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こどもが溶連菌感染症を繰り返すのはなぜ?大人にうつる原因や予防法も解説

「うちの子、つい最近、溶連菌感染症になったのにどうして何回も溶連菌感染症にかかるの?」
このような疑問をお持ちのママさん・パパさんはいるのではないでしょうか。

看護師ライター

齋藤そらさん

筆者のこどもは何度も繰り返す溶連菌感染症に苦しみ、筆者自身もうつった経験があります

こどもが感染したときは「大人だから大丈夫」と軽く考えず、自分の身を守りながら看病することが大切です。

本記事では、溶連菌感染症を繰り返す理由や大人にもうつる原因、予防法などについて、お伝えしていきます

現在、3人のこどもを育てている看護師の筆者が、こどもと大人の溶連菌感染症についてわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

溶連菌感染症を繰り返すのはなぜ?

こどもが溶連菌感染症に何度もかかると、通院や看病で体力的にも精神的にも疲れますよね。「なんでうちの子だけ?」という気持ちになることはないでしょうか?

溶連菌感染症を繰り返す理由がわかれば、何度も溶連菌感染症にならなくてもすむかもしれません

看護師ライター

齋藤そらさん

ここでは、溶連菌感染症を繰り返す理由について解説していきます。

種類の違う溶連菌に感染するから

溶連菌感染症の原因菌であるA群溶血性レンサ球菌(以下、溶連菌)の表面にあるMタンパクは、菌の病原性に関するemm遺伝子によってコードされた物質です。[1]emm遺伝子には118種類の型があり、日本では20種類の型がよくみられると報告されています。(2006年現在)[1]

看護師ライター

齋藤そらさん

違うemm遺伝子の型を持つ菌に感染した場合に、溶連菌感染症を再び発症する可能性があります。[2]

保菌者が感染を繰り返しているから

保菌者とは、溶連菌が喉にすみついているものの症状がみられない人のことです。保菌者がウイルス性の感染症にかかって検査を受けたときに、咽頭培養*で溶連菌が出るケースも少なくありません。

看護師ライター

齋藤そらさん

実際にはウイルス性の感染症であっても、検査で溶連菌が検出されると、繰り返し溶連菌に感染しているように見えてしまいます。[2]

また、無症状の保菌者について、以下のように言われています。

健康保菌者が15-30%あると報告されているが、健康保菌者からの感染はまれと考えられている。
引用:東京都感染症マニュアル2018[3]

看護師ライター

齋藤そらさん

症状がない健康な保菌者からほかの人へ感染する可能性は少ないと考えられるでしょう

咽頭培養*:滅菌綿棒でのどの奥を擦り、検体を採取して病原体がいるかどうかを調べる検査。

抗生物質の服用を自己中断したから

溶連菌感染症になった場合、抗生物質が処方されます。

(Brinkら,1951)によると、抗生物質を内服すると、通常は症状が軽くなるまで3~4日かかるところ、半日~1日短縮できると報告されています[4]処方された抗生物質をすべて飲み切る前に症状が落ち着くと「治った」と思い、内服を自己中断する方も少なくありません。

内服の自己中断は、合併症を引き起こす原因にもなります[4]また、自己中断により抗生物質が効かない薬剤耐性菌*の発生につながるケースもあります。[5]

看護師ライター

齋藤そらさん

処方された抗生物質は、途中でやめずに医師の指示どおりに内服しましょう。[5]

薬剤耐性菌*:特定の抗菌薬に対して抵抗力を持った細菌。抵抗力を持つことにより、その薬が効きにくくなったり、効かなくなったりする。[5]

溶連菌感染症が大人にうつる原因

溶連菌感染症が大人にうつる原因として考えられるのは、抱っこや添い寝の際に、こどもの手に付いた菌が大人の鼻や口に付着して感染するケースです

溶連菌感染症では一般的に咳や鼻水の症状がみられる確率は低いとされています。[4]しかし、近距離の会話中に飛んだ唾液の吸い込みによりうつる可能性もあります。[6]

こどもの看病疲れで免疫力が低下すると、大人が溶連菌感染症にうつるリスクも高くなるでしょう。また、外出時などに感染者との接触で知らないうちにうつるケースもあるので、注意が必要です。

看護師ライター

齋藤そらさん

大人もこどもも症状はほぼ同じですが、大人は症状が重く出たり、重症化したりする場合もあるので、早めの病院受診がおすすめです。[7]

溶連菌感染症になったときの対処法

こどもが溶連菌感染症になったら、ご自身の感染予防もしながらこどもをケアしましょう。ほかの家族に感染を広めない対策も大切です。

看護師ライター

齋藤そらさん

「大人だから大丈夫」と思わず、自分の身を守る行動が家族を感染から守ることにもつながります。

ここでは、看護師としての経験をもとに、こどもが感染したときのホームケア方法と、家庭内感染を広げないための対策を紹介します

こどもが感染したときのホームケア

こどもが感染してしまったときのホームケア方法をお伝えします。

  • 抗生物質は最後まで飲み切る
  • のどの痛みが強いときは刺激の強い食べ物は避ける
  • 消化のよい物を食べる
  • こまめに水分を補給する
  • 部屋が乾燥する場合は加湿する

登校・登園の目安は抗生物質の内服をはじめて24~48時間経ってからです[6]

看護師ライター

齋藤そらさん

症状が出る期間や程度は個人差がありますので、活気が戻り、食事が普段どおりに取れるようになったら登園・登校しましょう。

家庭内感染を広げないための対策

家庭内感染を広げないための対策は以下になります。

  • 家族全員がマスクを常に着用する
  • 看病している大人は感染者と接触したら手洗い・アルコール消毒する
  • 感染者とコップやタオルなどを共有しない
  • 家庭内のドアノブやリモコンなど共有物をこまめにアルコール消毒する
  • 生活空間や食事時間をわける
  • こまめに換気する
看護師ライター

齋藤そらさん

大人が菌を運んで感染を広げないよう、家族で協力して感染対策に取り組み、感染拡大のリスクを減らしましょう

繰り返す溶連菌感染症の予防法は5つ

溶連菌感染症を繰り返さないためには、普段の生活でできる予防法を意識することが大切です。

予防法をおこなっておけば「最近、うちの子、溶連菌感染症にならなくなったかも」と感じられるかもしれません

看護師ライター

齋藤そらさん

繰り返す溶連菌感染症の具体的な予防法は5つあります。

以下の予防法を実践して、溶連菌感染症を繰り返さないようにしましょう。

1.免疫力を上げる

免疫力が低下した状態だと、溶連菌などに感染した場合に発症しやすくなります。[6]自分やこどもの健康に関心を持ち、規則正しい生活で免疫力を上げましょう

看護師ライター

齋藤そらさん

こどもは自己管理が難しいので、大人がこどもの健康に注意して感染予防することが大切です。

2.手洗い・うがい

日々の手洗い・うがいは非常に大切です。帰宅後・食事前は必ず手洗い・うがいをおこないましょう。唾液や鼻水などがついてしまった場合は、手洗いをしてください

看護師ライター

齋藤そらさん

手洗いは石鹸やハンドソープを使って、流水でおこないましょう。[8]

3.手指のアルコール消毒

手指のアルコール消毒は、手洗いがすぐにできないときに使えて大変便利です。[6]

看護師ライター

齋藤そらさん

外出時はアルコールを持ち歩き、こまめに手指のアルコール消毒をおこなってください

4.人混みの中ではマスクを着用

普段から人混みの中ではマスクの着用がおすすめです。マスクを着けることで飛沫感染*の予防になり、溶連菌感染症だけでなく、それ以外の感染症から身を守ることにもつながります

看護師ライター

齋藤そらさん

また、咳やくしゃみが出る場合、外出時はもちろん家の中でもマスクを着用し、感染を広げないようにしましょう。[8]

飛沫感染*:咳やくしゃみをしたときに、病原体を多く含んだしぶきを吸い込み感染すること。

5.共有品は定期的に洗浄・消毒

リモコン・ドアノブ・食器・おもちゃなど手で触れる物は、普段から定期的に洗浄・消毒してください[9]

看護師ライター

齋藤そらさん

調理器具や食器類は、塩素系消毒薬で拭き取りやつけ置きし、リモコン・ドアノブ・おもちゃなどは、アルコールで拭くようにしましょう。

普段から洗浄・消毒をおこなうことで、感染予防につながります。

溶連菌感染症に負けない体作りをしよう

こどもが溶連菌感染症を繰り返さないためにも、そして大人がうつらず、家庭内で広げないためにも、早めの対策が大切です

溶連菌感染症は免疫力が低下したときにかかりやすくなります。

看護師ライター

齋藤そらさん

普段から規則正しい生活を心がけて免疫力を上げ、溶連菌感染症に負けない体作りをしましょう。

引用・参照

引用

[3]東京都保健医療局>感染症対策>都民の方へ>「東京都感染症マニュアル2018」について>(2)各論編>五類感染症(定点把握)p299 

参照

[1]生方公子.藤島清太郎.高橋考 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究 厚生労働科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)全国規模で収集した溶血性レンサ球菌の分子疫学解析 生方公子厚生労働科学研究成果データベース 平成22(2010)年度総括研究研究報告書(厚生労働科学研究成果データベース)(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2010/103111/201028045A/201028045A0002.pdf) (2025年6月8日に利用)

[2]坂田宏 溶連菌感染症を反復した児から検出されたA群溶血連鎖球菌におけるemm型別とPFGFパターン解析.感染症学雑誌.2009年83巻6号.p649-650

[4]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>薬剤耐性(AMR)対策について>微生物薬適正使用の手引き第3版p72.p74.p76

[5]政府広報オンライン>健康・医療・福祉>医療>抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が拡大!一人ひとりができることは?

[6]こども家庭庁>政策>保育>保育所における感染症対策ガイドライン 全体版(令和5年10月10日現在)p1.p6.p32.p56

[7]国立健康機器管理研究機構 感染症情報提供サイトホームページ>サーベイランス>病原微生物検出情報(IASR)>IASR速報記事>A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の50歳未満を中心とした報告数の増加について

[8]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染情報>新型コロナウイルス感染症について 

[9]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>福祉・介護>介護・高齢者福祉>介護事業所等における新型コロナウイルス感染症への対応等について>社会福祉施設等に対する「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう。」の周知について p2

この記事の執筆者

看護師ライター:齋藤そらさん

看護師歴約20年。大学病院で高度救命救急病棟や循環器内科・外科などさまざまな科を経験。3人のこどもの母親。障がい児育児を経験したことで多様な働きかたを求め、医療ライターの道へ。現在、児童発達支援・放課後等デイサービスで看護師をするかたわら、医療ライターとして活動中。読者に寄り添い、共感できる文章を心がけ執筆をしています。

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