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妊婦はRSウイルスワクチンを打つべき?薬剤師が安全性や有効性を解説

病院などで妊婦向けに置いてある、RSウイルスワクチン接種の案内を目にしたことはありますか?

「妊婦がワクチンを打ってもいいの?」
「赤ちゃんに悪影響はないの?」

ワクチン接種の必要性や安全性について疑問があり、打つべきかを悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

RSウイルスワクチンは、2024年5月末から妊婦への接種が可能になりました[1][2]

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

妊婦が接種する場合のRSウイルスワクチンの有効性や安全性、副反応などについて、薬剤師が解説します。

適切な接種時期や費用・助成金の情報もまとめました。本記事が、RSウイルスワクチンを打つべきか判断する材料になれば幸いです。

目次

RSウイルス感染症とは?

RSウイルスは1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%の赤ちゃんが少なくとも一度は感染するといわれています。[3]何度も感染と発病を繰り返す一般的な感染症ですが、赤ちゃんが初めて感染したときには重症化に注意が必要な病気です[3]

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

とくに生後6か月以下の赤ちゃんに感染した場合、重症化して気管支炎や肺炎などを引き起こすおそれがあり、予防することが重要です。[4]

RSウイルス感染症の症状や重篤性

RSウイルスが感染してから症状が現れるまでの期間は2~8日とされ、発熱、鼻汁、咳などのいわゆるかぜ症状が数日続きます。[3]

初めて感染した赤ちゃんの約7割は軽症で数日のうちに症状がおさまりますが、約3割は咳の症状が悪化します[3]ゼーゼーとした呼吸や呼吸困難などが見られ、気管支炎や肺炎などの症状が増える場合もあり、注意が必要です。[3]中耳炎や無呼吸発作、急性脳症などの重篤な合併症もあります。[3]

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

呼吸状態や全身状態をよく観察し、苦しそうな呼吸や水分・食事がとれない場合は医療機関を受診しましょう。

RSウイルス感染症の治療や予防

現在RSウイルス感染症に対して抗ウイルス薬のような治療薬はなく、症状を抑える対症療法を行うのが一般的です。息苦しさを改善する酸素投与、水分補給のための点滴などが行われます。[3]

ウイルスが付着したものに触ったり、感染した人のくしゃみのしぶきを吸い込んだりすることで感染が広がるといわれています[5]上の兄弟からうつる場合もあるでしょう。

感染予防として、よく触る手すりやおもちゃなどのアルコール消毒を習慣的に行い、感染中は赤ちゃんとの接触を避けるなどの注意が必要です。

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

以前は夏から秋に流行がみられる感染症でしたが、2021年以降、春から初夏にかけて増え始め夏にピークがみられるようになってきました。[5]

早産、心肺系の基礎疾患、免疫不全に当てはまる赤ちゃんは感染時に重症化や死亡するリスクが高いといわれています。[6]RSウイルスに対する抗体製剤(パリビズマブ、ニルセビマブ)は、重症化リスクのある赤ちゃんにも使用可能です[6][7]RSウイルス流行前から流行期に使用することで、重症化予防の効果が期待できます。[6][7]

2025年10月現在、日本では60歳以上の高齢者と妊婦を対象としたRSウイルスワクチンがあります。[5]

抗体製剤:RSウイルスに対する抗体を直接投与する製剤

妊婦がワクチンを打つメリット

厚生労働省の資料によると、(Kobayashi Y et al,2022)により、RSウイルス感染症による入院は生後1〜2か月が最も多いとされています。[8]生まれて間もない赤ちゃんへの早期の感染対策が必要です。

RSウイルスワクチンを妊婦に接種することで、RSウイルスに対する免疫(中和抗体)を高め、胎盤を通して胎児にも抗体が移ります。[1]生まれたばかりの赤ちゃんもRSウイルスに対する免疫を持つ状態になるため、新生児期、乳児期における重症化のリスク低下が見込めます[1]

ワクチン以外にRSウイルスの重症化予防に使用されるのが抗体製剤です。

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

抗体製剤は赤ちゃんに直接抗体を投与し、ワクチンは産まれる前に母親から抗体を受け取るという違いがあります。

赤ちゃんに負担をかけず早期の重症化予防ができる点は、RSウイルスワクチンのメリットといえるでしょう。

妊婦が接種可能なRSウイルスワクチン

ワクチンにはいろいろな種類があり、妊婦が接種可能なRSウイルスワクチンは組み換えタンパク質ワクチンの一種です。[2]

ウイルス全体を使用せず、ウイルスに特有の一部のタンパク質を人工的に作っています。そのためワクチン接種による感染の心配はありません。妊婦がこのワクチンを接種すると、RSウイルスへの感染や重症化を予防する抗体が体内で作られる仕組みです。

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

妊婦が接種可能なRSウイルスワクチンの有効性と安全性について解説します。

RSウイルスワクチンの有効性

日本人を含む約7000人の妊婦を対象とした第Ⅲ相試験(最終段階の臨床試験)において、RSウイルスワクチンの有効性が検証されました。[1]第Ⅲ相試験における、重症な気管支炎や肺炎などに対するワクチン有効率は、生後3か月で81.8%、生後6か月で69.4%と報告されています[1]

ワクチン有効率:ワクチンを打たなかった場合と比べて、ワクチンを打った場合にどの程度発症が減ったかを示す割合。

RSウイルスワクチンの安全性

第Ⅲ相試験に参加した妊婦の副反応として注射部位の痛み、頭痛や筋肉痛などが報告されました。[1]大部分は軽度から中等度で、発現から2~3日で症状は改善したとされています。[1]第Ⅲ相試験において、赤ちゃんに副反応は認められていません[1]

厚生労働省の資料によると、米国での調査にて、RSウイルスワクチンと早産のリスク増加に関連性は見られないと報告されています。[9]

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

ただし、妊婦の血圧上昇や妊娠高血圧症候群と関連性がみられるとの見解もあるため、主治医とよく相談する必要があるでしょう。[9]

RSウイルスワクチン接種を受けるには

妊娠中にRSウイルスワクチンを受ける際の接種時期、費用などの注意点をお伝えします。RSウイルスワクチンは妊娠中いつでも接種できるわけではなく、接種可能な期間が決められています。費用は全額自己負担となるため、事前に確認しておきましょう。

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

それぞれ詳しく説明しますので、実際に受ける際の参考にしてください。

適切なワクチンの接種時期

RSウイルスワクチンは、妊娠24〜36週の期間に1回接種します。効果が高まる傾向の認められている妊娠28〜36週での接種がとくに推奨されています[1]胎児が抗体を得るのは、ワクチン接種から約2週間後です。[1]

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

どのタイミングに接種するかは主治医とよく相談して決めましょう。

接種費用・助成金の有無

RSウイルスワクチンは保険適用ではなく自費診療のため、病院・クリニックによって金額は異なります。また、すべての産婦人科の病院・クリニックで接種を受け付けているわけではないため、事前に確認しましょう。

全国ではありませんが妊婦向けRSウイルスワクチン接種費用の一部を助成している市町村はあるようです。

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

住んでいる市町村の公式Webサイトなどで調べるか、市役所、区役所の保健センターなどに問い合わせるとよいでしょう。

正しく理解し、妊婦がワクチンを打つべきか判断しよう

RSウイルス感染症は一般的な病気であり、新生児期にかかると重症化する危険性があります。ワクチンと聞くと不安な気持ちになる方もいるかもしれませんが、ワクチンの接種により重症化の予防を期待できるメリットがあります。デメリットやメリットを正しく理解し、ワクチンを打つか判断しましょう。

ワクチンによってアレルギー症状が出た経験がある方など、接種できない場合もあります。

薬剤師ライター

鳥羽 ゆりこさん

ワクチン接種時に発熱などの症状がある場合も、医師の判断で接種できないこともあるでしょう。

接種時期や体調を確認し、疑問点を主治医とよく相談したうえでの検討が大切です。

参照

[1]アブリスボ筋注用添付文書 2025年9月改訂(第3版)

[2]国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト>サーベイランス>病原微生物検出情報(IASR)>RSウイルスワクチンの開発状況, 2025年

[3]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>RSウイルス感染症

[4]国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト>感染症を探す>疾患名から探す>英字>RSウイルス感染症

[5]厚生労働省>政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>RSウイルス感染症に関するQ&A

[6]国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト>感染症を探す>疾患名から探す>英字>RSウイルス感染症>RSウイルス感染症とは

[7]ベイフォータス筋注50mgシリンジ/ベイフォータス筋注100mgシリンジ 添付文書 2025年8月改訂(第2版)

[8]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会)>第24回予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 資料>03_資料1 RSウイルス感染症の予防について(PDF)P9

[9]厚生労働省>政策について>審議会・研究会等>厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会)>第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 資料>03【資料1】小児におけるRSウイルス感染症の予防について P11-12

この記事の執筆者

薬剤師ライター:鳥羽 ゆりこさん

同志社女子大学卒業。調剤薬局やリハビリテーション病院で8年ほど薬剤師として勤務し多数の診療科を経験。これまで培った知識と情報収集能力を活かし、2025年からwebライターとして活動中。医療情報を正しくわかりやすく共感する内容で伝えることを心がけて執筆活動しています。

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