胃の不調といっても、早期に治療が必要なものから、未だ原因がよくわかっていないものまでさまざまです。
この記事では、検査では異常が見つからないのに、胃の不調が続いてしまう場合の対処法、日常生活で気をつけたいポイントを現役薬剤師がわかりやすく解説していきます。
まつしげさん
薬剤師である筆者の、機能性ディスペプシアの体験談も紹介するので参考にしてみてください。
毎日を健やかに過ごせるように症状と向き合い、ご自身に合った対処法を見つけていきましょう!
胃の不調3つの症状
胃の不調は、主に胃酸の分泌と胃の粘液分泌のバランスが崩れた時に起こります。症状は胃痛・みぞおちの痛みや吐き気、食欲不振など様々です。はじめに、代表的な胃の不調について解説します。
胃痛・みぞおちの痛み
胃酸の分泌バランスが崩れると、粘膜に炎症が起きたり、粘膜が削れたりして胃炎や胃潰瘍の原因になります。
まつしげさん
胃痛やみぞおちの痛みは、胃炎や胃潰瘍の代表的な症状です。また、胃炎の大きな原因のひとつにピロリ菌が関係していることも分かっています。[1]
胸やけ・酸っぱいものが上がってくる
食道と胃のつなぎめには食道括約筋があり、食べ物が通過するとき以外は逆流しないように締まっています。食道括約筋が加齢や食べ過ぎ、早食いなどにより緩んでしまうと、食べ物や胃酸が逆流してしまいます。胃酸が喉のあたりまで逆流するとみられる症状が、胸やけや酸っぱいものが上がってくる感じ、食欲不振などです。[2]
胃もたれ・早期の満腹感
引く胃の不調では、以下の症状が起きることがあります。
- 胃が重く感じる
- 胃の中に食べ物が停滞している感じがする
- 食べ過ぎたわけでもないのにすぐに胃が膨らんだ感じがする
胃炎や胃がんでも同じような症状は起きますが、検査などで異常がないのに、上記の様な症状を訴える人は少なくありません。血液検査や胃内視鏡検査などで異常が認められないのに胃の不調がつづく症状は「機能性ディスペプシア」の可能性があります。
機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアとは、内視鏡などの検査で胃炎や潰瘍の異常が認められないにも関わらず、胃の痛みや胃もたれ、少しの食事で満腹感を感じる病気です。
胃もたれや食後の不快感があると食事がうまくとれないだけでなく、精神的なストレスも大きくなってしまいます。まずは原因と適切な対処法を知っていきましょう。
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアは、胃の運動の異常と知覚過敏が大きく関わっています。ここでは、機能性ディスペプシアとなる原因を3つご紹介します。
- 胃の運動の異常:食べ物が胃に入ると胃は動き始めますが、うまく動かないと食べ物が胃に停滞し、胃もたれや満腹感の症状が起きます。
- 知覚過敏:食道や胃の粘膜の知覚過敏により、もたれや張りなどが起きます。
- ストレスや不安:胃は大変デリケートな臓器であるため、ストレスや不安で動きが悪くなる場合もあります。[3]
機能性ディスペプシアの検査・診断
機能性ディスペプシアの国際的診断基準は、以下のとおりです。
- 6ヶ月以上前から症状がある
- 血液検査やCT検査、上部消化管内視鏡検査等を行っても原因となりそうな器質的な疾患がない
- 心窩部痛*、心窩部灼熱感**、食後の胃もたれ、早期飽満感のうち1つ以上の症状が週に数回程度、3ヶ月は持続する状態[4]
機能性ディスペプシアの治療
機能性ディスペプシアの主な治療薬は、以下が挙げられます。
- 胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤やファモチジンなど)
- 胃の動きをよくする薬(アコチアミド、モサプリドなど)
- 漢方薬(六君子湯、半夏厚朴湯など)
また、ストレスや不安を取り除くために抗不安薬を用いることもあります。さらにピロリ菌が原因の場合はピロリ菌除療法を行います。
まつしげさん
症状が多様なため、複数の薬剤を用いて治療していく必要があります。[4]
日常生活で気をつけること
胃の調子が良くないと、食事が楽しくないだけでなく、不眠になったり憂鬱になったりして日常生活の質を落としてしまいますよね。
まつしげさん
「もう治らない」とあきらめることなく、少しの工夫で快適な日常生活を取り戻しましょう。
食生活
食生活はできる限り規則正しくし、リズムを崩さないようにしましょう。良く噛んで、一度に食べ過ぎない、食後は少しゆっくりするなど胃をいたわることを意識するのが大切です。
また、揚げ物や香辛料などの刺激が強い食べ物はストレスにならない程度に控えていきましょう。[4]
運動
日々仕事に追われている方、主婦、学生の方々など、誰でも日常生活を送る中でストレスを感じています。少し汗をかく程度の軽い運動はストレスを解消してくれるので、ご自身に合った気楽にできるものからはじめてみましょう。ウォーキングやジョギングなど隙間時間でできる運動もおすすめです。
まつしげさん
ただし、激しい運動は疲れてしまい、かえってストレスを感じる可能性があるので気をつけましょう。
リラックス法
リラックス法は人それぞれですが、日常生活にハーブティーやアロマを取り入れてみるのもひとつの方法です。特に機能性ディスペプシアの方は、ジャーマンカモマイルやミントをブレンドしたお茶を飲むと胃がすっきりし、リラックスもできます。
まつしげさん
就寝時には、ティッシュペーパーにラベンダー精油を1〜2滴をたらして枕元に置くと、リラックスさせる副交感神経が優位になり快眠へと導いてくれますよ。[5]
また、自律神経が乱れてしまうと機能性ディスペプシアの症状にも影響します。自律神経を整えるには、規則正しい生活を心がけ、朝はしっかり陽の光を浴びましょう。夜更かしはなるべく避けて、就寝前に簡単なストレッチやヨガをするのも効果的です。
筆者の機能性ディスペプシアの体験
筆者は、ある日突然ひどい胸やけの症状が出て、食事もとれない状況になりました。胃内視鏡検査で逆流性食道炎と診断され、胃酸を抑える薬と漢方薬が処方されました。
その後再度胃内視鏡検査で炎症は改善したものの、食べ物を食べるとすぐに胃の満腹感を感じ、なかなかすっきりしませんでした。胃内視鏡検査で異常がなくなっても改善されなかったことから機能性ディスペプシアと診断され、胃を動かす薬が処方されました。
その薬が筆者にはぴったり合って、今までの症状がうそだったかのように胃が軽くなり、ストレスも減り、食べ物も食べられるようになりました。ただ、仕事で疲れた時や、季節の変わり目には症状が悪化しやすいです。現在でも胃を動かす薬を中心に、漢方薬、時には胃酸を抑える薬を飲みながら日々を送っています。
胃の不調に合わせた治療で快適な日々を送ろう
機能性ディスペプシアは、気長に付き合っていく病気です。自分に合った対処法や治療薬が見つかれば快適に生活できるでしょう。
そのためには、まず消化器の専門外来を受診し、検査をして異常がないかの確認が大切です。異常がなければ医師と相談し、最適な治療薬を見つけていきましょう。皆さんもご自身に合った対処法や治療薬を見つけて快適な日々を過ごしてくださいね。
薬剤師ライター:まつしげけいこさん
私立薬科大学を卒業後、内資系・外資系製薬会社に勤務。現在は薬剤師として調剤薬局(内科全般・精神科・眼科)で働く傍ら、障害の息子との暮らしから人生観を日々更新しています。社会・人生経験を生かした記事を分かりやすく執筆していきます。
まつしげさんも受講、医療ライター講座の概要はこちら
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