昨今IT技術の急速な進歩により、どの業界においてもデジタル化が進んでいますよね。AIや機械学習などの言葉を聞く方も増えているのではないでしょうか。
とくに医療業界は人手不足が深刻であり、労働負担軽減のためのさまざまなテクノロジーが研究・開発されています。そこで注目されている職種が「データサイエンティスト」です。
実は、医療に強みをもつデータサイエンティストの需要は高くなりつつあります。医療知識を保有していることは、転職において大きな強みのひとつです。
本記事では、医療系大学を卒業しデータサイエンティストになった筆者の経験を踏まえ、データサイエンティストへの転職をおすすめする理由について紹介します。
データサイエンティストについて知ろう
データサイエンティストという言葉の知名度は上がっていますが、実際にどんな仕事をするのかはあまり知られていません。データサイエンティストがどんな社会ニーズによって誕生した職業なのかや、詳しい仕事内容について説明します。
データサイエンティストとは
データサイエンティストとは、一般社団法人データサイエンティスト協会にて以下のように定義されています。
データサイエンティスト協会では、これからの時代に求められるデータサイエンティストを以下のように定義します。
「データサイエンティストとは、データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」
引用元:一般社団法人データサイエンティスト協会[1]
わかりやすく言うと、データサイエンスとは「データ分析などから価値を見出す」こと。[2]
データエンジニアリングとは「プログラム言語などのエンジニア技術を使って、データを集めたり分析したりする」という意味です。[3]
2010年頃からデータサイエンティストというワードが話題となり世界中に認知され始めたことから、最近出てきた新しい職種といえるでしょう。
情報技術革命によって、医療・メーカー・商社・金融・サービスなど多くの業界で「デジタル化=成長戦略」として位置付けられるようになりました。[4]
そのため、企業・組織の経営戦略においてIT分野は切っても切れない重要な分野となりました。
この背景から、ビジネス課題に対し適切な意思決定・技術開発を促す役目として、データサイエンティストが誕生したのです。
データサイエンティストというとまずAI(人工知能)を思い浮かべる方も多いと思いますが、仕事内容は多岐に渡ります。
データサイエンティストはどのように専門性を発揮しているのか、具体例を踏まえて詳しく説明します。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの主な業務内容をまとめました。
企業によって業務内容が異なりますので、例としてご覧ください。
- ビジネスにおける課題抽出と優先順位付け
- KPI策定(課題に対する達成度を測る定量的な指標)のための仮説立案
- データ分析、分析結果の資料まとめ
- 適切な施策のための提言
- データ基盤環境の整理
イメージしやすい業務例でいうと、シフト制の職種に対する課題解決のための、勤務スケジューリングシステムの構築があります。
シフト制の仕事は、社員のスキルや勤務日の間隔など考慮しなければならない項目が多いので、最適なシフト作成が難しいことが知られています。
データサイエンティストは、「スケジューリングシステムを導入することのメリットは?」「なぜ導入すべきなのか?」といった問題点・課題をデータ分析から見出してまとめます。
経営層・プロジェクト責任者へ報告して、プロジェクトの方向性を決める意思決定の手助けを行うことも、データサイエンティストの重要なスキルです。
施策の方向性が決まったら、プログラミング言語を使ってスケジューリングシステム開発に着手していきます。このように、データサイエンティストの業務には多くのスキルが必要とされているのが特徴です。
医療業界で活躍するデータサイエンティスト
日本は高齢社会・労働人口減少など大きな課題に直面していることから、医療・介護分野の問題をビジネス的に解決*していくことが求められています。そのため、ビジネスチャンスとして多くの医療系企業が続々と参入しているという現状につながっています。
医療系企業がIT技術を活かしてビジネス参入をする際は、医療知見を活かし適切なニーズに応えるサービス・製品開発が必要です。
また、医療系企業の新規事業開発やビジネス戦略においては、実際に医療業界での経験者が重宝されることもしばしばあるでしょう。
データサイエンティストによる課題分析は経営戦略に携わることもあるので、医療系企業のデータサイエンティストは必然的に医療知識を勉強するようになります。
医療業界にデータサイエンティストが必要な理由について、以下詳しく解説します。
医療業界にデータサイエンティストが必要な理由2選
今まで他ジャンルと比べてビジネス参入が少なかった医療・ヘルスケア業界でしたが、競合が少なく社会的意義が高いことから、現在は多くの企業が参入しています。そのため、競合他社より良いサービスを提供できるよう、高度な知識・技術をもったデータサイエンティストが必要とされています。
医療業界にデータサイエンティストが必要な2つの理由について、詳しく知っていきましょう。
医療業界のビッグデータ整備環境の向上
データサイエンティストが活躍できるようになった理由として、テクノロジーの飛躍的向上があります。IoT化*が進んだことで大量かつ多様性に富むデータ(ビッグデータ)が蓄積できるようになり、さらに高速なデータ処理ができるようになりました。
病院や医療系企業でも、電子カルテやオンライン診療などが浸透し、医療情報が紙媒体からデジタルデータとして蓄積されています。
IoT化により、病理診断AIなど医療業界のテクノロジーが凄まじく進歩してきたことはいうまでもありません。ビッグデータの波に乗る時代となってきた今、医療という分野はテクノロジーの発展に最も注目されています。
課題解決には医療専門知識が必要
医療業界は、ビジネスの参入障壁が高いと言われています。
たとえば、医療機器の場合で考えると、「医薬品医療機器法」という法律で基準が定められており、使用用途によっては国への認証や承認が必要となります。
また、業界間の競争の厳しさやマーケティング活動における難しさは、専門領域ゆえに高いハードルが生まれています。 企業と研究機関(大学など)で共同研究活動をする場合も、一定の医療知識が必要であるため難易度は高いといえるでしょう。
たとえば、医療系テキストで自然言語処理*を行う場合、医療情報は専門用語が多いため、専門用語が解読できるモデルを作らなければなりません。
医療分野におけるビジネスの課題解決には、一定の分析の質を担保するために医療知識が必要とされる場面がたくさんあります。
【体験談】医療専門職からデータサイエンティストになるには
医療専門職からデータサイエンティストになった筆者の経験を踏まえ、転職のポイントについて説明していきます。データサイエンティストになるには高い難易度がありますが、ポイントを押さえてコツコツ取り組めば決して不可能ではありませんよ。
医療系の素養が大きなアドバンテージに
IT技術の進歩により、徐々にデータサイエンティスト職の人口が増えてきました。そのため、5年後10年後、どんなデータサイエンティストが重宝されるのかを考えることが今後の働き方につながるでしょう。
今後は「データサイエンティスト×〇〇(専門性)」というように、もう一つの専門性を武器に持つことが生存戦略になるのではないでしょうか。
たとえば、医療専門職から医療データサイエンティストになるという道は、医療業界が未経験の人と違って知識があるため、転職が優位になりますよね。
専門知識がある場合、転職の際は経験を存分にアピールしてみてください。実際、私も医療系の知識や経験を実務で活かせています。すでに武器がある状態なのは、大きな強みですよね。
知識・技術の習得が続けられるかどうかが鍵
未経験からデータサイエンティストになることは、正直簡単な道ではありません。周りは工学部出身の人がほとんどであり、目の前には統計学や情報工学などの膨大な勉強量が待ち受けています。
だからといって未経験からの転職が不可能なわけではありません。限られた時間を効率よく身につけていくことが重要です。
勉強のポイントは、データサイエンティストに関連する資格の取得です。資格は一定の知識・技術があると客観的に評価されるため、転職時のアピールポイントになるでしょう。
さらなるポイントとして、資格取得後も知識・技術をキャッチアップし続けることも必要です。テクノロジーの発展はとても早いので、「1年前の技術はもう古い」なんてことは現場でよく起こります。
現場の状況を念頭に、まずは「自分はデータサイエンス分野の勉強が苦じゃないだろうか?」と自問自答をして、続けられるかどうかを考えてみてください。
データサイエンティストになるためにオススメの資格3選
未経験からデータサイエンティストになるために「これは取っておいた方がいい!」という資格について、筆者のオススメを表にまとめました。
資格名 | 概要 |
応用情報技術者(通称:AP) | 経済産業省が認定を行うITの国家資格。合格率は資格によって20%程度かそれ以下の難関試験だが、転職時のアピールにつながる。 APの前段階として「ITパスポート」・「基本情報技術者」という資格もあるため、APを受験する前に勉強しておくのがオススメ。 |
データサイエンティスト検定 (通称:DS検定) | 数学・統計学・機械学習・プログラミングといったデータサイエンティストとしての必須知識を体系的に習得できる。 |
統計検定(2級以上) | 大学数学・統計学の知識を本格的に習得でき、実際のデータ分析において重要な知識のためオススメ。 |
筆者は非情報系学部出身なので、1年かけてITパスポート・基本情報技術者試験の勉強をし、さらに半年かけて応用情報技術者試験を勉強しました。
ご自身の立ち位置に合わせて、基礎的な資格から勉強を始めるなどの計画を考えていきましょう。
医療専門職の強みを活かしたキャリアチェンジをしよう
医療専門職からデータサイエンティストの転職において、体験談を交えたポイントをお伝えしました。データサイエンティストは社会・企業に与えるインパクトが大きいので、やりがいのある素晴らしい職種です。
キャリアの幅を広げ、専門性のある人材として活躍されることを祈っています!
ライター:維科 蘭 (いしな らん)さん
「医療×ビジネスの架け橋(LAN)になる」をモットーに、医療の変革に貢献したいという気持ちから未経験でデータサイエンティストとして転職。医療機関の経営コンサルティング・データ分析を通して、データサイエンスの知識・技術をアップデート中。未経験からのデータサイエンティストとして必要な資格情報・知識をTwitterで発信中。
ネットワークの「LAN」のように、スキルを掛け合わせ医療とITビジネスを繋ぐことができる人材を目指している。
Twitter:@ranrantech
note:https://note.com/ranrantech/
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