「こどもがさっきまで元気だったのに、急にぐったり」
「救急に行くべき?様子を見てもいい?」
そんな不安に襲われた夜は、ついスマ-トフォンで検索してしまうこともあるでしょう。
しかし、目に飛び込んでくるのは重症例や怖い情報ばかりで、どうしたらいいかを知りたくて調べたのに、逆に怖くなってしまう。そんな経験はありませんか?

みさき彩美さん
筆者自身、元小児科看護師として多くのこどもたちと関わってきました。ママとなった今、あらためてこどもの体調に不安になる気持ちを痛感しています。
ママの「なんとなく変だな」という直感やわずかな違和感は、こどもを守る最初のサインなのです。
この記事では小児科勤務経験のある筆者が、こどもが体調を崩したときの受診目安を解説します。
家でできる応急ケアや、ママ自身の感覚を信じて冷静に判断するためのヒントもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
こどもがぐったりしたらすぐ受診?


こどもがぐったりしていると、受診のタイミングに悩むことがあります。とくに夜間や休日など、すぐに受診できない時間帯は、不安も大きくなりますよね。
「ぐったり」の中には、少し休めば元気が戻るものもあれば、注意が必要なサインが隠れている場合もあります。



みさき彩美さん
まずは、どんなときに医療機関への受診を考えたらよいか、その目安をみていきましょう。
注意するべきこどものぐったりサイン
以下のような様子がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 呼びかけに反応が鈍い、目が合わない
- 呼吸が速い/肩で息をしている/胸がペコペコへこむ
- 顔色が悪く、唇が紫色っぽい
- 水分がとれない、嘔吐や下痢を繰り返している
- 泣いても涙がほとんどでない
- 尿が半日以上でていない
- 何度も嘔吐を繰り返している
(吐いたものの中に固形物がみられなくなっても2〜3回以上繰り返す) - けいれんが起こった
- 泣き声に力がなく、ぐったりして元気がない
- 便に血液が混ざっている
- お腹がパンパンに張っていて、意識がもうろうとしている
- 股の付け根や陰のう部が腫れていて、色が変わっている
- 身体のどこかに強い痛みを訴える
- 生後3ヵ月未満で、38°C以上の発熱がある
上記は緊急性が高い場合があります。ためらわずに受診しましょう。[1][2]



みさき彩美さん
どのようなタイミングで、どのような様子だったのかを記録しておくと、医療機関に伝える際にもとても役立ちます。
とくに小さなこどもは自分で症状をうまく言えません。だからこそ、ママの目が診断の助けになります。
家でできる応急ケア


こどもの体調がすぐれないけれど、すぐに受診が難しい場面もあります。
そんなときは、おうちでできる応急ケアで、こどもを落ち着かせることが大切です。
応急ケアで大切なのは、こどもの負担を減らしながら、回復を助ける基本的な対応です。
「こんなことでいいのかな」と思うときこそ、こどもの表情を見ながら、できることをひとつずつ行いましょう。ママがそばにいる安心感こそが、いちばんの手当です。



みさき彩美さん
ここでは家でもできるケアについて、解説します。
不安なときこそ安心を渡す
ぐったりしているこどもが、まず必要としているのは「安心感」です。
医学的な知識や対応の前に、優しく声をかけ、そばにいることがなによりのケアになります。こどもはママの表情や声色から多くを感じ取ります。



みさき彩美さん
ぜひ「だいじょうぶだよ、一緒にいるよ」と伝えてあげてくださいね。
熱のケア
保冷剤をタオルに包んで、首・わき・足のつけ根など太い血管の通りをやさしく冷やします。嫌がる場合は無理に冷やす必要はありません。[3]



みさき彩美さん
また処方された解熱剤がある場合は、38.5度以上の場合に服用するのもよいでしょう。[1]
水分補給
経口補水液*や薄めたスポーツドリンクが適しています。[3]
冷たすぎると飲みにくいため、常温が安心です。飲みにくいときは、いつもの水やお茶、りんごジュースなど、本人が飲みやすいものを選びましょう。[3]
食事
無理にとらせなくても構いません。食べたくないときは休ませましょう。
睡眠
眠れるようであれば、ゆっくり寝かせてあげましょう。睡眠には回復を助ける力があります。
判断に迷う症状のときの受診目安


こどもが元気そうに見えても、不安になることがありますよね。



みさき彩美さん
「病院に行くべきかな?」と悩んだときの目安として、参考にしてみてください。
- 発熱が2日以上続いている
- 熱がなくても、食欲や水分摂取が明らかに落ちている
- 寝てばかりいる/顔色が悪い
- 機嫌が悪く、長時間泣き続ける、またはぼーっとして反応が薄い
- 呼吸が浅く速い/苦しそうな様子が続いている
- 嘔吐・下痢が数回続き、おしっこが減っている
- 体のどこかに痛みを訴える/異常な腫れや発疹があとる
- 親として「いつもと違う」と強く感じる
これらのサインがあるときは、迷わず受診することをおすすめします。[1][3]
こどもはおとなに比べて生理的な予備能力が少なく、抵抗力が弱いため、症状が急に進む危険性が高いと言われています。
また、明らかな異常がなくても「気になる」「いつもと違う」と感じたら、それはすでに受診を考える十分な理由です。
医療者でなくても、毎日そばにいるからこそ気づけるサインがあります。



みさき彩美さん
不安なときは、ひとりで抱え込まずに、医療機関や相談窓口に頼ってくださいね。
深夜や休日も頼れる相談窓口


「こんなことで病院に行っていいのかな」と迷ってしまう方もいらっしゃると思います。



みさき彩美さん
これから紹介する方法もぜひ参考にしてみてください。
- #8000(こども医療電話相談)[5][6]
地域によって対応時間は異なるが、看護師や医師と電話で相談可能 - 救急お役立ちポータルサイト(総務省消防庁)[7]
急な病気やケガの際に、救急車を呼ぶべきか、受診の目安などを確認できる - Q助(総務省消防庁)[8]
スマートフォンやPCから利用できるアプリ・Webサービス
症状を選ぶと、緊急度や対応のアドバイスが表示される
小さな違和感が、大きな守る力になる


「なんとなく変かも……」という直感は、毎日わが子を見ているママにしか気づけない、大切なサインです。筆者が現場で働いていたころも、その小さな違和感に気づいたことが、病気の早期発見につながったケースを何度も見てきました。
臨床経験に匹敵するほどの、ママの観察力。そこに少しの医療知識を添えることで、受診の判断はもっと安心できるものになります。[9]



みさき彩美さん
判断に迷ったときは、この記事の受診目安をひとつの参考にしてみてください。
[1]総務省消防庁>消防の役割>消防・救急体制の充実強化>救急車の適切な利用>緊急度判定プロトコルver.1救急受診ガイド(家庭自己判断)p20,21,33,37
[2]総務省消防庁>刊行物>救急お役立ちポータルサイト>救急車利用マニュアルp5
[3]東京福祉局>子供家庭>保育サービス>認可外保育施設について>事業者の方へ(通知・事務連絡・お知らせ)>「保育所における感染症対策ガイドライン」について .p75.76,79
[4]消費者庁ホーム政策>政策一覧(消費者庁のしごと)>食品表示>特別用途食品について>経口補水液(けいこうほすいえき)について
[5]厚生労働省>ホーム>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療>小児周産期医療について>子どもの医療電話相談事業(♯8000)について
[6]厚生労働省>上手な医療のかかわり方.jp>子どもの症状は♯8000
[8]総務省消防>消防庁の役割>消防・救急体制の充実強化>救急車の敵時・適切な利用(適正利用)>全国版救急受診アプリ(愛称「Q助」)
[9]佐々木亜矢子,藤井恵,絹巻宏,他,乳幼児の小児科外来における診察場面での母親の認識と行動,大阪大学看護学雑誌,2006年12巻1号 .p31.36.37


医療ライター:みさき彩美さん
大学卒業後、大学病院やクリニックで臨床経験を積む。現在は看護師の経験を活かし、医療ライターとして活動を開始。地域医療にも携わり、クリニックの理事も務める。現場で培った視点で、専門的な情報をやさしくほどき、気持ちに寄り添う発信を心がけている。
X(Twitter):みさき彩美|医療ライター
note: https://note.com/ayami3sk
コメント