「医療情報を効率的に収集したいけど、仕事と家事・育児の両立で時間がない……」
「生成AIはウソをつくと聞いたことがあるけど、医療情報の収集に使って大丈夫?」
「無料で使えるAIって本当に役立つの?」
そう悩む子育て中の薬剤師の方も多いのではないでしょうか。
実は論文検索に特化したAIを活用すれば、生成AIのウソを回避しつつ、限られた時間で効果的に医学論文をレビューできます。しかも、「無料で」です。
青野テルさん
筆者はAIを使って効率的に論文検索を実践した結果、以前より家族と過ごす時間を取れるようになりました。
この記事では、3児のパパ薬剤師で生成AIパスポート資格を持つ筆者が、論文検索特化型AIを用いた医療情報の収集方法について解説します。
使用時の注意点もお伝えしているので、これから試してみようと思っている方の参考になりましたら幸いです。
論文検索をAIで正しくできる?
論文検索をAIで正しくできるのかと疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
一般的な生成AIにはさまざまな課題があります。しかし、論文検索に特化したAIツールを使うことで、ChatGPTなどの一般的な生成AIの課題を解決できます。
一般的なAIと論文検索特化型AIの違いを知り適切に使い分けて、効率的な情報収集と時間節約をしましょう。
一般的なAIの課題
生成AIを利用した医療情報の収集は、以下の注意点が挙げられます。[1]
情報の正確性
生成AIは質問内容を理解して回答するわけではないので、「ハルシネーション*」と呼ばれる誤った情報を生成してしまうことがあります。
最新情報の反映
生成AIは学習に使用されたデータセットまでの情報しか学習していません。そのため、新薬や最新の治療法に関する情報が反映されていない可能性があります。
出典の明示
情報源が必ずしも明記されていないため、疑義照会や処方提案にそのまま使用するのは危険です。
一般的な生成AIを医療情報の収集に活用するには、正確性、情報の新しさ、出典において不安が残ります。
論文検索特化型のAIとは
論文検索に特化したAIは一般的な生成AIの課題を解決し、より信頼性の高い情報を提供します。次の特徴により、薬剤師の業務効率化に大きく貢献するでしょう。
- 正確性:ピアレビュー(同じ分野の専門家同士によるチェック)された論文のみを対象とするため、信頼性が高いです。
- 最新性:定期的にデータベースが更新され、最新の治療ガイドラインや薬物療法の研究成果にアクセス可能です。
- 透明性:各情報の出典が明確で、必要に応じて原著論文を確認できます。
いくつかある論文検索特化型AIの中から、今回は「Consensus」について紹介します。
無料の論文検索AIツール:Consensusとは
Consensusは、AIを活用して医学論文を効率的に検索・要約するツールです。
PubMedなどの信頼性の高いデータベースから情報を取得し、ユーザーの質問に対して関連性の高い論文と要約を提示します。AI学習に使われるデータセットは毎月更新されています。
おもな特徴は以下のとおりです。
- 自然言語(日常会話で使う言葉)での質問入力が可能
- 関連論文のリストアップと要約の提供
- 論文の信頼性や影響力の評価
- 無料プランの提供(一定の使用制限あり)
青野テルさん
Consensusを使用すれば、PubMedなどのデータベースを利用した従来の論文検索に比べて大幅に時間を節約しつつ、質の高い情報が得られます。
Consensusのおすすめの使い方3選
忙しい薬剤師業務の合間を縫って、効率的に文献レビューするためのConsensus活用法をご紹介します。日々の業務で生じる疑問や、患者さんからの質問の根拠を調べる際に、Consensusは強力な味方です。膨大な医学文献を短時間で効率的に整理し、信頼性の高い情報を得られます。
青野テルさん
試してみたいと感じたら、今日の業務中に浮かんだ疑問をサクッと調べてみましょう。驚くほど簡単に情報収集ができますよ。
Yes/Noで答えられる質問で効率的に結果を集約
「スタチンは高齢者に有効か?」
といった質問に対し、Consensusは関連論文を分析します。
関連度トップ10の論文から生成した要約と結果の集約(Yes/No/Possiblyの割合)を提示します。
判断の根拠となる論文リストと各論文の1行要約も併せて表示されるため、短時間で全体像の把握が可能です。
論文の質、研究デザイン、引用数などで選別
Consensusは論文の質や影響力を評価する機能も備えています。
たとえば、以下の指標でのフィルタリングが可能です。
- 研究デザイン(RCT(ランダム化比較試験)、メタアナリシスなど)
- サンプルサイズ
- 引用数
- 掲載ジャーナル
これらの指標を用いて、より信頼性の高い論文を優先的に参照できます。
青野テルさん
時間が限られている場合はとくに質の高い論文にしぼって確認することで、効率的に情報を収集できるでしょう。
論文ごとに詳細情報を確認
各論文の詳細ページで提供されるのは、以下の情報です。
- 論文のアブストラクト(要旨)
- 主要な結論
- 研究手法の概要
- 著者情報
論文ごとの情報を確認することで、論文の全文を読む前に研究の重要性や検索目的との関連性を判断できます。
必要に応じて原著論文にアクセスすると、さらに詳細な情報が得られます。
Consensusを使ううえでの注意点
Consensusは非常に便利なツールですが、使ううえでいくつかの点で注意が必要です。
たとえば、日本語検索の精度、最新論文の反映タイミング、無料プランの利用制限などです。
青野テルさん
制限について理解しておくと、より効果的にツールを活用できるでしょう。
以下では、Consensusを使用する際の具体的な注意点について詳しく説明します。
日本語検索での精度が劣る
Consensusは基本的に英語対応のサービスです。検索窓で日本語入力できますが、検索意図にあった論文が検索されなかったり、要約・集計機能が使えなかったりする場合があります。
青野テルさん
DeepLなどの翻訳サイトで日本語を英語に変換してから、Consensusで検索するのがおすすめです。
最新の論文は反映されない場合もある
データベースの更新タイミングによっては、最新の研究結果が即時に反映されない可能性があります。
とくに最新のトピックについて調べる場合、他の情報源もあわせて確認することが重要です。
無料で使える範囲に制限がある
Consensusの無料プランでは、検索に対する回答の要約と集計結果の提示の使用回数などに制限がかかります。
頻繁に使用する場合は、有料プランへのアップグレードを検討するとよいでしょう。
無料の論文検索AIで文献レビューを効率化しよう
Consensusのような論文検索特化型AIを活用することで、限られた時間の中でも効率的に医学論文レビューができます。とくに子育てと仕事を両立する薬剤師の方々にとって、大きな助けとなるでしょう。
青野テルさん
ただし、AIはあくまでもツールであり、専門家としての判断や解釈が不可欠です。AIの特性や限界を理解したうえでの適切な活用が、より質の高い医療サービスの提供につながります。
最後に、AIツールは日々進化しています。常に新しい情報にアンテナを張り、より効率的で信頼性の高いツールを探すことも、専門家としての重要な役割の一つだと言えるでしょう。
薬剤師ライター: 青野テルさん
3児のパパ薬剤師。市立大学薬学部を卒業し、地域中核病院の循環器センター・集中治療センターに勤務。院外の薬剤師向け勉強会の講師や学会でのシンポジストを経験。AI活用にも興味あり、GUGA生成AIパスポートやGoogle AI Essentialsも取得。「読者のアクションにつながる情報発信」をモットーに活動しています。
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