「出勤するのがつらい」「最近なんだか眠れない」
あなたは看護師として、このような悩みを抱えていませんか?
看護師は日々の臨機応変な対応や周囲への気配りが求められます。命に関わる仕事でミスの許されない業務が多いため、ストレスがかかりやすい環境です。
長期的なストレスを抱えながら意欲的に働き続ける看護師はバーンアウト*するケースも少なくありません。

こかじゆきのさん
日々目まぐるしく変わる環境下で、どのようにストレスと向き合えばよいのでしょうか。
本記事では、メンタルヘルスマネジメント検定2種を持つ筆者が、看護師のストレスの理由やバーンアウトについて解説します。おすすめのセルフケアも紹介していますので、ストレスと上手に向き合うための参考になれば幸いです。
看護師が抱えるストレスの理由5つ


厚生労働省の精神障害に関する事案の労災補償状況(令和5年)によると、精神障害の支給決定件数の多い職種の第2位は看護師です。[2]メンタルヘルス不調の看護師が多い状況からもストレスを抱えやすい職種だとわかります。
病院のメンタルヘルスマネジメントに取り組む筆者が考える「看護師がストレスを抱えやすい理由」5つを解説します。
1.仕事の責任が大きい
看護師業務は人の命に関わる内容が多く常に気を張っているため、ストレスを感じやすい状態です。ナースコールや急変時の対応など、適切な判断と対処が必要な場面も責任を感じる要因となります。
2.身体的な負担が大きい
患者さんの体位変換やおむつ交換、移乗介助などの業務は体に大きな負担がかかります。



こかじゆきのさん
日勤と夜勤の交代制勤務や変則的な勤務は1回の勤務時間が長くなり、疲れが溜まりやすくなります。
3.ワークライフバランスが崩れやすい
シフト勤務で日勤と夜勤を交互に行うため、生活リズムが乱れやすくなります。趣味やプライベートの時間が確保できない、家庭との両立を図りにくいなど、ワークライフバランスも崩れがちです。
4.自分の思う看護が提供できない
看護師の仕事は多重業務であり、一人ひとりの患者さんに向き合う時間が十分に取れない場合もあります。時間をかけて清拭したいと思っても、業務が重なり手短にすませないといけません。



こかじゆきのさん
自分が行いたい看護を実現できず、日々の業務の中で葛藤を抱えやすい状況にあります。
5.人間関係の構築が難しい
看護師の中には人間関係に悩み退職する人も少なくありません。病院やクリニックは人手不足や忙しさからスタッフ間のコミュニケーションが減り、良好な人間関係を築きにくい場合もあります。
看護師のバーンアウトとは


看護師の仕事は身体的な負担が重く、生活リズムも乱れやすい職業です。また、業務や人間関係における葛藤を抱えたり、責任の大きい業務を任されたりするなどストレスを抱えやすい環境にあります。



こかじゆきのさん
ストレスに気づかず放置すると、バーンアウトに至るケースもあるため注意が必要です。
看護師がバーンアウトになるまでの過程とバーンアウトにならないためのセルフケアをお伝えします。
バーンアウトになるまでの過程
周囲に気を使い、ストレスの多い環境だとバーンアウトしやすいと考えられます。次の3つの過程を経てバーンアウトに至ります。
- 周囲に気を使いすぎ、患者さんのためにと自分を犠牲にして情緒的に仕事へ尽くした結果、疲れ果ててしまいます。
- 患者さんや周囲のスタッフに思いやりのない態度をとるようになり、自分を守るために脱人格化*が起こります。
- コミュニケーションがうまく取れずに仕事の質が低下した結果、バーンアウトになります。[1]
バーンアウトにならないために
バーンアウトにならないためには十分な心身の休息が大切です。ストレス過多の状況が続くと、体からのSOSとして頭痛や胃腸の不調などの症状がみられます。[3]
体の不調があるのに無理して働き続けると、精神面にも不調が出てバーンアウトにつながるおそれがあります。



こかじゆきのさん
まずは「いつもと違う」状態に気づくことが重要です。
次に挙げる変化がみられる場合は十分に休めていない可能性があります。当てはまる変化がないかチェックしてみましょう。
- 悲しい・憂鬱(ゆううつ)な気分、沈んだ気分
- 何ごとにも興味がわかず、楽しくない
- 疲れやすく、元気がない(だるい)
- 気力、意欲、集中力の低下を自覚する(おっくう、何もする気がしない)
- 寝つきが悪くて、朝早く目が覚める
- 食欲がなくなる
- 人に会いたくなくなる
- 夕方より、朝方のほうが気分・体調が悪い
- 心配ごとが頭から離れず、考えが堂々巡りする
- 失敗や悲しみ、失望から立ち直れない
- 自分を責め、自分は価値がないと感じる
[4]
ストレスのセルフケアを3つ紹介!


日ごろのセルフケアは体と心をリラックスさせ、ストレスによる不調やバーンアウトを予防するために役立ちます。日々のセルフケアとして、休息の取り方のコツ、夜勤のときの生活のコツ、身近な人への相談のコツを紹介します。



こかじゆきのさん
どのコツも看護師として働きながら実践できる内容です。できる対策から取り入れていきましょう。
休息の取り方のコツ
あなたの日常生活に「3つのR」を取り入れるとストレスの軽減につながります。[4]
「3つのR」とは「レスト(Rest)」「リラックス(Relax)」「レクリエーション(Recreation)」です。
以下の表に示した「3つのR」の具体例と実施時のポイントを意識してみましょう。
3つのR | 具体例と実施時のポイント |
レスト(休息・睡眠) | ・仕事中にもコーヒーを飲むなど疲れる前に休息をとる ・仕事と休日のメリハリをつける(休日は趣味や散歩などで気分転換を図る) ・睡眠をしっかりとる(睡眠時間にこだわり過ぎず、睡眠の質を意識する) |
リラックス | ・好きな音楽を聴く(自分が落ち着く活動をじっくり行う) ・ストレッチする ・呼吸法を実施する(両手を重ねておなかの前にあて体の力を抜く。はじめに息を吐き、鼻から息を吸ってゆっくりと息を吐く呼吸を繰り返す) |
レクリエーション | ・趣味に時間を使う、旅行に行く(自然に仕事から距離を置き、気持ちを軽くする) ・散歩など、日光を浴びるようにする |
夜勤のときの生活のコツ



こかじゆきのさん
日中に眠気がある状態は睡眠不足です。
次の5つのコツを日常生活に取り入れると生活リズムが崩れにくくなります。
- 夜勤の時間帯は、できるだけ職場の照明を明るくする
- 夜勤シフトに入る2日前から遅く起きるようにする
- 夜勤明けの帰宅時にはサングラスをかけるなど、目に光が入らないようにする
- 寝室は遮光カーテンなどで、できるだけ暗くする
- 夜勤明け当日は帰宅してすぐの睡眠は2~3時間にとどめ、明るいうちに起きて活動的に過ごす
[4]
身近な人への相談のコツ
もしあなたが日々のストレスや疲れを感じていたら、職場の上司や同僚、家族や友達などに相談してみてはいかがでしょうか?
何気ない悩みや不調でも身近な人に伝えるだけで気持ちが楽になり、業務量の調整につながる場合もあります。もしかすると、身近な人も同じように悩みや不調を抱えているかもしれません。



こかじゆきのさん
一度、周りの人に相談してみませんか。
つらい状態が2週間以上続いている場合


体や心の不調が2週間以上続いて、つらいと感じる場合は精神的な病気の可能性もあります。[4]
職場の場合は産業医や保健師へ相談しましょう。心療内科の受診やカウンセリングを通じ、専門家と話すだけでも気持ちが楽になる場合もあります。



こかじゆきのさん
些細な変化でも「いつもと違う」状態が2週間以上続き、つらいと感じるのであれば受診しましょう。[4]
ストレスをケアして楽しい毎日を送ろう


看護師はやりがいがある分、ストレスも大きい仕事です。自分よりも他人を大切に思える人ほどストレスを感じやすくバーンアウトになりやすい傾向があります。
日々、自分のストレスに向き合い、早めに体の不調に気づいて対処しましょう。



こかじゆきのさん
ストレスと上手に付き合うためには日常生活における効果的なセルフケアの実践も大切です。
本記事があなたのストレスに気づくきっかけになれば幸いです。
引用
[4]2023年,大阪商工会議所,山本継,メンタルヘルスマネジメント(R)検定Ⅲ種試験公式テキスト第5版,p75 図表10,p85 22-27行目
参考
[1]久保 真人, 田尾 雅夫,バーンアウト――概念と症状,因果関係について――,心理学評論,1991年,34巻3 号.p412,p415-417
[3]文部科学省>教育 >国際教育>CLARINETへようこそ>海外子女教育情報>施策の概要 >在外教育施設安全対策資料【心のケア編】>第2章 心のケア 各論 Ⅰ心のケアの基本
[4]2023年,大阪商工会議所,山本継,メンタルヘルスマネジメント(R)検定Ⅲ種試験公式テキスト第5版,p76
[5]文部科学省>教育>国際教育>CLARINETへようこそ>海外子女教育情報>施策の概要>在外教育施設安全対策資料【心のケア編】> 第2章 心のケア 各論 Ⅱストレスへの対処


看護師ライター:こかじ ゆきの さん
順天堂大学卒。大学病院の内科・外科の混合病棟での看護師を経験。現在はクリニックの看護師です。メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種を保有しています。そのため、メンタルヘルス分野の記事執筆や内科・外科の混合病棟の看護師としての専門性を活かした記事執筆が得意です。読者に寄り添った記事執筆を心がけています。
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