サプリメントや薬で副作用が起きたニュースを目にすると、薬を使用することが怖くなってしまいますよね。
実際には、薬を使用したからといって必ず副作用が起きるわけではありません。でも万が一、入院して治療しなくてはならないほどの副作用が起きた場合には救済制度があることを知っていますか?
アメリカの思想家、ラルフ・ワルド・エマーソンの「知識は恐怖にとっての解毒剤である」[1]という言葉があります。
人は知らないものに対して恐怖や不安をいだきがちです。薬の知識を身につけて薬を正しく使用することで、副作用への不安が減っていくかもしれません。
玉尾 由美さん
この記事では、薬剤師である筆者が、薬の副作用や正しい使い方について解説します。正しい知識を持って、自分と身近な人のより健やかな生活に役立てましょう。
薬の副作用ってどうして起きるの?
薬の副作用がどうして起きるのかと疑問に思ったことはありませんか?そもそも薬の副作用とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
ひとつの薬が持つ作用はひとつだけとは限りません。
「花粉症の薬をのんだら眠気を感じた」
「痛み止めをのんだら胃の調子が悪くなった」
といったように、薬を使ったときに目的以外の効果が出た経験もあるでしょう。[2]
薬の効果のうち、病気を治したり症状を軽くしたりして、治療の目的に沿う効果を主作用と呼びます。一方で、薬を使って出てしまう体にとって都合の悪い症状が副作用です。
副作用は必ず起こるわけではありません。しかし、誰にでも起こる可能性もあります。
とくに、アレルギーのある人や薬を複数使用している人、妊娠・授乳中の人などは副作用が起こりやすいので体調を観察しましょう。薬の効果の現れ方に個人差があるように、副作用の症状や程度もひとそれぞれです。[2]
副作用を減らす正しい薬の使い方
薬は使用方法(用法)と使用量(用量)を守って使用することで、副作用を減らせるかもしれません。
薬の用法・用量や保管方法などは、安全をたもちながら効果を発揮できるように決められています。
自分が処方された薬をほかの人にあげたり、ほかの人の薬をもらったりすることはやめましょう。あまった薬を別の機会に自己判断で使用することも正しい使用方法とはいえません。[3]
ドラッグストアなどで購入した薬には説明書が添付されています。薬を使用する前に説明書をよく読んで、正しい使用方法を確認しましょう。薬の外箱には使用期限が記載されているので、しっかり確認して使用期限を過ぎていたら使用を避けてください。[3]
玉尾 由美さん
薬によっては保管方法に注意が必要なものがあります。保管方法を指示された場合は、きちんと守りましょう。また、こどもが誤って使用してしまわないよう、自宅での保管場所にも注意するとよいでしょう[3]。
もしも薬の副作用が起きたら
薬の副作用が起きてしまっても、勝手に薬の使用をやめたり、量を減らしたりすることは控えましょう。まずは医師や薬剤師に相談し、指示をあおいでください。
玉尾 由美さん
副作用かもと思ったときに自分でできることを知っておくと、不安を減らせるかもしれません。もしものときに何をしたらよいか、詳しく見ていきましょう。
症状を観察して記録しよう
薬を使用した後に気になる症状があらわれたときは、次の内容を記録しておきましょう。
- 使用した薬の名前
- 使用した量や回数
- どんな症状がいつから出たか
このように記録を残しておくと、医師や薬剤師に相談するとき役に立ちます。メモを取ることが難しい場合には、動画や写真を撮るのもひとつの方法でしょう。お薬手帳にメモする方法もおすすめです。
医師・薬剤師に相談しよう
薬の使用後に体調がおかしいと感じたときは、すぐに医師や薬剤師に相談しましょう。
病院で処方された薬であれば、病院や薬局の名称と電話番号は薬袋(やくたい)*、お薬手帳、薬剤情報提供書*などに書いてあります。受診が難しい場合には電話をしてみましょう。
ドラッグストアなどで購入した薬については、購入した店舗に薬剤師がいれば相談するとよいでしょう。薬を購入した店舗や日付を確認できるため、購入した際のレシートを保管しておくとよいですね。
相談できる医師や薬剤師がいないときは、薬の外箱や箱の中に入っている説明書をよく読んでみましょう。国内で製造・販売されている薬の場合は、製薬会社のお客様相談室や医薬品副作用被害救済制度のお問い合わせ先が記載されています。一度問い合わせてみてもよいでしょう。
医薬品副作用被害救済制度について
重い副作用が起きてしまったときのために、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による医薬品副作用被害救済制度があります。条件を満たせば、副作用被害の程度や状況に応じて給付金を受け取れる制度です。
玉尾 由美さん
ここからは、医薬品副作用被害救済制度による給付の種類と請求方法、給付の対象になるもの、ならないものについて具体的に確認していきましょう。
給付の種類と請求方法は?
医薬品副作用被害救済制度による給付の種類には①医療費②医療手当③障害年金④障害児養育年金⑤遺族年金⑥遺族一時金⑦葬祭料の7種類があります。[4]
請求内容によっては手続きできる期限が決められています。必要書類や請求期限は給付の種類によって異なるため、PMDAの救済制度相談窓口から問い合わせると安心でしょう。[5]
PMDAへの請求手続きに費用はかかりません。ただし、請求手続きに必要な診断書・証明書を病院、薬局、ドラッグストアなどで発行してもらう際には費用が発生することがあります。
どんなときに給付の対象となる?
医薬品副作用被害救済制度で給付を受けられるのは、薬を正しく使用していたにもかかわらず、重い副作用が起きてしまった場合です。以下のような健康被害を受けた方は、医薬品副作用被害救済制度の対象となる可能性があります。[4][6]
- 入院による治療が必要になったとき
- 自力で生活できないほどの障害が残ったとき(障害等級第一級または第二級)
- 亡くなってしまったとき
医薬品副作用被害救済制度の対象となるのは、病院や薬局で受け取る処方薬だけではありません。ドラッグストアなどで購入した要指導医薬品と第1類〜第3類の一般用医薬品も含まれます。
給付の対象とならないことはあるの?
抗がん剤や免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)のなかには、医薬品であっても医薬品副作用被害救済制度の対象外となるものがあります。殺虫剤や殺菌消毒剤など人体に直接使用しないもの、賦形剤(ふけいざい)*のように体へ作用しないものなどは対象となりません。[7]
玉尾 由美さん
薬の本来の目的や、定められた用法・用量、使用上の注意にしたがっていない場合は医薬品副作用被害救済制度の対象と認められないことがあります。[8]
インターネットなどで個人的に海外の医薬品を購入した場合には、医薬品副作用被害救済制度の対象とはなりません。海外の医薬品は日本国内では有効性や品質、安全性が保証されていないため注意しましょう。[9]
また、医薬部外品、化粧品、サプリメントなどは医薬品ではないため医薬品副作用被害救済制度の対象ではありません。
薬は正しい知識で正しく使おう
薬を多めに使用しても治療効果が増すとはかぎりません。正しい用量でない場合、かえって副作用を起こしやすくなるかもしれません。ただし、副作用をおそれて薬を少なめに使用したために十分な治療効果が得られなければ本末転倒です。
玉尾 由美さん
副作用をむやみにおそれず、正しい知識をもって薬を正しく使用することを心がけてみませんか。薬の適切な使用が、自分自身はもちろん、大切な家族の健康と生活を守ることにつながるのではないでしょうか。
[2]政府広報オンライン> トップページ> 健康・医療・福祉> 医療> 薬の副作用かな?と思ったら すぐに医師にご相談を!
[3]政府広報オンライン> トップページ> 健康・医療・福祉> 健康> 知っておきたい>薬のリスクと、正しい使い方
[4]PMDA> ホーム> 健康被害救済業務> 医薬品副作用被害救済制度に関する業務> 医療費等請求手続き> 給付の種類と給付額
[5]PMDA> ホーム> 健康被害救済業務> 医薬品副作用被害救済制度に関する業務> 医療費等請求手続き> 請求に必要な書類
[6]医薬品・医療機器等安全性情報No.396|令和4年(2022年)11月|厚生労働省医薬・生活衛生局|医薬品副作用被害救済制度の概要と制度への協力のお願いについて|PDFファイル p3-13
[7]PMDA> ホーム> 健康被害救済業務> 医薬品副作用被害救済制度に関する業務> Q&A> Q6 対象除外医薬品等とされている医薬品とはどのようなものですか。
[8]PMDA>ホーム> 健康被害救済業務> 医薬品副作用被害救済制度に関する業務> 医療費等請求手続き> 給付対象> 2.給付の対象とならない場合
[9]厚生労働省> ホーム > 政策について> 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 医薬品・医療機器 > 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
薬剤師ライター: 玉尾 由美さん
岡山大学薬学部卒業。同大学院修士課程修了後、製薬会社で研究員として勤務。アメリカ生活を交えながら子育てに励んだのち、調剤薬局でパート薬剤師として働きはじめました。美術館に行くことと本を読むことが気晴らしです。多様な背景を活かして、みなさまの健康とよりよい生活に役立つ情報をお届けしたいと思っています。
X(Twitter):https://x.com/tamao070524
note:https://note.com/tamao202407
コメント