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子供にステロイドを塗ってもいい?使用ポイントや疑問点を現役薬剤師が徹底解説

まだまだ小さな子供にステロイドの塗り薬が処方され、「副作用が怖くて使うのが不安だな」と感じていませんか

結論からお伝えすると、ステロイドの塗り薬は正しく使えば副作用が起こることはめったにありません

薬剤師ライター

小森ふみさん

この記事では、皮膚科・小児科領域を専門にしている調剤薬局勤務歴4年の薬剤師の筆者が、ステロイドの塗り薬について作用や副作用、正しい塗り方を徹底解説していきます。

「ステロイド」という単語への漠然とした不安を解消し、適切な使用方法を知っていきましょう。ステロイドを子供に使うのが怖い、初めての使用に不安を感じている親御さんは必見です。

目次

ステロイドとは?

ステロイドとは、体の中の副腎という部位で作られているホルモンの一種です。このホルモンを塗り薬や、飲み薬、注射、吸入などさまざまな形に応用し、疾患の治療に使用しています。[1]

ステロイド外用薬の作用

ステロイドの外用薬(塗り薬)は強い抗炎症作用*と免疫抑制作用*を持ち、皮膚の炎症やアレルギーのような過剰な免疫反応を抑えていきます

ステロイド外用薬が使用できる主な症状は次のとおりです。

  • 湿疹
  • 皮膚炎
  • 皮膚のかゆみ
  • 虫刺され
  • 乾癬
  • 火傷
  • 皮膚エリテマトーデス

上記症状はごく一部です。他にも多くの種類の皮膚疾患や症状に使用できます

*抗炎症作用:体の炎症(皮膚に起こる場合、腫れや赤み、痛み)を抑える作用

*免疫抑制作用:体で過剰に起こる免疫反応を抑える作用

ステロイド外用薬の副作用

ステロイドの副作用は、全身性副作用*と局所的副作用*に分けられます

ステロイドは副作用が強いというイメージを持つ方は多いですが、外用薬での副作用は皮膚に起きる局所的副作用が多く、全身性の副作用が出ることはほとんどありません。また、正しく使っていれば、局所的副作用が起こることも少なく、万が一副作用が起きても、多くの場合は適切な処置で改善できます。とくに、子供の場合は局所的副作用の発現リスクはさらに低いと言われています。

*全身性副作用:ステロイドが体内に吸収され全身に現れる副作用

*局所的副作用:ステロイドを塗った部位にのみ現れる副作用

ステロイドの代表的な局所的副作用は以下の通りです。[2]

  • 毛包炎​​:毛穴に炎症が起きる
  • ざ瘡:ニキビができる
  • 白癬:水虫によるかゆみや炎症が起きる
  • 皮膚萎縮:皮膚が薄くなる
  • 紫斑:皮膚の下で内出血する
  • 毛細血管拡張:血管が目立って見える
  • 多毛:薬を塗った部分に毛が生える
  • 酒さ様皮膚炎:ステロイドを顔に塗った場合に頬が赤くなったり乾燥したりする
薬剤師ライター

小森ふみさん

顔が丸くなる、糖尿病になる、などよくイメージされてしまう副作用は全身性の副作用で、ステロイド外用薬の使用ではめったに起きません

ステロイド外用薬では、上記のような局所的副作用がほとんどです。

ステロイド外用薬の強さ

ステロイド外用薬は強さによりランク分けされています

I群 Strongest(最も強い)
Ⅱ群 Very Strong
Ⅲ群 Strong
Ⅳ群 Medium
Ⅴ群 Weak(最も弱い)

ステロイド外用薬を治療で使うときは、皮膚の症状に合わせ強さや使用する期間を決めていきます

薬剤師ライター

小森ふみさん

自己判断での使用や中止はせず、必ず医師、薬剤師の指示に従って使いましょう。[3]

子供にステロイドは使える?

ステロイド外用薬の乳幼児、小児からの使用は、アトピー性皮膚炎ガイドラインの中でも推奨されています。実際に、多くの医師が子供の皮膚トラブルにステロイド外用薬を使用しています。[3]

子供と大人の肌の違い

子供の皮膚は大人と比べ角質層が薄く、バリア機能が低いです。そのため、ささいな刺激でも簡単に傷つきやすく、感染症や肌あれなどを起こしやすい特徴があります。

子供の肌は、皮膚トラブルの有無に関わらず、日頃からこまめな保湿や適切なスキンケアをしてあげることが重要です。

子供にステロイドを使うときのポイント

ステロイド外用薬を使用するときは、使用箇所に応じた適切な量を塗ることがポイントです。塗り薬を使用する量は、FTUという単位を基準とします

<1FTUの定義>
大人の手で第一関節までチューブを押し出した分量。重量にすると約0.5g相当。

以下の表は子供用のFTU目安量です。この表を参考にしながら塗る量を決めていきましょう。

ステロイド外用量の目安
軟膏使用量(FTU) (1FTU=0.5g)
小児顔&頸部上肢片側下肢片側体幹(前面)体幹(背面)
3〜6ヶ月111.511.5
1〜2歳1.51.5223
3〜5歳1.52333.5
6〜10歳22.54.53.55
参照:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021、日皮会誌:131(13)、2021年、p2720 表13[3]
薬剤師ライター

小森ふみさん

1FTUの量を出すのが難しい場合は、「使用箇所がテカテカと光る程度」「ティッシュがくっつく程度のベタつき」が確認できる量が塗れていれば問題ありません

こんな時はどうする?

ステロイド外用薬は「1日数回塗るように」と医師から指示されることが多いですが、具体的な塗るタイミングを自分で判断するのは難しいですよね

薬剤師ライター

小森ふみさん

ここでは、ステロイドを塗るおすすめのタイミングやステロイドを中止した後の普段のスキンケア方法について重要なポイントをまとめました。

ステロイドを塗るタイミングは?

ステロイド外用薬を塗るタイミングは、起床後と入浴後の1日2回が基本です。入浴直後は肌が清潔な状態なので薬が浸透しやすく、外用薬を塗るタイミングとして最も適切です。

ステロイド外用薬を使用する期間は皮膚症状により異なるため、必ず医師の指示に従いましょう。ステロイド外用薬では、使用を中止した後に症状が再燃してしまうことが多いです。そのため、徐々に塗布する頻度を減らしていくプロアクティブ療法*という塗り方が推奨されています。[4]

*プロアクティブ療法:最初は1日2回、症状が改善したら数日〜数週間は1日1回、さらに症状がみられなければ数週間間隔で外用薬を塗る頻度を減らしていき、最終的には1〜2回/週で皮膚の良い状態を維持していく方法[4]

普段の子供のスキンケアで大切なことは?

先ほど書いた通り、子供の肌は大人と比べバリア機能が低く、皮膚のトラブルを生じやすくなっています。とくに、2〜3歳以下の子供は角質層が薄く、皮膚の油分も少ないため感染リスクも高い状態です。そのため「肌の清潔さを保つこと」「丁寧な保湿をすること」の2つが大切です。[5]

薬剤師ライター

小森ふみさん

皮膚トラブルを防ぐために、以下のようなスキンケアを意識しましょう。

1.皮膚の清潔 毎日の入浴・シャワー 
● 汗や汚れは速やかにおとす(強くこすらない)
 ● 石鹸・シャンプーは洗浄力の強いものは避け、残らないように十分すすぐ
 ● 入浴後には必要に応じて適切な外用剤を塗布する 

2.皮膚の保湿 保湿剤
● 入浴・シャワー後は必要に応じて保湿剤を塗布する
 ● 患者ごとに使用感のよい保湿剤を選択する

3.その他
 ● 室内を清潔にし、適温・適湿を保つ
 ● 皮膚への刺激を避ける 
● 掻破による皮膚の傷害を避ける(爪を切り、手袋や包帯)

引用:アトピー性皮膚炎の概要と基本的治療-P25 表6.スキンケア(異常な皮膚機能の補正)

まとめ

ステロイド外用薬は、正しく使うことができれば子供でもほとんどの場合副作用を起こさずに使用できる効果の高いお薬です

薬剤師ライター

小森ふみさん

普段からのスキンケアと適切な治療が、子供を皮膚トラブルから守る1番の方法です。不安なことや気になることがあるときは医師や薬剤師に相談しましょう。

この記事の執筆者

薬剤師ライター:小森 ふみさん

薬剤師歴4年目、現役薬剤師。新卒では大手調剤薬局勤務、敷地内薬局で経験を積み、その後個人宅訪問薬剤を経験。現在は小児科、皮膚科、精神科をメインとした薬局で日々勉強中。その傍ら医療ライターとして執筆活動を行なっています。Medi+「医療ライターのはじめかた」講座卒業生。スキンケアや美容医療にも興味がありスキンケアスペシャリスト資格取得を目指しています!好きなことは美味しいものを食べること。

小森さんも受講した、Medi+の「医療ライターのはじめかた」講座とは?

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