妊娠したいのになかなか思うようにいかずモンモンとしていることはありませんか?
「サプリも健康食品もたくさんあってどれがいいかわからない」
「食事は大事とはわかっているけど、どんな栄養が必要なの?」
「食事に気を遣ってはいるけどなかなか結果が出ない」
さまざまな情報がありますが、もしかしたら根本の栄養が足りてないことが原因かもしれません。

吉田 エリさん
まずは身近な食事から始められる妊娠力アップに大事な栄養素を、妊活経験者である筆者が経験を踏まえてお伝えします。
妊活がうまくいかないのは栄養不足が原因?


妊娠しやすい体づくりにはホルモンや基礎体温の管理だけでなく栄養のバランスも大切になってきます。気づかないうちに必要な栄養素が不足してしまうと妊娠しにくくなることもあります。



吉田 エリさん
まずは適正体重やBMI、PFCバランスをしっかり理解し、食事や生活習慣を見直して妊娠に備えた健康的な体づくりを目指しましょう。
妊娠しやすい適正体重を目指そう
適正体重は、身長とBMIから導ける体重です。18〜49歳の場合だと、BMI(体格指標)値18.5〜24.9となる体重が適正体重とされています。[1]
アジア人女性を対象とした研究では、BMIの数値が理想範囲に近い18.5〜22.9で妊娠しやすかったと報告されています。[2]
自分のBMIを理想の範囲に近づけるためには、1日の摂取カロリーを調整して適正体重を目指すと良いとされています。1日に必要なカロリーは、身長、体重、活動レベル、基礎代謝量から導くことが可能です。



吉田 エリさん
座っていることが多く活動量の少ない成人女性の場合では、1日あたり1400~2000kcalが適正体重に近づくために必要なカロリーだと言われています。[3]
適正体重* | 身長(m)×身長(m)×22 |
BMI | 体重(kg)÷身長(m)×身長(m) |
PFCバランスから摂取量を考えよう
PFCとは、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の頭文字を取った言葉です。三大栄養素とも言われ、PFCバランスを整えていくことが健康につながります。
理想的なPFCのバランスは性別や年齢によって異なりますが、成人女性の場合の目安は、タンパク質13〜20%、脂質20~30%、炭水化物50〜65%です。[4]
タンパク質・脂質のカロリーは4kcal/g、脂質のカロリーは9kcal/gのため、PFCバランスとかけ合わせて1日の必要量が計算できます。



吉田 エリさん
1日に必要なカロリーを2000kcal、PFCバランスを「タンパク質:15%、脂質:25%、炭水化物:60%」としてみると、以下のように必要量が導き出せます。
- タンパク質(g) 2000kcal×15%=300kcal 300kcal÷4kcal/g=75g
- 脂質(g) 2000kcal×25%=500kcal 500kcal÷9kcal/g=55.6g
- 炭水化物(g) 2000kcal×60%=1200kcal 1200kcal÷4kcal/g=300g
PFCバランスが崩れてしまうと、目には見えない体の不調が起こりがちです。
「寝ているのになかなか疲れが取れない」「食べているのに集中力が続かない」というときは、もしかしたらPFCバランスが崩れているかもしれません。
妊活に必要な五大栄養素とは?


PFC(タンパク質・脂質・炭水化物)の三大栄養素以外にも大事な栄養素があります。
ビタミン・ミネラルを加えた五大栄養素と呼ばれる栄養素です。



吉田 エリさん
五大栄養素は、それぞれ単独で摂っても意味がありません。基本を知ったうえで、妊活に必要な食事をバランスよく摂ることが大切です。
五大栄養素についてどのような栄養素で、どのような働きをしているのか詳しく見てみましょう。
五大栄養素のおさらい
五大栄養素とは、PFC(タンパク質・脂質・炭水化物)にビタミン・ミネラルを加えたものです。
タンパク質・脂質・炭水化物はエネルギーを作る栄養素で、ビタミン・ミネラルは体の調子を整える栄養素、タンパク質・ミネラルは体の組織を作る栄養素です。
五大栄養素 | 働き |
炭水化物 | 体を動かすのに必要なエネルギー源 |
タンパク質 | 筋肉や皮膚、髪などの体の組織をつくる材料 |
脂質 | 体を動かすのに必要なエネルギー源、ホルモンの材料や保湿などに欠かせない材料 |
ビタミン | 体の機能を維持するのに必要な微量栄養素 |
ミネラル | 歯や骨などの成分になり、体の働きを調整するのに必要な微量栄養素 |
妊活に必要な栄養素の量
妊娠するために特に大事とされている栄養素は、葉酸やビタミン、タンパク質、鉄、亜鉛、マグネシウムなどがあります。



吉田 エリさん
30〜49歳の女性における妊娠に大事な栄養素について、推奨量(もしくは目安量)とどんな食材に入っているかをまとめました。
妊活中に大事な栄養素 | 目安量[1] | 推奨量[6] | 食材
葉酸* | 240μg+ 400μg | ブロッコリー、ほうれん草、小松菜、枝豆、豆苗 |
ビタミンC | 100mg | レモン、みかん、キウイ、ブロッコリー、ケール、アセロラ |
ビタミンE | 6.0mg | アーモンド、落花生、いわし、赤ピーマン、サンマ、いわし、ブルーベリー |
ビタミンA | 700μg | ほうれん草、かぼちゃ、にんじん、トマト |
タンパク質 | 50g | 赤身肉、卵、大豆食品 |
鉄 | 10.5mg | 大豆、ほうれん草、牡蠣、インゲン豆、木綿豆腐 |
亜鉛 | 8.0mg | すりごま、ヘンプシード、牡蠣、牛肉、レバー |
マグネシウム | 290mg | あおさ、豆腐、納豆、ひじき、干しエビ、 |
妊活にも栄養バランスが大切
栄養バランスとよく耳にしますが、なぜ大切なのでしょうか。ドべネックの桶の考え方を知っていますか?ドイツの農業誌「Illustrierte landwirtschaftliche Zeitung」(1903年)ではじめて提唱されたと言われている原理で「成長に必要な栄養素のうち、最も不足しているものが全体の成長を左右する」ということを図式化したものです。[7]
必要な栄養素の量を木の桶の板の高さに見立てたとき、栄養素がたくさん取れていても、1つでも欠けていると桶の高さが出ず、その一番低い板から水(栄養素)が流れ出てしまいます。



吉田 エリさん
つまり、一番足りていない栄養素の量で全体の成長が決まるため、まんべんなく栄養を摂取することが大事ということです。
妊娠しやすい体づくりのための5つのポイント


卵子の数は生まれたときに決まっており、年齢とともに減少してしまいます。そのため、卵子の質の低下をいかに防ぐかが大切です。
排卵後の卵子は、酸化ストレスにより質が低下することがわかっています。[8]酸化ストレスとは、体内で発生する活性酸素が増えて自身で処理しきれなくなっている状態です。細胞にダメージを与え、老化や病気の原因になると言われています。[9]



吉田 エリさん
まずは基本的な生活習慣を見直して、健康的で妊娠しやすい体づくりをしていきましょう。
①バランスの良い食事
妊活には栄養バランスが大切ですが、食事をする度に細かくはかるのは大変です。そこで、簡単に目安量がわかる「手ばかり栄養法」を紹介します。[10]手ばかり栄養法は、手を使って食材をはかり食事のバランスを取る方法です。
食事 | 食材 | 量(1食あたり) |
主食 | ごはん、パン、穀物類 | 両手のひら |
主菜 | 肉、魚、卵、大豆 | 片手のひら |
副菜 | 野菜、きのこ、海藻 | 生)両手のひら |
温)片手のひら | ||
果物 | 果物 | 片手のひら |
また、卵子の質にも影響する酸化ストレス(活性酸素)は、抗酸化物質を摂取することでケアできます。



吉田 エリさん
抗酸化物質の代表例であるビタミンCやビタミンE、カロテンは柑橘系の果物や色の濃い野菜に多く含まれているため、バランスを取るためにも積極的に取り入れましょう。[11]
②適度な運動
適度な有酸素運動は、血流を良くしホルモンバランスが整いやすくなりストレス軽減へつながります。リラックス出来ると自律神経が整い、基礎代謝量も上がり妊活に役立つとも言われています。[12][13]
- ウォーキング
- ヨガ
- ピラティス
- ストレッチ
ただし、過度な運動は逆に卵子を傷つけてしまうことがあるため注意しましょう。[14]



吉田 エリさん
散歩など、1日30分程度の軽い有酸素運動がおすすめです。
③十分な睡眠
睡眠時間が減るとホルモンバランスが崩れ、排卵時期がずれたり生理が来なかったりして、妊娠のタイミングを減らします。[15]
アメリカの研究では、男女とも7~8時間の睡眠をとることで妊娠率が上がるという結果が得られています。[16]妊活に大切なホルモンも寝ている時に分泌されるため、しっかり睡眠をとることが大事です。
- 体をほぐす(軽いストレッチで体を伸ばす)
- 入浴して体を温める(就寝の2時間くらい前に15~20分程度、38度前後のお湯)[13]
- パソコンやスマホなどは寝る1時間前まで(ブルーライトなどで脳が活発になり睡眠の妨げになることがあります)[13]



吉田 エリさん
上記を行うと睡眠の質が高まると言われています。できることからはじめてみましょう。
④日常のケア
妊活はストレスとの闘いでもあります。意識的にリラックスする時間を持ちましょう。
アロマの香りは心と体を落ち着かせ、気分転換にもおすすめです。自分の好きな香りでくつろぎましょう。[17]また、マッサージや冷え対策、生殖器に関係するととされるツボ(三陰交*など)を押すのもおすすめです。[18]



吉田 エリさん
そしてなにより、友人と会う、カフェに行く、推しに会う、ペットと過ごすなど好きなことをしてストレスを発散しましょう。
⑤気を付けたい行動
妊活のため避けておきたい行動もあります。ご自身の健康のためにも、できることからはじめていきましょう。
喫煙は、排卵機能の低下や卵子の質の低下、染色体異常など妊娠に影響を及ぼす可能性があります。妊娠したら胎児にも影響があるため、妊娠前から早めに禁煙しましょう。[19]
アルコールは胚の質を低下させたり、受精率や着床率に影響があるとされています。[20]
妊活中は、量を考えて飲むようにしましょう。厚生労働省は「節度のある適度な飲酒」として、1日平均準アルコールで約20g程度を適量としています。[21]アルコール20gとはビール瓶1本程度です。
また、カフェインの多量摂取は、妊娠に至るまでの期間延長と流産リスク増加に影響があるとされています。カフェインの摂取量に明確な基準はありませんが「不眠、不安、動機などを起こすこともあるので、コーヒーは薄めで1日1~2杯が目安」とされています。[22]



吉田 エリさん
ただし、お茶や紅茶、コーラ、ココア、チョコレート、栄養ドリンクなどにもカフェインが含まれているため、 コーヒー以外の飲み物にも注意しましょう。[23]
さらに、加工食品やマーガリンなどに多く含まれるトランス脂肪酸は、排卵や妊娠の障害、肥満や動脈効果のリスクとなり、妊娠成功率を下げるとも考えられています。[24]
栄養バランスの良い妊活をしよう


妊活が上手くいかないなと思う時は「バランスが大切」ということを思い出してみてください。
「3食で1日のバランスを整える」
「無理な日は頑張らない」
「無理せずサプリなどで補う」
日々の生活をちょっと意識するだけでバランスの良い行動がとれます。



吉田 エリさん
毎日の食事を意識して、楽しい妊活ライフを送りましょう。
[1]厚生労働省> 健康・医療 > 健康 > 栄養・食育対策 > 日本人の食事摂取基準(2025年版)スライド集について>日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント,p42
[3]農林水産省>消費・安全>食育の推進>実践食育ナビ>食事バランスガイド早分かり>一日に必要なエネルギー量と摂取の目安一日に必要なエネルギー量と摂取の目安
[4]厚生労働省 > 審議会・研究会等 > 健康・生活衛生局が実施する検討会等 >「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書,p145
[5]農林水産省>消費・安全>食育の推進実践食育ナビ>食事バランスガイド早分かり>栄養素と食事バランスガイドとの関係
[6]厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』eJIM厚生労働省 > 一般の方へ > 各種施術・療法 > サプリメント・ビタミン・ミネラル
[7]松永,俊朗,ドベネックの要素樽の初期史,日本土壌肥料學會,2016年,87巻2号,p. 146
[8]高橋俊文,不妊症と生物学的・社会学的に探求する–卵子凍結に潜むリスクとベネフィット–福島医学雑誌,2022,72巻,1 号,p. 1-9
[10]北田千晶,信田幸大,小澤啓子,手ばかり法による野菜摂取量推定の妥当性評価,日健教誌,2023,第31巻 第4号,p191–200
[11]厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』eJIM厚生労働省 > 一般の方へ > 各種施術・療法 > 抗酸化物質
[13]厚生労働省 > 健康・医療 > 健康 > 生活習慣病予防 > 睡眠対策 > 健康づくりのための睡眠ガイド2023,p16,p26
[15]中村孝博,シンポジウム13 「時間毒性学」~古くて新しい毒性学~ 概日リズム攪乱による雌性生殖機能の低下.(Abstract)
[17]一之瀬巳幸,他,香りがもたらす、心身機能への効果,Vol.36 Suppl.No.2 第44回日本理学療法学術大会 抄録集
[18]月経痛に対する鍼治療の効果吉元授,田口玲奈,他,月経痛に対する鍼治療の効果,全日本鍼灸学会雑誌,2009年第59巻4号,406-415 p407
[19]厚生労働省 > 健康・医療 > 健康 > たばこと健康に関する情報ページ > 喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書 p186
[21]厚生労働省>健康・医療 > 健康 > 健康日本21 > 健康日本21(アルコール)> アルコール
[22]農林水産省>消費・安全 > リスク管理(問題や事故を防ぐ組織) > 農林水産省が優先的にリスク管理を行う対象外の危害要因についての情報(有害科学物質) > カフェインの過剰摂取について
[23]農林水産省>健康・医療 > 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてのQ&A~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~


医療ライター:吉田 エリさん
大学卒業後、地域密着型の調剤薬局に勤務しメディカルモールなどを始めとした多くの診療科を経験。現在は薬剤師の資格を活かし、医療ライターとして活動開始。複数の診療科の経験から医療情報や美容、健康についてわかりやすく寄り添った執筆活動を心がけています。
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