看護師として働く中で、自分の目指す看護師像を抱くようになる方も多いでしょう。スキルアップを考える時に、認定看護師や専門看護師への道も選択肢の一つではないでしょうか。
認定看護師は、特定の分野の高度な知識と技術をもち、質の高い看護を実践できる看護師です。[1]しかし、現場の看護師からは「そもそも認定看護師の役割って何?」とあまり活動内容が知られていない実情があります。
認定看護師を目指そうと思ったときに「どうやったらなれるの?なるのは大変?」「どのくらい費用がかかるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
先輩に認定看護師がいれば質問できるかもしれませんが、なかなか声をかけて相談するのは難しいですよね。

島津 華子さん
本記事では認定看護師として活動していた筆者が、実際の活動内容や必要な費用など、リアルな現状をお伝えします。
認定看護師を目指す方の参考になれば幸いです。
認定看護師のリアルな活動内容


認定看護師の役割は「実践・指導・相談」を繰り返しながら、自分だけでなく、他のスタッフも質の高いケアができるように導くことです。[1]自ら専門性の高いケアを実践し、指導を通じて看護の質向上に貢献します。さらに、看護スタッフからケアの相談を受け、問題解決をサポートしながら高水準の看護を実践します。



島津 華子さん
認定看護師の活動内容は多岐にわたり、所属機関内での活動はもちろん、所属機関外や認定看護分野の専門的な活動も必須です。
それぞれの活動内容を紹介します。
所属機関内での活動
所属機関内ではおもに、認定看護分野*で看護スタッフへの「実践・指導・相談」を行います。所属する機関内の認定看護師会や研修会などに参加し、他分野の認定看護師と協議して連携するのも重要な役割です。
所属機関外での活動
所属機関外では、看護専門学校や看護大学などの非常勤講師として専門分野の講義の依頼を受けることがあります。



島津 華子さん
地域における専門分野の機関が集まる協議会などを開催、または参加する場合もあるかもしれません。
認定看護分野での専門活動
各分野の認定看護師会主催の認定看護師協議会や研修会などで、他機関と認定看護分野の情報を共有します。



島津 華子さん
他機関への研究協力依頼などの連携も必要です。
認定看護師になるための費用


認定看護師になるために必要な費用は、教育機関の授業料だけではありません。教育期間中は自宅を離れて生活しなければならない場合がほとんどでしょう。また、所属機関によって受けられる補助の有無や内容は異なります。



島津 華子さん
事前に確認しておきたい教育機関の授業料やその他の費用、所属機関の支援制度について詳しくお伝えします。
教育期間中にかかる費用
教育機関では、おもに以下の費用がかかります。
- 入学検定料
- 入学金
- 授業料
- 教材費
入学検定料、入学金、授業料、教材費は認定看護分野や教育機関によって異なります。
以下は「脳卒中リハビリテーション看護」と「呼吸器疾患看護」「感染管理」看護分野の費用例です。
脳卒中リハビリテーション看護 | |
入学検定料(令和6年度実績) | 3万4000円 |
授業料(令和5年度実績) | 60万円 |
出典:国立障害者リハビリテーションセンター学院、PDL1.0[2]
「呼吸器疾患看護」「感染管理」 | |
入学検定料 | 5万円 |
入学料 | 5万円 |
授業料(実習費含む) | 95万円 |
教育課程終了後には認定審査料と認定料がかかります。(2025年6月現在)[4]
- 認定審査料: 5万1700円(税込)
- 認定料:5万1700円(税込)
その他にも以下の費用がかかる場合があります。
- アパートの家賃やホテルの滞在費(自宅から通えない場合)
- 教育機関や実習先までの交通費
- 書籍代、教材費、コピー代、パソコン購入費(購入する場合)
- 食費、日用品費(課題が多く自炊が難しい場合は食費がかさみやすい)
かかる費用は所属機関によりさまざま
所属機関によって受けられる支援や補助金、奨学金の制度はさまざまなため、ある程度貯蓄しておくと安心でしょう。実習中の扱い(研修・出張・休職)や、実習中の給料・社会保険などの待遇も、所属機関によって異なります。



島津 華子さん
好待遇な機関では、出張扱いで家賃補助・月1回の帰省のための交通費・書籍代補助などの支援を受けられる場合もあるでしょう。
しかし支援のない機関では休職扱いや退職して無所属で、すべて自費で入学する方もいるのが現状です。
認定看護師として活動するための費用


認定審査に合格し、認定看護師として活動をはじめてからも、さまざまな費用がかかります。所属機関外の活動では、学会参加や発表、自己研鑽のための研修会への参加や勉強会の開催なども必須です。
学会に参加する際には、参加費や交通費、宿泊費などがかかります。発表する場合は出張費などが所属機関から支給されるケースが多いですが、ほとんどの場合は休日に自費での参加となります。
認定審査に合格した後も、5年ごとの更新審査が必要です。[1]更新審査は試験ではなく、それまでの実績時間が点数化されます。5年間のうち2〜3年間だけ頑張ればいいわけではなく、5年間を通じて研修会や勉強会に積極的に参加し、実績を積み重ねる必要があります。



島津 華子さん
更新や更新審査後の手続きにも費用は発生します。
認定看護師になるための流れと準備


認定看護師になるには、一定の実務期間や教育機関の卒業など、いくつかの条件を満たす必要があります。教育機関は分野によっても受験対策が異なるため、事前のリサーチが重要です。また、認定看護分野の知識は教育機関を卒業した後も学びの継続が欠かせません。



島津 華子さん
認定看護師になるための条件や事前に知っておきたいポイントについて確認しましょう。
認定看護師になる条件
認定看護師になるためには、以下の流れで条件を満たす必要があります。
- 日本国の看護師免許を取得する
- 通算5年以上の実務経験(うち3年以上は認定看護分野の実務経験が必要)を積む
- 認定看護師教育機関を受験して入学し、半年以上の教育を受ける
- 教育課程修了後、認定審査を受けて合格する
- 晴れて認定看護師として認定を受ける
確認しておきたい準備のポイント
筆者の経験上、専門分野の参考書や基本の書籍を隅々まで理解するのは想像以上に時間がかかります。情報収集は学会や研修会へ参加する方が効率的だと感じたため、受験の1年前から計画を立てると良いでしょう。2年前から準備できると余裕を持って学べます。
教育機関の試験は、簡単に受かるものではありません。認定看護分野の知識は経験だけでは不十分です。過去問を活用し、病態と症状の関係や、ケアを選択する際の理由など、根拠を押さえて対策しましょう。



島津 華子さん
合否に大きくはかかわりませんが、所属機関の推薦があったほうが好印象となります。
教育機関で学ぶ間に、所属機関から受けられる支援や奨学金制度の規約を確認しておきましょう。
認定看護師になってスキルアップしよう!


筆者は認定看護師として、知識と技術を他の看護師に伝える際、経験からだけでなく理由やポイントなども一緒に伝えるようにしています。根拠を持って伝えることで、アドバイスを受ける看護師に受け入れてもらいやすくなったと感じています。
認定看護師は、自分の看護に根拠や自信を持って、やりがいを形として残せる資格です。人脈も広がることで幅広い知識を得られ、日本各地の同じ志を持つ同期生との情報交換により、多角的な学びにもつながります。費用はかかりますが、やりがいを持って活動でき、費用以上の価値があると実感しています。



島津 華子さん
看護師としてスキルアップし、今よりもやりがいを持って働くために、興味がある方はぜひ認定看護師を目指してみませんか。
一つのことを極めるのはとても楽しいですよ。


看護師ライター:島津 華子さん
NICUや小児科・産婦人科病棟で22年勤務。そのうち認定看護師として10年活動し、その後訪問看護師を5年経験。現在は福祉事業に携わりながら医療ライターとして活動しています。「出来ないからとあきらめるのではなく、できる方法を模索する」をモットーに、周産期領域から小児領域を中心に執筆活動をしています。
コメント