫が起こる原因は原発性と続発性に分られます。[6]

  • 原発性(一次性):原因が明らかでない
  • 続発性(二次性):がん治療後の後遺症、放射線、薬剤性

患者数は原発性が5000人、続発性は上肢リンパ浮腫が5万人、下肢リンパ浮腫が7万人と推定されています。[7]

理学療法士ライター

山上ミカさん

原発性の認知度は低く、医療者である筆者も知識がなかったため、発見と対応が遅れる要因となりました。

リンパ浮腫で見られる症状

リンパ浮腫は病期によって症状が異なり、初期では次のような症状が見られます。[8]

  • 手足のむくみがあり、皮膚がつまみにくい
  • 押したらへこむ柔らかいむくみ
  • 手足の重だるさ
  • 皮膚が乾燥し硬くなる

進行すると次のような症状や合併症が見られます。[8]

  • 押してもへこまない硬いむくみ
  • 蜂窩織炎(皮膚の赤みや痛み、発熱や倦怠感などがみられる感染症)
  • 象皮症(皮膚が硬くなる)やリンパ小疱(患部にできる水疱)などの皮膚変化

とくに蜂窩織炎は入院治療が必要になる場合や、むくみが悪化する可能性もある注意すべき合併症です[8]赤みや腫れがみられたら早めに受診しましょう。[8]

理学療法士ライター

山上ミカさん

筆者の場合、最初に足の甲にむくみが見られました。進行に伴い、すね、膝、太ももとむくみが広がり、運動量が多い日は患部が熱をもつ状態まで悪化……。

半年以上続いた後、最終的には小さな発疹が出現し、毛穴や皮膚の硬さが目立つようになりました。

リンパ浮腫を疑った時の対処法と注意点5つ

むくみの柔らかさや硬さは進行度を見分ける重要なポイントです。太さに左右差があり、患部を押したらへこむ、皮膚がつまみにくいなどがあれば症状の悪化を予防するためにも早めに受診しましょう。[8]

リンパ浮腫を疑った場合に受診すべき診療科と医師の指導のもとに行うセルフケア、悪化させないための生活上の注意点5つをお伝えします。

リンパ浮腫を疑ったら受診を

まずは主治医に相談しましょう。主治医がいない場合は皮膚科血管外科形成外科で診察を受けられます。「リンパ浮腫外来」を設置している医療機関もあります。

理学療法士ライター

山上ミカさん

筆者は内科や整形外科を受診しましたが原因はわからず、最終的に総合内科を受診した際に形成外科に紹介してもらいました。

近年、リンパ浮腫に対してリンパ管静脈吻合術(リンパ管と静脈をつなぐ手術)も普及しており、筆者もこの手術を経験しました。しかし、進行性のため完治は難しく、セルフケアによるむくみの悪化予防が大切だと指導を受けています。

※手術の適応については専門医への相談をおすすめします。[8]

リンパケアの基本

リンパ浮腫はむくみを悪化させないことが一番のポイントです。セルフケアは感染を予防し、リンパ液の流れを良くするために欠かせません。筆者が医師の指導のもとに行っているセルフケアをお伝えします。

※自己判断での実施は症状が悪化する場合もあるため、専門医の指導を受けてから行いましょう。

スキンケア
泡で優しく洗い清潔に保ち、保湿クリームで皮膚を保護します。肌のバリア機能を高めて感染を予防しましょう。

リンパドレナージ
溜まったリンパ液をマッサージによってリンパ管へ誘導します。リンパ液はゆっくり流れるので優しく時間をかけて行うのが基本です。

圧迫療法
弾性のある医療用の着衣や包帯でむくみがある部分を圧迫し、リンパ液が溜まるのを予防します。リンパ管の収縮を外側からサポートしてリンパ液の流れを促します。

圧迫した状態での運動療法
圧迫療法をした状態で運動することで、筋肉の収縮を利用し、リンパ液の流れを良くします。

理学療法士ライター

山上ミカさん

運動後はリンパドレナージや高く挙げるなどのケアが必要です。

日常生活上の注意点5つ

むくみを悪化させないための日常生活における注意点をお伝えします。実際に筆者が入院した時にリンパ浮腫を専門とするリハビリテーション専門職から指導を受けた内容です。日ごろから自分の体を良く観察しましょう。

1.体重をコントロールする
皮下脂肪が増えるとリンパ液の流れが悪くなり、むくみの悪化につながるため適切な体重管理が大切です。[6]

2.締め付けの少ない衣服や下着を着用する
皮膚に衣服の締め付けの跡がないかを確認し、リンパ液の流れを妨げないようにします。

3.むくみの状態、程度を観察する
活動量とむくみの変化を観察し、悪化しない範囲で調整しましょう。過度の負担は蜂窩織炎の原因となるため、長時間の家事動作などは避け、休憩を挟みましょう

4.肩回し、腹式呼吸を意識する
肩回しは体の中心部に到達したリンパ液の流れを改善します。また腹式呼吸はリンパ管を流れるリンパ液の量の増加が期待できます。[4]

5.むくみのある部分を高く保つ
活動中の手足は心臓よりも低い位置にあり、重力の影響を大きく受けています。

理学療法士ライター

山上ミカさん

重力による負担を減らし、リンパ液の流れをサポートしましょう。[4]

気になるむくみは早めに受診しましょう

むくみをそのままにすると、正常なリンパ管まで傷つき壊れてしまいます。筆者は足部のむくみから進行し、手術前にはお尻まで範囲が広がっていました。

理学療法士ライター

山上ミカさん

悪化する前に治療につなげるために、体の異常に気づき、早めの行動をとりましょう。

本記事がむくみに悩む方の一助になることを願っています。

この記事の執筆者

理学療法士ライター:山上 ミカ さん

大学卒業後、総合病院や股関節専門クリニック、訪問リハビリに従事。幅広い疾患のリハビリに携わる。結婚、原発性リンパ浮腫の発症を機に多様な働き方を求め医療職×ライターに挑戦中。読者に分かりやすく伝え、楽しんでもらえるような執筆を心がけます。自身が発症した「原発性リンパ浮腫」の情報発信も現在準備中。

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