日本の夏の暑さは年々厳しさを増している中、熱中症というワードを耳にする機会も増えているのではないでしょうか。夏休みにはこどもたちの外出回数や一人時間が増えるため、熱中症対策に不安を抱える親御さんも多いと思います。こどもの熱中症被害を防ぐには大人が正確な知識を持つことが大切です。
中には、昨今のこどもたちの遊び場が屋外から屋内に変化してきていることから、熱中症に対する関心が低く油断している方もいるかもしれません。しかし、熱中症は屋外だけでなく屋内でも注意が必要です。事実、熱中症入院数を発生状況別に見た場合、屋内での日常生活が4割以上を占めているといった報告があります。
薬剤師Webライター三原 リョウマさん
本記事では、熱中症の特徴やこどもが気を付けるべき理由、屋内・屋外でできる対策から発症時の対処法まで詳しく解説します。
熱中症とその症状


「熱中症とは、高温多湿な環境下で、発汗による体温調節等がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をさします。
屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、場合によっては死亡することもあります。[1]
| 重症度 | 症状 |
| Ⅰ度(すぐに対処できる軽症) | めまい、立ちくらみ、筋肉痛、大量の発汗、手足のしびれ、気分の不快感 |
| Ⅱ度(医療機関の受診が必要な中等症) | 頭痛、吐き気・嘔吐、倦怠感、虚脱感 |
| Ⅲ度(入院かつ集中治療が必要な重症) | 意識障害、けいれん、高体温、肝機能障害、腎機能障害 |
| Ⅳ度(最も危険な状態) | 深部体温40度以上、重度の意識障害[4] |
軽症であれば応急処置による自然回復が期待できますが、重症化すると医療機関の受診が必要です。場合によっては入院が必要になるため、症状の早期発見が大切になります。



三原 リョウマさん
とくに、こどもは熱中症になりやすいため、上記を参考に大人が正しい知識を身につけ健康被害を防ぎましょう。
こどもが熱中症になりやすい理由


熱中症は老若男女問わず誰でもなる可能性があります。しかし、小さなこどもは暑さに弱くとくに注意する必要があるのはご存じでしょうか。
こども自身での予防は難しいため、大人による適切な対応で防ぎやすくなります。
ここでは、こどもが熱中症にかかりやすい理由をまとめました。



三原 リョウマさん
これらをふまえて、大人がどのような注意をはらうべきか考えてみましょう。
体温調節機能の未発達
暑さを感じてから汗をかくまでの時間が大人よりも長いです。そのため体温を下げるまでに時間がかかり、身体に熱がこもると体温上昇につながります。
地面との距離が近い
こどもは地面からの距離が近く照り返しの影響を強く受けるため、大人よりも高い温度を感じやすいです。
身体の水分量が多い
こどもは身体に占める水分量が大人よりも多いため、気温の影響を受けやすいです。また、体重当たりの体表面積が広く、熱しやすく冷めやすい特徴があります。それにより身体の表面温度が気温よりも低くなると、周囲の熱を吸収してしまうこともあるため注意が必要です。
自ら予防ができない
こどもは遊びに夢中になると身体の異常に気づかないことがあります。また、身体の不調を自分から上手に伝えられず、自発的な水分補給や服装の調節も難しいです。[5]
熱中症を予防するための対策とは?


「熱中症の対策をしたいけど何をすればいいか分からない……」といった経験はないでしょうか。
こどもが自分でできることもありますが、多くの場合は大人の手助けが必要になります。
ここでは、熱中症を予防するときに大切な7つのポイントを紹介しています。



三原 リョウマさん
以下を参考に正しく行動し、こどもの熱中症リスク低減に努めましょう。
水分補給の習慣をつける
のどの渇きに関わらずこまめに水分補給する習慣をつけましょう。屋内では、屋外に比べのどの渇きを感じにくいです。本人がのどの渇きを訴える時には多量の水分を失っています。



三原 リョウマさん
とくに夏は発汗による水分排出量も多いため、水分以外に塩分補給も意識した予防が重要です。
服装を考える
下着は吸湿性・速乾性が優れた素材を、衣類は綿や麻などの通気性が良い物を選びましょう。こどもだけで着脱が容易な服であればより良いです。また、外出時は帽子を着用し、直射日光を避けましょう。
エアコンや扇風機を適切につかう
エアコンや扇風機で室温を下げましょう。しかし、涼しい環境で汗をかかない生活を続けると暑さに弱くなります。



三原 リョウマさん
適度な運動による暑さに負けない身体づくりも意識してください。
こどもの様子をよく観察する
エアコンや扇風機を使った暑さ対策や、水分補給の準備をしているからと安心してはいけません。適度にこどもの様子を気にかける習慣をつけましょう。
適度な休憩を
こどもは遊びに集中すると、水分補給を忘れやすくなります。



三原 リョウマさん
大人が定期的に休憩を促し、水分補給する時間を作りましょう。
生活習慣を適切に
食事・睡眠・運動を適度にとり、暑さに負けない身体作りをしましょう。
とくに睡眠不足は体温調節機能の低下につながるため、しっかり睡眠をとることが大切です。[2]
熱中症危険度を気にする
大人が暑さ指数や熱中症警戒アラートをチェックしましょう。これにより、激しい運動を避けたり、いつも以上に熱中症予防に励んだり、さまざまな対策ができます。[2]
熱中症が疑われたときの対処方法とは?


「こどもが熱中症かもしれないのに、正しい対処法がわからない」このような状況にならないためにも、家庭でできる簡単な対処法を知っておくことは大切です。



三原 リョウマさん
こどもの命を守るためにも、以下を参考にもしもの時に備えて準備しておきましょう。
ここでは、熱中症が疑われる場合の応急処置のポイントと、受診を判断する目安を解説します。
涼しい場所へ
涼しくて日光が当たらない部屋に運びましょう。
その後も症状の変化に備え、そばで見守ることが大切です。
身体を冷やす
まずは着ている衣類を緩めましょう。次に、保冷剤や濡れタオル、扇風機などで身体を冷やします。この時、太い血管のある首の付け根や脇の下、太ももの付け根を冷やしましょう。
水分摂取
意識があれば塩分や水分を摂取しましょう。経口補水液*やスポーツドリンクが効果的です。
医療機関を受診
応急処置後、なかなか症状が回復しない場合や水分補給が自力でできない場合は医療機関を受診してください。



三原 リョウマさん
また、重症度Ⅲを超える症状の場合は、迷わずに救急車を呼びましょう。[7]
熱中症には早めの準備と対策を


暑さも年々厳しくなるなか、熱中症による搬送者数も増えています。自らの予防が難しいこどもの健康を守るためには、大人が熱中症の知識を正しくつけることが重要です。



三原 リョウマさん
万が一の時でも素早く対応できるようにしっかりと準備しておきましょう。
こどもはとくに注意が必要なため油断せずに熱中症対策をしっかり行い、この暑さを乗り切っていきましょう。
【引用】
[1]厚生労働省>政策について >分野別の政策一覧>健康・医療>健康>熱中症関連情報>熱中症予防のための情報・資料サイト
【参考】
[2]環境省>熱中症予防サイト>普及啓発資料>熱中症環境保健マニュアル2022,p3.p14 ~18,p30~43
[3]一般社団法人 日本救急医学会一般向けホームページ>お知らせ>熱中症ガイドライン2024公表のお知らせ>熱中症ガイドライン2024,p6~7
[4]並木 淳, 山崎 元靖, 船曳 知弘, 他,GCSによる意識レベル評価法の問題点: JCSによる評価との対比,日臨救医誌(JJSEM)2007年.10巻1号p21~25
[5]国立成育医療研究センター>患者・ご家族の方へ>病気に関する情報>子どもの病気> 熱中症(熱射病)
[6]消費者庁>政策>政策一覧(消費者庁のしごと)>食品表示>特別用途食品について>経口補水液について>ご存じですか?経口補水液の知識,p1~2
[7]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>熱中症関連情報>熱中症予防のための情報・資料サイト>熱中症が疑われる人をみつけたら


薬剤師Webライター:三原 リョウマさん
東京薬科大学卒業後、調剤薬局にて外来を中心とした業務を経験。現在の働き方に疑問を感じ、医療資格を活かした多様な働き方を考え始め、医療ライターのはじめ方講座を受講。現在は薬剤師として働きながら、ライター活動も開始。
信用性の高い専門的な情報を、年代問わず誰でも読み進めやすい形にして届けることを心掛け、丁寧な執筆活動をしています。









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