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東洋医学で不調を解決!女性のストレスと向き合う養生法を知ろう

イライラしたり、不安を感じたりして気持ちが落ち着かない……

眠れないことや食欲がないこともある……

ひんぱんにため息が出たり、頭痛やめまいに悩まされている更年期になると、気になる体の不調が出てくる女性は多いのではないでしょうか

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

このような女性のストレスを軽くするためには、自分の体質に合わせた薬膳料理を作ったり、季節に沿った日々の養生を心がけたり、ときには漢方薬を使ってみたりすることがおすすめです。

この記事では、漢方薬局に勤める薬剤師の筆者が、東洋医学の力を借りて女性の不調を乗り越える方法を解説します。自分の体質に合った方法を見つけて、いつまでもイキイキ元気に過ごしましょう。

目次

東洋医学における、不調改善の考え方

まずは、東洋医学の基本的な考え方について解説します。東洋医学では、病気の原因を「内因・外因・不内外因体内を巡る物質を「気(き)・血(けつ)・水(すい)などの独特な考え方で表現します。東洋医学の基本に触れて、ご自身の不調について理解を深めていきましょう。

内因・外因・不内外因

東洋医学では病気の原因を内因外因不内外因の3つに分けます

内因とは、体質的な要因や精神的な原因などといった、身体の中にある病気の原因のことです。精神的な原因となる内因には、普通の感情をあらわす五志と、五志を細かく分けた七情があります。

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

七情には「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」があり、五臓*と密接に関わり合っています。感情が過度になりすぎてさまざまな症状が出てきてしまうことが不調の原因です。 

外因とは、体の外から入ってくる6つの邪気*のことで、気候などが関係します。[3]

不内外因は、内因にも外因にも該当しない病気の原因を指します。簡単に言うと生活習慣の乱れのことで、不規則な食生活や働き過ぎ、運動不足、性生活の過多などがあげられます。[3]

五臓*:「肝・心・脾・肺・腎」から成る。単なる臓器ではなく「脾:消化器系」「肺:呼吸器系」といったように体内のシステムをあらわす。

6つの邪気*:風邪(ふうじゃ)・寒邪(かんじゃ)暑邪(しょじゃ)・湿邪(しつじゃ)・燥邪(そうじゃ)火邪(かじゃ)

気・血・水

気(き)・血(けつ)・水(すい)は、体の中を循環することで生命を維持させるものです。それぞれの特徴は次のとおりです。

体内を流れている生命エネルギー。目に見えませんが、上手く循環できていないと、のぼせ・イライラ・だるさ・憂うつを引き起こします

栄養や酸素、ホルモンなどを運ぶ赤い液体のことです。上手く巡っていないと目の下のクマや全身の色素沈着、貧血の原因となります。

津液(しんえき)とも呼ばれる、身体の隅々まで潤す透明の液体です。循環できていないと、むくみや頭痛を引き起こします

気・血・水のバランスが良いと、身体は健康な状態だと言われています。[1]

五行

五行とは、地球上のあらゆるものが5つの要素(木・火・土・金・水)から成り立ち、これを元にして治療や養生が行われると言う考え方です。

五行は、五臓、感情、色、季節、味、身体の組織などさまざまのものに当てはめることができ、それぞれを関連付けることができます。

五行
ごぎょう
五臓
ごぞう
五腑
ごふ
五主
ごしゅ
五竅
ごきょう
五志
ごし
五色
ごしき
五季
ごき
五味
ごみ
小腸
肌肉土用
大腸悲憂
膀胱恐驚
五行の配当モデル[1]

上記の表にある五行の「木」を見てもらうとわかるように、五臓の「肝」や「目」「怒」などが該当します。この「木」に該当する「目」「怒」などはつながっていて互いに影響を与える関係です。

たとえば、肝がうまく働かないと、目の調子が悪くなったり、筋肉ではけいれんが起きたりしやすくなります。

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

また、春は肝の調子が悪くなりやすく、怒りっぽくなりします。このような不調を改善するためには酸味のある食品を食べることがおすすめです。

木・火・土・金・水では、五行のひとつがほかの五行を助ける「相生(そうしょう)」と、逆にはたらきを抑える「相克(そうこく)」という関係性などもあります。また相生、相克以外の働きもあり、五行はお互いに関係し合っています。[1]

五行の図

3つのポイントでみる肝とストレスの関係

東洋医学でいう「」は、ストレスや自律神経などと関係があります。肝の不調が起きやすいのは春が多いです。にイライラする「怒」(ストレス)を感じることで、自律神経が乱れやすいとも考えられています。

ここでは、ストレスによって起こる肝の不調について見ていきましょう。

気滞(きたい)

気滞(きたい)とは、体内のエネルギーである「気」が上手く循環できていない状態で、肝の影響で気滞が起きている状態を「肝気うっ血(かんきうっけつ)と呼びます。

本来、肝は身体中に気を巡らせる作用がありますが、気が滞ることでイライラしたり落ち着きがなくなったりして感情をコントロール出来なくなる場合があります。ため息が多くなることが特徴的です。

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

肝気うっ血を改善する代表的な漢方薬に、四逆散(しぎゃくさん)があります。[1]

肝血虚(かんけっきょ)

肝の「血(けつ)」が不足すると「肝血虚(かんけっきょ)」という状態になり、さまざまな不調が出る場合があります。

肝には「血(けつ)」を必要時までためておく働きがあります。また、肝は自律神経にも作用して血管の伸び縮みや血の巡りを調節し、女性の生理を整えるのも特徴的です。

ストレスによって肝の調子が悪くなると、肝の血が不足して目の不調(疲れ目、かすみ、乾き、視力が落ちる)やめまい、立ちくらみがしたり爪がもろくなったりします

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

漢方薬の四物湯(しもつとう)は、肝血虚を改善する効果が期待できます。[1]

肝の不調に関連する症状

肝のはたらきが悪くなると五臓の「脾(ひ)」にも影響し、腹痛下痢お腹の張り食欲が落ちて消化器にも不調が出る場合があります。

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

胃の働きも悪くなり、ゲップが出たり気持ちが悪くなったり、吐き気を感じたりすることもあるでしょう。

また、肝気うっ血が長引くと、爆発的な怒り激しい頭痛や、偏頭痛耳鳴り難聴なども症状としてあらわれます。[1]

ストレス不調を減らす日々の養生

ストレスは誰でもありますよね。でもそのストレスを抱え込みすぎずに、上手にコントロールしていきましょう。日々の過ごし方の工夫や食事の工夫についてもお伝えします。

無理せずにできることを試してみてくださいね。

ストレス不調を減らす過ごし方

五行では肝は「」にあたります。上に向かって枝葉を伸ばす「木」は上からストレスで抑えられることを嫌うので、ストレスを軽くする過ごし方を心掛けましょう。

たとえば、運動をしたり外の空気を吸ったり、好きな香りを生活に取り入れたりする習慣もおすすめです。バスタブにはお風呂用のアロマオイルを入れ、ゆっくりバスタイムを楽しむことも良いですね。

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

また、睡眠をしっかり取ることを心がけてください。睡眠を満足に取ることで肝の血が増え肝血虚による症状もやわらぎます

ストレス不調を減らす食養生(薬膳)

医食同源*」と言われるように、食事をうまく利用することは体調不良を予防や改善につながります。季節にあった食材をとることを心がけてください。そして、この記事ではストレス不調を減らす食材をご紹介します。

五臓の「肝」は酸味を好み、酸味は「肝」を強くします。肝の調子を整えるには酸味のある食材がおすすめです。ただし摂りすぎは逆に体調不良を招くため、ほどほどの量を食べましょう

肝のストレス不調におすすめの食材

  • 酸味のある食材:柑橘類、トマト、イチゴ、酢、梅干しなど
  • 香りのある野菜(気の流れを良くします):セロリ、春菊、シソ、セリ、ミントなど
  • 黒い食材(肝血虚を改善します):クコの実、黒ゴマ、牛乳、牡蠣、イカ、タコ、レバーなど

とくに、柑橘類の香りは気分を爽やかにしてくれるので、リフレッシュに良いでしょう。菊花茶にクコの実を入れたり、ミントティーを飲んだりすることもおすすめです。[2]

医食同源*:「病気の治療も日常の食事も源は同じ」という意味の漢方用語。

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

肝に良い食材を中心に作ってみました。

参考:Instagram:kanpotounin 春の終わりの養生ご飯
タコ、イカ、クコの実、キャベツ、三つ葉、ウド、セロリ、セリ、オレンジ(肝に働く食材)

東洋医学を味方にストレスを乗り越えましょう

養生・薬膳・漢方薬などで気・血・水のバランスが整うと、女性は美しくなってきます。肌は内臓をあらわす鏡で「髪は血の余(血が充足すると髪も良くなる)」と言う言葉もあるように、身体のバランスを良くすることは大切です。それにより、肌や髪もつややかになり気分も上がるでしょう。

イライラやうつうつした気持ちでお悩みの方は、一度東洋医学に目を向けてみてはいかがでしょうか?

東洋医学は漢方だけではありません。普段の料理に薬膳を取り入れてみたり、体を大切に扱う養生をしてみたりすることでもストレス不調がやわらぎます。ストレスをかかえこみすぎずに、腕を広げて新鮮な空気を自分の中にとりこむようなイメージで、毎日を過ごしましょう

それでも改善がみられないときは、漢方薬を試してみることをおすすめします。漢方薬は一人一人の体調に合わせたオーダーメードのお薬です。

薬剤師ライター

嶋村理恵子さん

医師や薬剤師などの専門家に体調を相談して、自分にぴったりの漢方薬を選んでもらいましょう。

参考

[1]2021年10月第15版、りょうはら書店、邸紅梅、わかる中医学入門、5ページ~13ページ、91~97ページ

[2]2005年3月30日、株式会社世界文化社、小林公成、東洋医学で食養生

[3]2014年7月20日発行、 成美堂出版、深見 公子、いちばんわかりやすい漢方の基本講座

この記事の執筆者

薬剤師ライター:Rie Shima (嶋村 理恵子)さん

昭和大学薬学部卒。昭和大学病院薬剤部勤務後、東邦薬品株式会社(薬の卸)勤務(8年​)を経て調剤薬局にて(数カ所)研鑽を積む(25年)。現在は母の介護をしながら、漢方薬局桃仁勤務。(1年)

健康とは何か、不調や病気との付き合い方や高齢者を支えるにはいかにすべきかを、発信したいと思います。それに併せて、食の大切さも発信します。

漢方薬局桃仁:https://www.tounin.jp

Instagram :witchwest.tounin

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