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看護師が妊娠したら夜勤はどうする?リスクと制度を助産師が解説

「妊娠がわかったけど、いつ報告しよう……」「妊娠中の夜勤はどうすればいい?」など悩んでいる看護師さんも多いのではないでしょうか

助産師ライター

川村さやさん

実際に筆者も助産師として働いていた時に妊娠を経験し、いつ報告するのか、今後の働き方はどうするのかとても悩みました。

看護師の業務は重労働であり、身体への負担も大きくなってしまいます。とくに夜勤という働き方はできれば避けたいところですよね。

そこで本記事では、夜勤と妊娠の関係や、知っておきたい制度、妊娠報告の仕方と夜勤免除について体験談を交えながら解説します。自分の身体と赤ちゃんを守るために、ぜひ参考にしてみてくださいね。

目次

妊娠中の看護師が夜勤を避けたい2つの理由 

妊娠中の看護師が夜勤を避けたい理由は、母体や胎児へのリスクがあるためです。

助産師ライター

川村さやさん

妊娠中の夜勤の影響に関する2つの論文をご紹介します。

切迫流産・切迫早産のリスクがある

1つ目の論文は、デンマークで実施された妊娠中の夜勤と流産の影響を調べたものです。

前の週に2回以上夜勤をした場合、夜勤をしなかった場合と比べて、妊娠8週以降の流産のリスクが増加するとわかっています。[1]

妊娠高血圧症候群や胎児発育不全のリスクがある

2つ目の論文は、日本全国約10万人の親子を対象としたエコチル調査*の研究です。

妊娠中後期に週36時間以上の勤務で、かつ夜勤回数が月1〜5回の勤務の場合、妊娠高血圧症候群が多いことがわかっています。週46時間以上の勤務の場合は妊娠高血圧症候群のリスクが2倍になっていました。

また、妊娠初期に週46時間以上の勤務をし、夜勤回数が月1〜6回の場合、胎児発育不全のリスクが働いていない人に比べて3割多いという研究結果が出ています。[2][3]

助産師ライター

川村さやさん

妊娠中の仕事や夜勤は、妊婦の身体や赤ちゃんにとってリスクがあることがわかりますね。

*エコチル調査とは:環境省が2011年から2027年まで日本全国15地域で実施している大規模な疫学調査です。生まれた赤ちゃんが13歳になるまで、定期的に健康状態を確認し、環境要因が子どもたちの成長・発達にどのような影響を与えるのかを明らかにすることが目的です。[4][5]

妊娠中の看護師が知っておきたい法律や制度 

妊娠中の夜勤のリスクを考えると、できれば夜勤は避けたいところです。妊娠したからといって、自動的に夜勤が免除となる法律や制度はありませんが、妊婦と夜勤に関連した法律はあります。

助産師ライター

川村さやさん

妊婦と夜勤に関係した2つの法律をみてみましょう。

労働基準法

労働基準法の第66条第2項、第3項目には「妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働又は深夜業をさせることはできません」と定められています。

妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限

妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働又は深夜業をさせることはできません。
(労働基準法第66条第2項、第3項)

引用元:働く女性の心とからだの応援サイト>妊娠中の女性労働者への対応>労働基準法における母性保護規定

深夜業とは、午後10時から午前5時までの就業時間です。[6]

妊婦が希望した場合、夜勤業務をさせてはいけないと明記してありますね。

男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法の第9条には、「事業主は、女性労働者が妊娠・出産・産前産後休業の取得、妊娠中の時差通勤など男女雇用機会均等法による母性健康管理措置や深夜業免除など労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由として、解雇その他不利益取り扱いをしてはなりません」と定められています。[7]

1.男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置
(3)妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(法第9条)

事業主は、女性労働者が妊娠・出産・産前産後休業の取得、妊娠中の時差通勤など男女雇用機会均等法による母性健康管理措置や深夜業免除など労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由として、解雇その他不利益取扱いをしてはなりません。

引用元:厚生労働省>働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

妊婦が夜勤業務の免除を受けても不当な扱いをしてはいけないとされています。

看護師の妊娠報告のタイミングや伝え方

法律によって、働く妊婦に配慮した環境を整えることが企業には求められていることがわかりました。

しかし、あくまでも「妊婦が希望した場合」となるため、自分で働き方の相談をする必要があります

助産師ライター

川村さやさん

では、どのように報告するのが良いのでしょうか。

妊娠がわかった時点で早めの報告がおすすめ

「もしかしたら流産するかもしれないし、安定期に入る頃報告しようかな」「心拍が確認できてからの方がいいかな」と考える方もいるかもしれません。

一般的には、妊娠12週以降に報告をする妊婦さんが多いようです。しかし、妊娠初期の体調は人それぞれ。つわりが始まるかもしれないし、貧血なども起こしやすくなります。

とくに看護師の場合、患者さんの移動や入浴介助といった身体を使う業務や立ち仕事も多いですよね。食事介助の匂いでつわりの症状が悪化することもあります。部署によっては、レントゲンや抗がん剤といった胎児への影響のリスクが考えられる業務もあるでしょう。

助産師ライター

川村さやさん

万が一流産してしまった場合も、体調不良や処置で仕事を休む必要も出てくるかもしれません。
早めに報告することで、体調に合わせた配慮を受けられる可能性がありますよ

まずは所属部署の看護師長に伝えよう

次に、所属部署へおすすめの報告タイミングをご紹介します。

助産師ライター

川村さやさん

筆者は、日勤の業務が終わったタイミングで看護師長に報告しました。

看護師長側も落ち着いている時を見計らって、声をかけるとよいと思います。

筆者が報告したのは妊娠がわかったばかりの頃でしたが、すでにつわりの症状が出始めていました。

当時の職場では、病棟だけでなく外来業務もあり、外来の場合は自分のタイミングで休憩を取ることが難しい状況でした。妊娠報告後は外来勤務を外してもらえ、とてもありがたかったです

看護師が夜勤免除を申請する方法

実際に夜勤免除を申請するとしても、人手不足の臨床現場では自分から言い出しにくいこともあるかもしれません

助産師ライター

川村さやさん

夜勤免除を申請したい時に使える方法をご紹介します。

母性健康管理指導事項連絡カードを活用する

「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」とは、医師等の女性労働者への指示事項を適切に事業主に伝達するためのツールです。[8]

たとえば、勤務時間の短縮や作業の制限といった指導が記載されます。

「母健連絡カード」が提出された場合、事業主は記載内容に応じた適切な措置を講じなければなりません

「母健連絡カード」 は診断書に代わる正式な書類として認められています。記載は有料になりますが、診断書よりも安い場合が多いようです。したがって、まずは「母健連絡カード」の記入を、かかりつけ医に相談しましょう[9]

診断書を書いてもらう

職場の規定によっては、診断書の提出を求められることがあるかもしれません

かかりつけ医に診断書の記入をお願いすることもできますので、小さなことでも相談してみましょう。

妊娠したら無理せず早めに働き方の相談を

全妊娠の8〜15%は自然流産となり、妊娠12週までの流産の50〜60%は胎児側に理由があるといわれています。つまり、必ずしも妊婦の生活や働き方が原因ではないのです。[10]

とはいえ、万が一流産など悲しい結果になってしまった場合、「もっと安静にしていればよかった?」「この働き方をしていなければ……」など自分を責めてしまいがちです

助産師ライター

川村さやさん

実は、筆者も初めての妊娠では流産という結果になってしまいました

助産師として働いていたので、初期流産は自分のせいではないとわかっていました。それでも、しばらく落ち込んでしまった経験があります。

看護師は責任感が強い人も多く、人手不足の現場ではどうしても自分で頑張ってしまいがちです。

助産師ライター

川村さやさん

それでも自分の身体とお腹の赤ちゃんを守れるのはあなただけ。
周りの助けを借りながら、無理のない妊娠生活を送ってくださいね

引用・参考文献

[1] Luise Moelenberg Begtrup , Night work and miscarriage: a Danish nationwide ,Occupational & Environmental  Medicine,2019 May;76(5):302-308.
[2]Nobuhiro Suzumori, Effects of long working hours and shift work during pregnancy on obstetric and perinatal outcomes: A large prospective cohort study-Japan Environment and Children’s Study, Birth,2020 Mar;47(1):67-79.
[3]名古屋市立大学>大学案内・教育情報の公表新着情報>2019年10月31日:妊娠中の働き方と出産までの母子の健康状態との関連について
[4]エコチル調査>エコチル調査とは
[5]エコチル調査>エコチル調査とは>どんな調査なの?
[6]働く女性の心とからだの応援サイト>妊娠出産・母性健康管理サポート>母性健康管理に対する企業の義務>妊娠中の女性労働者への対応
[7] 厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>雇用均等>女性労働者の母性健康管理のために>働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について
[8]働く女性の心とからだの応援サイト>妊娠出産・母性健康管理サポート>母健連絡カードについて
[9]働く女性の心とからだの応援サイト>妊娠出産・母性健康管理サポート>母性健康管理に関するQ&A
[10]国立研究開発法人 国立成育医療研究センター>患者・ご家族の方へ>妊娠・出産をお考えの方>分娩・入院について>出産に際して知っておきたいこと

この記事の執筆者

助産師ライター:川村 さやさん

国立大学保健学科卒。総合病院の産科にて助産師として経験を積み、行政にて母子保健業務にも携わる。現在は、多様な働き方を求めて会社員×医療職×ライターに挑戦中。1児の母でもあり、noteではワーママのキャリアや日々の悩みについて発信しています。正しい知識をもとに、読者に寄り添った記事作成を心がけています。

note:https://note.com/mi_ni_mi_ni

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