「心不全が悪くならないように塩分は控えてください」と言われても、何からはじめたらいいのかわからないと感じていませんか?
心不全と診断されたばかりの方やご家族にとって、食生活の見直しは大きなハードルとなります。とくに濃い味付けの料理が当たり前になっている方や、一人暮らしで工夫が難しい方は、どのように減塩すれば良いか悩んでしまうのも当然です。

戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
本記事では、心臓リハビリテーション指導士が心不全の再発予防における「塩分制限の重要性」と「続けやすい工夫」をわかりやすく解説します。
病気と上手に付き合いながら、旅行や趣味を楽しみたいという方に向けて、専門家が正しい知識をお伝えします。どうぞ最後までご覧ください。
心不全について知ろう!


心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなる状態です。[1]
若年から高齢者まで発症する可能性があり、生活習慣病と密接に関わっています。[2] 心不全を繰り返すと体力が落ち、やりたいことができなくなる可能性もあるため、再発予防が重要です。[3]



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
心不全のおもな症状や生活習慣病との関係、再発予防について説明します。
正しい知識をもって「心不全」と向き合いましょう。
心不全のおもな症状
心不全では心臓の機能低下によって血液や水分が体内に滞るため、以下のような症状がみられます。
心不全の原因と生活習慣病との関係
心不全には、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が深く関与しています。生活習慣病が長期間にわたり管理されないと、心臓に過度な負担がかかり、心不全を引き起こすリスクが高まります。
偏った食生活や運動不足、喫煙、過度の飲酒など、生活習慣に乱れがある方は見直しが必要です。[1]



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
とくに水分・塩分の過剰摂取で心不全が悪化すると言われています。[5]
再発予防が病気の悪化を防ぐカギ
心不全は再発を繰り返すことで症状が悪化し、徐々に生活の質も低下していきます。再発を予防するためには、医師指導のもと、適切な治療と日常生活での自己管理が不可欠です。再発予防には、食事療法や運動療法、薬物療法、生活習慣の改善などの継続が重要です。[3]
心不全はなぜ塩分制限が必要?


病院で医師や看護師から「塩分の摂り過ぎに注意してください」と言われた経験がある方もいるのではないでしょうか。筆者も塩分の摂りすぎが心臓に負担をかけるとは思っていませんでした。
本章では、心臓と塩分の関係や塩分摂取の1日の目安について解説します。



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
普段の食事での塩分摂取量が気になる方におすすめなツールも紹介していますので、塩分と上手に付き合っていくためのヒントになれば幸いです。
塩分の摂り過ぎが心臓に与える影響とは
塩分を摂り過ぎると、体内の水分を保持しやすくし、血液量を増加させます。血管の壁にかかる圧力が高まることで血圧が上昇して心臓に負担がかかります。



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
心不全の患者さんにとって、塩分の過剰摂取は、症状悪化や再発リスクを高める要因となり、注意が必要です。
そのため、塩分制限は心不全の管理において重要なポイントになります。[6]
塩分制限の1日の目安と注意点
厚生労働省が推奨している日本人(成人)の食塩摂取量の目標値は、男性は7.5g/日未満、女性は6.5g/日未満と言われています。[7]
では、心不全になった場合はどのくらいが望ましいでしょうか。心不全の悪化や再発につながる高血圧や生活習慣病の重症化予防には6g/日未満とされています。[7]しかし、個々の病状や医師の指導によって異なる場合がありますので、必ず主治医や栄養士の指導を受けてください。



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
「自分の食生活って塩分摂り過ぎなのかな?」と、気になる方は厚生労働省の「ナトカリ手帳」を活用してみてはいかがでしょうか。
日ごろよく食べている食品に丸を付けていくだけで、点数からおおよその食塩摂取量がわかるチェックシートになっています。
以下のリンク先の資料13ページ「あなたの塩分チェックシート」をご参照ください。
ナトリウム(食塩)とカリウムを測って健康に「ナトカリ手帳(第3版)」(厚生労働省)[8]
塩分制限でも食事を楽しむためのコツ


減塩と聞くと「味気ない」「美味しくない」と感じる方も多いかもしれません。しかし、調味料の工夫や食材の選び方次第で、減塩でも美味しい食事は可能です。減塩料理でも美味しく感じる工夫を知っておくと、日々の食事がぐっと前向きになります。



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
一人暮らしの方でも簡単に取り入れられる工夫を紹介しますので、毎日の食事にお役立てください。
調味料やだしを活用した味付けの工夫
減塩には、塩や醤油の使用量を減らすことが基本です。代わりに香辛料やだしを活用させると、風味豊かな料理に仕上げられます。



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
たとえば、レモンや酢、香草、スパイスを使ったり、昆布や鰹節のだしを効かせると、減塩しながらも満足感のある味付けが可能です。[8]
総菜やコンビニ食品の選び方
忙しい日や調理が難しいときには、スーパーの総菜やコンビニ食品を利用することもあるでしょう。その際は、食品パッケージの栄養成分表示を確認し、塩分量が少ない商品を選ぶようにしましょう。また、野菜が多く含まれているものや蒸し料理、煮物など、塩分が控えめな調理法のものを選ぶと良いでしょう。[8]



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
加工食品や外食には多くの塩分が含まれている場合もあるため、食品の選択や調理法に注意が必要となります。
最近の飲食店のメニューやコンビニ、スーパーの調理済み商品の中には、ナトリウム量を表示するものが増えてきています。ナトリウムと食塩量を同じものと思っている方もいるでしょう。しかし、同一ではありません。(表1、表2参照)


出典:「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 第5版(令和7年4月)」(消費者庁)[9]をもとに作成


出典:「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 第5版(令和7年4月)」(消費者庁)[9]をもとに作成
ナトリウムからの食塩相当量の換算式は「ナトリウム量(g)×2.54=食塩相当量(g)」です。[7]



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
ナトリウム量が「mg」で表示されている場合は、「ナトリウム量(mg) × 2.54/1000 = 食塩相当量(g)」となります。
減塩レシピや宅配食の活用
最近では、減塩を意識したレシピ本やインターネット上のレシピサイトが多数あります。さまざまな本やサイトから情報を得て、日々の食事に変化をつけながら減塩を続けてみるのもおすすめです。
また、減塩食の宅配サービスを利用するのも一つの方法です。



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
宅配サービスの中には、栄養士監修の栄養バランスが考慮されたメニューもあるため、安心して利用できるでしょう。
心不全と向き合って好きなことを続けよう!


「心不全」は繰り返し発症し、命を脅かす病気です。しかし、食生活を見直すことで家族との時間や趣味、旅行など好きなことを諦めずに継続できます。本記事を参考に減塩料理を実践し、心不全の再発を予防しましょう。



戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
充実した人生を過ごすために、今こそ一歩を踏み出しましょう。


理学療法士ライター:戸羽 謙勝(とば けんしょう)さん
大分医療技術専門学校卒。総合病院にて集中治療室から訪問リハビリまで経験。少しでも世の中に正しい知識を広めたいと思い、医療ライター専門の講座を受講。現在は理学療法士として働きながら医療ライターを行う。臨床の経験を活かし、読者へ「正しく、わかりやすく、読みやすい」を主軸に執筆活動をしています。
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