「しばらく臨床現場から離れていたけど、また薬剤師として働きたい。でも、昔の知識を忘れていそうで不安。新しい薬やガイドラインについても勉強しないと……」
薬剤師としてまた働きたいという意欲はあっても、ブランクを経て臨床現場に出て働くのは、さまざまな不安がつきまといますよね。
しかし、薬剤師としての基本的な知識だけでも勉強しなおしておけば、心理的な不安は少し軽くなるでしょう。勉強にはインターネット情報を活用してもよいですが、書籍のほうが体系立てて学べるのでおすすめです。書籍なら実際に臨床現場に出た時に見返したり、メモを残したりもできます。
こまい ゆいさん
この記事では、新卒で4年病院を経験したあと、6年のブランクを経て調剤薬局へ転職した薬剤師の筆者が実際に行った勉強法をご紹介します。おすすめの書籍もお伝えしますので、これから転職を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
ブランクのある薬剤師向け勉強法
薬剤師として5年以上ブランクがあると、勉強へのハードルは上がってしまいますよね。
また子育て中のママや現職の引継ぎで忙しい方には、タイムパフォーマンスも大切だと思います。気軽に取り掛かれて、効率的に勉強できるポイントを解説します。
こまい ゆいさん
筆者もブランクが6年ありましたが、以下の方法で調剤薬局への転職を成功させました。
前職で使用していたノートや書籍の整理
薬剤師として働いていた時に買った書籍やまとめノートを整理しましょう。中身をじっくり見る必要はなく、軽くパラパラと見返すだけで大丈夫です。大切なのは、過去の経験を少し思い返すこと。皆さんには知識の土台があるため、一から勉強する必要はありません。
こまい ゆいさん
今ある知識をアップデートするイメージで、気楽に勉強を進めていきましょう。
薬剤師業務の基礎を復習
基本的な接遇・マナーや身だしなみの復習も大切です。患者様と同僚から信頼を得る重要な要素なので、不安点があればなくしておきましょう。「薬剤師 服装」などピンポイントに検索できるインターネットが調べやすいと思います。服薬指導や薬歴の手順は職場毎にルールが設けられている場合があるため、配属後にチェックしましょう。
次の職場で扱う薬の領域をイメージ
次の職場で扱う代表的な治療薬や疾患の治療方針は、最低限勉強しておきましょう。余裕があれば治療薬の規格や形状・刻印まで把握しておくと、鑑査で役立ちます。
こまい ゆいさん
また時期に合わせて季節性インフルエンザや花粉症の疾患にも対応できるようにしましょう。
転職先の研修制度も活用
会社規模にもよりますが、転職先に研修制度がある場合は活用しましょう。どのような研修があるかは面接などで教えてもらえます。
こまい ゆいさん
筆者が転職した調剤薬局では、eーラーニング形式の薬剤師の生涯研修を受講できました。
ブランクのある薬剤師向け勉強本の選び方
前章で「予想以上に知識が抜けていた」と焦りを感じ、自然に勉強への意欲が湧いてきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。社会人になってから書籍で勉強する場合、学生時代の教科書と違って自分で教材を探し選ぶことになります。
選ぶ基準がわからないと、時間とお金もかさんでしまいますよね。そこで、どのように本を選べばいいのかポイントを5つに絞ってご紹介します。
広く浅い知識が得られる本
何から手をつけたらよいかわからない場合は、薬剤師業務全般について広く浅く触れている書籍がおすすめです。挫折しないためにも、最初から専門的な書籍を選ぶことは避けましょう。
最近出版された本
治療薬は次々に新しいものが出てきます。新薬やガイドライン改訂の情報が反映されている書籍を選びましょう。すでにお気に入りの書籍がある場合は、最新版が出ているかチェックしましょう。
薄くて軽い本
薄くて軽い本は持ち歩きやすく、空き時間にも勉強できるのでおすすめです。内容が多い本は読破する前に挫折してしまう可能性があります。同じ内容を何度も読み、知識を定着させることを優先させましょう。
辞書的な立ち位置の本
「今日の治療薬」や「治療薬マニュアル」のような、辞書的な立ち位置の本を一冊は持っておきましょう。職場に置かれている場合もありますが、筆者は自宅に帰ってから落ち着いて復習するために個人で所持していました。
今後勤務する現場の分野に合わせた本
調剤薬局の場合、近接する医療機関の診療科に合わせた勉強は最低限しておきましょう。とくに苦手な分野は、事前の準備がおすすめです。
こまい ゆいさん
筆者の場合、病院薬剤師のころは小児科の処方を見ることがほとんどなく、不安要素の一つでした。調剤薬局へ転職した際は、最初の配属が小児科処方が多い店舗で非常に焦りました。しかし小児科の書籍を事前に読み準備したので、配属後も落ち着いて業務ができた経験があります。
ブランクのある薬剤師におすすめな勉強本7選
前章での勉強本の選び方を踏まえて、筆者が実際に調剤薬局への転職時に使った7冊をご紹介します。それぞれの特徴やおすすめポイントを解説しますので、今の自分に必要であれば手に取ってみてはいかがでしょうか。
こまい ゆいさん
筆者は7冊とも転職前から後まで活用しましたので、これから勉強本の購入を検討されている方の参考になれば幸いです。
今日の治療薬
治療薬の辞書的な立ち位置の本としておすすめの一冊です。[1]ブランク前の勉強だけではなく、薬剤師として継続して働くうえでも頼りになる存在です。筆者は臨床現場を離れた後も、2年に1度は買い換えて所持し続けています。
服薬指導のツボ 虎の巻
薬局における服薬指導の教科書的な書籍です。[2]具体的な説明例が口語で書かれているため、業務に取り入れやすいのではないでしょうか。書籍としては少し高価ですが、内容の濃い一冊だと思います。
基礎からわかる類似薬の服薬指導
類似薬の違いと使い分けについて、エビデンス付きで詳しく解説されている一冊です。[3]内容が多いので、ひとまず自分の業務に関連する領域を読むだけでもよいでしょう。鑑査と服薬指導に自信がつきますよ。
極める!小児の服薬指導
小児服薬指導を基礎から学べる書籍です。この一冊で基礎が網羅されており、小児科近くの薬局薬剤師が読むはじめの一冊にぴったりです。[4]筆者は小児科近くの薬局店舗に配属になった際、大変お世話になりました。
外来でよくみる29疾患の最新ガイドライン虎の巻
外来でよくみる疾患のガイドラインが一冊にまとまっています。[5]厚みはありますが見た目より軽量で、手に取りやすい書籍です。
謎解きで学ぶ薬学生・新人薬剤師のための処方解析入門
問題形式で処方を読み解いていく実践的な一冊です。[6]処方箋の見方が一から解説されているので、ブランクがある方の復習に向いているといえるでしょう。A5サイズで薄く携帯しやすいので、筆者は通勤時間などに読みやすく重宝しました。
薬剤師のトリアージ実践ガイド
薬剤師が在宅医療に関わるうえで、トリアージ知識の必要性も高まっています。本書では、頭痛や咳などよくある症状の軽症・重症を見分ける手順を解説しています。[7]いざという時のための知識として備えておくと安心です。
効率的な勉強法で薬剤師として復職を目指そう
ブランクがある薬剤師向けに、効率的な勉強方法とおすすめの本をご紹介しました。本記事に書かれているすべてを実践する必要はありません。自分に合いそうな勉強法、書籍を一つでも見つけていただければ幸いです。
こまい ゆいさん
少しでも自信をつけて薬剤師として復職を目指しましょう。
[1]2024年出版, 南江堂, 伊豆津宏二, 今井靖, 桑名正隆, 寺田智祐, 今日の治療薬2024
[2]2018年出版, 日経BP社, 杉山正康, 服薬指導のツボ 虎の巻第3版
[3]2022年出版, ナツメ社, 佐橋幸子, 基礎からわかる類似薬の服薬指導
[4]2018年出版, 日経BP社, 松本康弘, 極める!小児の服薬指導
[5]2022年出版, じほう, 後藤伸之, 外来でよくみる29疾患の最新ガイドライン虎の巻
[6]2020年出版, 薬ゼミ情報教育センター, 上村直樹, 根岸健一, 謎解きで学ぶ薬学生・新人薬剤師のための処方解析入門改訂第3版
[7]2020年出版, 丸善出版, 佐仲雅樹, 薬剤師のトリアージ実践ガイド第2版
薬剤師ライター: こまい ゆいさん
薬剤師。薬科大学卒業後、10年間で病院薬剤師、卸管理薬剤師、調剤薬局薬剤師を経験。結婚を機に医療ライターへと転身。「職場環境に悩みをもつ薬剤師が、一歩踏み出すための後押しをしたい」という思いで活動中。現在は自身の経験を活かし、薬剤師の転職にまつわる記事執筆を行う。
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